第2話「輝石」
祝100話目!
「今日は暖かいですね。そろそろ衣替えとか考えないと」
「家のことは私に任せて、真はほら!」
「は、はい…」
宿題が終わるまで監視してるお母さんみたいだ。
「お母さん?」
「いや、なんでもないです。イメージの話で」
「…そう言われると怒れないじゃん」
「すみません」
「真にとって家族の話題って結構タブーだよね。だからってわけじゃないけど私もあんまりそっちの話は遠慮しちゃう」
「……すみません」
「なんで真が謝るの。もう…」
「はわ」
新たな創造を想像することに時間を費やして頭が疲れていた。
立っていても座っていても、風呂に入っても寝ていても。ずっと考えていたが…正解は出せない。
そんな時、抱きしめられて。
「私がいるから」
「……ありがとうございます」
心音を聞くみたいに僕の胸に耳を預けてゆっくり呼吸している彼女。
当然。
「ふふっ。すごい聞こえる」
「それ以上何も言わないでくださいね。恥ずかしくてどうにかなりそうです」
「分かった。………」
「黙られても恥ずかしいとは思いませんでした」
「真」
「はい…?」
「私の戦い方はね、お父さんとお母さんのを引き継いだの。教わったのもあるし、2人の戦い方を追体験して見たってのもあるし」
「突然どうしたんですか」
「考えたことない?」
「え?」
「覗きの指輪を着けて、真の創造の書に触れたら…誰の何が見えるんだろうね」
「……ぅ」
ゾクッとした。
今まで試して…ないかもしれない。
すごく大きなことを見落としてたというか。
「やってみる?」
「…凪咲さんは、その、あの、」
「失敗したら大変なことになるかも。でも成功したら」
「失敗ってなんですか」
「私が考えた通りなら、代行だった真の親族の記憶を見られる」
「…はい」
「でも、その創造の書はたくさんの人が繋いできたものでしょ?見たい記憶以外の全ても見ることになるかも」
「…はい」
「そうなったら、真は私より長く"他人"でいることになる。誰かの人生を生きるのって大変なんだから。自分を忘れたら、真は真じゃなくなって空っぽになっちゃう」
「……」
「気づいてたんでしょ?」
「全然。今言われるまで考えもしませんでした」
「嘘。だって」
「覗きの指輪は必要だったから思いつきで創造したんです。まさかそんな使い方…ぁ」
創造の書でなくても…いけるのでは?
「真?」
「失敗しない方法があります。でも、得られるものは少なくなります」
「何か思いついたの?」
「はい。…あれです」
ずっと前に見つけた、秀爺の手帳がある。
通帳などの貴重品と同じ引き出しにしまってあるそれを取り出し、テーブルに着席。
凪咲さんも隣に座って…準備完了だ。
「難しいと思うけど、寝てる時に見る夢の中でこれは夢だって自覚するみたいに…今見てるのは自分以外の人の記憶だって強く意識して。真は影響されやすいから、そうしないと……」
「はい。秀爺の終わり方に影響されたらどうなるか…それは避けないと」
「怪しくなったらどうしたらいい?ビンタとかしたら戻ってこられるの?」
「……殺さない程度でお願いします」
「…気をつけてね。言い出したの私だけど、病院でのことがあるし」
「多分…いや、大丈夫です。僕には凪咲さんがいますから」
「…うん」
指輪を着けて、恐る恐る秀爺の手帳に…触れ
………………………………next…→……
「秀さん。真君、立派になったねぇ」
…ここは
「そうだなぁ。真…卒業、おめでとう」
卒業式…!!
高校生の時の…自分が遠くにいる。
これは、秀爺の視点。
同級生の親…先生達……上手くいったみたいだ。
「っ、すまない。ちょっと」
「秀さん?どこ行くんだい。もう少しで」
「外せない。これだけは。戻るのが遅かったら真を頼む」
「…はいよ」
そうだ。そういえば、卒業式が終わったあと…秀爺はいなかった。
秀爺と仲の良い吉井さんは他のクラスの子の親で…あの日は吉井さん親子と帰ったんだ…。
途中で抜けて、小走りで向かった先は。
「ここか…」
っ。"僕達"の始まりの場所でもある公園だ。
まだ明るい時間だけど人がいない。
異常地帯…?
「章。お前のこと殺したのはあいつか…?」
え。秀爺、誰に話しかけて…というか章って僕の父親の名前じゃ。
公園の奥。わざと秀爺の視界に入ってきた存在。
…秀爺の視力の問題か、ハッキリ顔や姿が確認できない。
でも、人だ。代行…のはず。
「いつの時代にもいる。生きることを諦めて終末を望むお前達のような人間が」
ポケットから見たことない手帳を取り出した。
…秀爺は創造の書を持ち歩かなかったのか…!
「"アマゴウラ"の思想とは違う、"終の大天使"。それがお前達の希望なのか…本当に」
アマゴウラ。どこかで。
いや、それよりも終の大天使ってまさか!
「爺さん、散歩か?って、年寄りにはもう何も感じられないか」
ぐっと近づいてきた。
瞬間移動みたいに。秀爺に接近した男の両目は黒目が別方向にぐるぐる回っていた。
「狂った人間か。ならお前も半里台の者だな」
「ん?お?ん?半里台っ?爺さん、あんた」
「力に溺れて周りが見えてないか。まだまだだ」
「んえ?お?っ、後ろか!」
「遅い…」
男が秀爺から離れようとして、それが視界に入った。
侍。現代には合わない容姿だ。明らかな違和感。教科書で見るような古い格好。
でも、その侍が刀を抜いたのを見て理解した。
この侍こそ、秀爺の使者なのだ。
「参るっ!」
「ミカヅキ…斬り!」
侍の声に合わせて秀爺が技の名を呼ぶ。
逃げるためにこちらに背を向けた男の背中に、三日月の形をした衝撃波のようなものが飛来し
「づぁっああ!???」
血飛沫。綺麗に切り開かれた背中は芸術の域に到達していた。
「剣之介。終わらせるぞ」
「いざ、」
なんだろう。この感覚は。
秀爺の気持ちに合わせるほど感じられる何か。
しかしこれ以上寄せれば、僕は秀爺になりきってしまう。強く影響を受ければ半里台でなったように…
「妖刀、ジゴクチョウ」「せぇぇぃやあぁっ!!」
振った刀が黒に変色。刃が大量の蝶に姿を変えて乱れ飛ぶ。
そして地面に倒れて動けなくなっている男に群がって。
「ぎぃぃアアアア!!!」
殺した。
「終わったか…」
「あらあらぁ?お爺さんが代行なの?まだまだ元気なのねぇ」
女の声がして、秀爺が身構える。
使者の侍…剣之介に背中を預け、周りを見て…
「残念。下よ?」
「なにっ?」
言われるまま下を向けば、自分の影の形が変わる。影の色が濃くなって…これって、
「フリーカ。特別に名乗ってあげる」
影が勝手に動き…2人の前に姿を見せるため、立った。
「影の使者か…!」
「代行でもあるの。うふふふふ!いい目をしてるわぁ!殺してやるって強い気持ちが伝わってくるっ!」
「剣之介ぇ!」「はっ、」
「そうね!せっかくだもの!楽しまなきゃ!」
戦うのか…フリーカと…!
突然すぎてまだ整理できていない。それでも秀爺の見たものをそのまま受け入れていく。
実体化した影を斬っても勿論フリーカにダメージはない。
高笑いしながらフリーカはモグラ叩きのようにあちこちから秀爺の前に姿を見せて
「まさかそれで終わりなんてことはないわよねぇ?」
「勿論。こんなことも、出来るんだよ…剣之介!」
「残影!」
3人に分身。でも分かれた2つの体は黒い。残影ということは
「目には目を…なら影には影をってことかしら?」
「妖刀、エンマ!!」「いざっ、せぇぇぇぇっ!!」
今度は振った刀が赤くなって…フリーカの影に
「ああぁっ!」
ダメージを与えた?か、影に切れ目が…!
「すごいじゃない。影を攻撃できるなんて」
でも剣之介の分身が1つ消えた。
なら、もう1度攻撃したらまた分身が消えるのでは?
「お前には聞いておこう。お前にとって、六島悠悟はなんだ?」
秀…爺?
「うふふっ!まさかまさか。本当にびっくりよ!六島先生の名前を知ってるなんて…生かしておけないわぁ…!」
「章は…息子は六島に敗れた。それだけなら諦めもついたが…あの男は」
「ふーん…六島先生を恨んでいるのね。あら!もしかして!あなたの息子さんって、武装するタイプの代行かしら?」
「…だったらなんだ」
「知ってるかもって思ったの。バタフライナイフを使う強い代行がいたのを思い出したから…?うふふふふふふ!」
「お前ぇっ!」
「大当たりね?とっても。とっても強かったわぁ。1人で乗り込んできて大暴れ。危うく全滅するところだった」
フリーカには顔が無い。
でも話し方で伝わってくる。秀爺を馬鹿にするみたいに楽しそうに話してる。
「でも六島先生の方が上よ?ずーっと上。あの人はこの世で最も強い」
「………」
「あなたの息子さんは、今」
「それ以上、喋るな。化け物」
「あぁん!言ってあげる!そうすればあなたの心が砕け散るもの!見せて!悲しみの先にどんな顔をするのか!…あなたの息子は!」
「やめろ」
「うふふっ!あなたの息子は六島先生の」
ドッ……!
フリーカが何かに圧されて尻もちをついた。
……秀爺の手には、刀?
いや、よく見れば服装も変わって…使者の、剣之介のそれと同じに
「「今からお前を斬る」」
声が重なる。
どういう…
「……っ、っひ。もうお爺さんとは呼べないわね。そうよね。あの代行の父親なら、あなたも相当強い。それに六島先生を恨んでいるなら…終の解放者である私にも手加減はしない」
「「分かってるじゃないか」」
「せめて死ぬ前に教えてくれる?どうやって使者と1つになったの?」
「「真打。テンカムソウ」」
「…残念」
刀は、振らなかった。
少しも動かずに、フリーカの影が砂になったみたいにサッと散った。
「「いつかこの手でお前も斬らねばならない。許してくれ、章…」」
…この日は卒業式。
そんなに昔の出来事じゃない。
この時点で、終の解放者が…六島が僕の家族に関わっていた…?
もしかしてもっと前から?
秀爺は、終の解放者を知っていた?
だめだ、もっと…もっと知りたい。
もっと…秀爺として、柊木 秀として強く意識しなければ。
…早く真のところへ戻らないとな。
「剣之介、もういい」
「っ、」
今日くらいは寿司でも食いに行くか。
「ったく!何やってんだよー!本は奪えって!」
「次はなんだ。…お前も今のやつの仲間か」
「んなわけ!俺は俺だっつーの」
「……ふん!」
「気迫でビビらせようとしても無駄だぞー」
「…そんなに死にたいか、若いの」
「ブチギレてるとこ悪いんだけど。爺ちゃん気づいてるか?」
「……」
「狙われてんだよ。年寄りの代行なんてチョロいだろって。この辺に何人集まってると思う?爺ちゃんのためだけに17人…あ、今2人殺ったから15人か」
「……っ」
「俺はどっちだろうなー?あー、多分、多分味方か?」
「代行が近くにいれば分かる。馬鹿にするな」
「そうかー?」
「戦うなら殺してやる」
「はぁ…。やめとく。お前、守りたい家族がいるんだろ?」
「……」
「つまり、まだまだ生きたいってことだ。神に授かったその体が終わる時まで、殺されるわけにはいかないんだろ?」
「何を…」
「見逃してやるよ。お前は生きることを諦めて終末を望む人間じゃあない」
「…………っ!?」
「ついでに。代行の数も減らしといてやるよ。気をつけて帰れよな」
「何のつもりだ」
「人助けだよただの。ほら、行け行け!」
赤髪の若者。強いようには見えない。
偉そうに話していたが…代行を探知する創造をしているのか。
ならどうして、いやいい。今は真が先だ。
「じゃあなー」
「っく、重い…」
真を驚かせるのはまだ先だ。
あいつのために新しく本を仕入れて、しっかり掃除して、また店を始める。
そしたら
バチイイイイイイイイイイイイン!!!!
………………………………next…→……
椅子から落ちて床に倒れる真。
その頬には凪咲のビンタによる手形がくっきりと。
「真!もう3時間経ったよ!?戻ってきて!!」
「……」
「真ってば!!」
今度はコップに水を注ぎ、真の顔に勢いよくぶちまける。
そこまでしてようやく反応が見られた。
「っ…ぅ」
「真!真!」
「真…」
「ん?…真!しっかり!」
「……は、」
「起きた!よかった…」
「…………」
「……真?も、もしかして…」
「……?」
首を傾げるのを見て、凪咲は不安が的中してしまったのだと察した。
「…えっと…ううん。だめ。あなたは柊木 真。ほら、言ってみて。あなたの名前は」
「柊木…」
「真。ね?真でしょ?」
「真…真を驚かせるのは」
「ううん。違う違う。あなた"が"真なの。ね?」
「……」
「…だめ?」
………凪咲さんが泣きそうだ。
そうだ。こういう時は
「えっ!?」
抱きしめてあげればいい。
信頼している相手の温もりを感じて、心音を感じて、不安が優しく解かれていくのを感じて…
「ま、真なの…?」
「なんとか。まだ体がちゃんと動かなくて、"あの日"と重なってますけど…」
「ばかぁっ!演技だったら許さないから!」
「演技ってなんですか…僕は、僕です」
「うん…」
「柊木 真です。凪咲さんの、パートナーです」
「うん…!」
「あの…変なお願い、してもいいですか?」
「なに?」
「…キスさせてください」
「今…?」
「はい。今、どうしても。したいんです」
………………………………next…→……
もうすぐテレビでは夜のドラマが始まる。
秀爺の手帳に触れてから、もう半日くらいか。
もっともっとと欲張って、秀爺が死ぬ日までいってしまった。
悲劇が、悪意が顔を出す前に僕は目覚めた。
いつもの夢が悪夢に変わる前に起きれたような、すごくホッとする感覚。
秀爺になりかけていたところで引き戻されて、凪咲さんがいて、すごく嬉しかった。
その気持ちを上手く伝えられなくて、あんなお願いをしてしまったが…あれはあれでよかったと思う。多分。
…秀爺はあの日、分かっていた。
代行が近くに潜んでいると知っていて、それでもいつも通りの暮らしを続けていた。
戦えなかった。それでいて、戦わなかった。
創造の書が手元に無かったからとかそういう理由じゃなくて。
殺されたかったわけでもなくて。
ただ、戦わなかった。
「僕のために」
本当なら卒業式の日に手帳と創造の書を僕に渡していたはずだ。
代行としての引き継ぎが行われていたはずだ。
それをしなかったのは。
秀爺は、選ばせたかった。
代行の存在を知らない世界で生きるか、その逆か。
「ふぅ…!ソープのお風呂終わったぁ…!大人しい方だとは思うんだけど、洗ってあげるのって大変だよね」
「ッニャア〜」
「はいはい。今ドライヤーで乾かすからね。もう少し大人しくしててね」
もしも。
代行にならずに、恋人と同棲したり…若いうちに結婚していたら。
もしも。
代行になった現在。これから、家族を作ったら。
背負うものに大きく差がある。
守ることの意味が違う。似ているようで違う。
……選ばせたかったんだ。
そして、出来ることなら、選んでほしくなかったんだ。
創造の書を開くことを。
「真ー!タオル取ってー!」
「…あ、はーい」
「見て。ソープ気持ちよさそう」
「ですね…」
「ありがと。そっち座ってソープのこと支えてくれる?」
「はい」
「……言わなくていいからね。何を見たか」
「言いますよ?」
「え?」
「心配してくれるのは嬉しいです。でも大丈夫です。過去よりも、今の方がよっぽど大切なんだって分かったんです」
「真…」
「それに、一緒に考えてほしいですし。ちゃんとした創造が出来るように、欠点がないかとか…色々と」
「ん。なんか…何を創造するか決まったみたいな顔してない?」
「大体は。でもどうやってやるのか…」
「待って!せめてソープのドライヤーが終わってからにして!」
「はい。待ちますよ」
「なるべく急ぐから!」
「大丈夫です。ゆっくりで」
「だめ!そういうアイデアって新鮮なうちにまとめないと!」
「………」
「真?」
「いえ。…凪咲さん、可愛いなって」
「…もう。急にどうしたの?」
ソープの毛が乾いてサラサラでフワフワになって。
満足して僕達に体をスリスリしてから寝床に戻っていって。
落ち着いたのを見届けて、気づけば僕達は布団の上で正座して向かい合っていた。
「どうして…」
「内容によっては、すぐに寝て忘れた方がいいかなって」
「凪咲さんの判定次第では強制的に就寝なんですね…!?」
「そうだよ。今後に関わるんだから。中途半端だったり変なのだったらすぐ却下だからね!」
「…じゃあ、話します」
「うん」
「秀爺には使者がいました。侍で、名前は剣之介。やっぱり侍ということもあって刀を使って戦うんです。でも侍とは思えないような派手で強い技をいくつも持っていて、分身したり…刀が蝶になったり」
「…真?」
「まだ続きます。秀爺は僕の卒業式の日に代行を2人殺しました。1人は半里台出身の男性」
「……」
「もう1人は、フリーカです」
「フリーカ?嘘でしょ?じゃあ真の…え?」
「秀爺は終の解放者を知っていました。六島先生のことも。六島悠悟…それがフルネームです」
「本当に…!?」
「僕のお父さんは六島悠悟と戦って負けたそうです」
「…そ、それはまた今度にしよっか…ね?」
「じゃあ話を戻しますね。秀爺はどういうわけかフリーカの影すらも斬ってみせたんです。1度目は使者の攻撃で。2度目では攻撃の動作も分からないままフリーカが砂になったみたいに散ったんです」
「影を斬る創造…とか?」
「多分違います。ひとつに特化したものではなくて何でも斬れちゃうみたいな感じです。でもその前に剣之介は分身していて。攻撃した後に分身が消えていたんです。技の発動に必要なコストなのでは…」
「そうなんだ…うんうん」
「その後。これが1番大事なところなんですけど、秀爺と剣之介が…なんていうか、合体?したんですよ。フリーカがどうやって使者と1つになったのかって聞いてきたので間違いないです。それで技を発動したらフリーカが…それが2度目のやつで…」
「分かった。ひとつは、条件付きだけどチート威力の必殺技。もうひとつが、代行と使者の合体…合体?」
「心当たりがあるんですか?」
「……な、無いよ?」
「あるんですね」
「知らない!」
「教えてください!」
「だめ!っていうか、どっちも真の強化にはならない!必殺技は今度用意するとして、合体は却下!」
「そんなぁ…強そうだったのに」
「だめったらだめ」
「…分かりました。もう寝ますか?」
「まだ。次は私の番」
「え?凪咲さんも考えてくれたんですか?」
「人の意見にケチつけてばかりで自分では何も言わないって、私嫌いだもん。いい?話すよ…」
「お、お願いします!」
「アイアン・カードを超えられるものはまず無い。だから、方向性を変える。真が私のことも守りたいって言ってくれたし、ある程度応用できそうなアレンジも加えて…」
「はい…!」
「輝石を創る」
「きせき…ですか?」
「そう。私が出てくる小説で、お父さんがよく使ってたアイテムなんだけど、それを代行向けにアレンジするの。書き込む情報は、"代行を強化する"だけでいい。どんな風に強化されるかは書いてないから、何でも出来るようになるでしょ?」
「………」
「例えば、強化で怪力になれば…強化で足が速くなれば…強化で頭が良くなれば…強化で、代行の能力が高まれば」
「え。それって」
「まだ分からない。もしかしたらアイアン・カードで無理した時以上に反動が大きいかもしれないし。創造自体は出来ると思うけど…」
「や、やってみたい…です」
「本当?」
「凪咲さん、本を」
「うん」
輝石
柊木 真 専用。
使用時、代行を強化する。
ものすごくシンプルなのに、危険な匂いがする。
「条件とか付けなくていいんでしょうか」
「だめ。使用回数を限定とかやったら、いざって時に使えなくて後悔するよ?」
「ですよね…じゃあ、やってみます!」
((READ))
創造の書が発光し、僕達は顔を背けた。
数秒後にゆっくり目を開けて…本の上に創造された白い石に注目した。
「これが、輝石」
「だね。ポケットにも入る大きさだけど、いつでも身に着けていられるように加工した方がいいかな」
川の近くでたまに見つけられる綺麗な石という印象。
丸っこくて…大きさ的に、少し歪んだピンポン玉みたいだ。
「加工というと?」
「首飾りがいいと思う。簡単に破壊されないように紐じゃなくて金属がいいかな」
「それも創造した方がいいですかね?」
「あ。そっか。トシちゃんに頼もうかと思ってたけど」
「それはどんな理由でもやめてください」
「はーい」
続けて、輝石を付けるためだけの首飾りを創造した。
頑丈で熱にも強く、軽くて人体に負担が少ないものを。
細かく情報を書き込んだおかげもあってピンポン玉のような輝石を無事装着できた。
「じゃあさっそく着けてみてよ」
「…こうですか」
キメの細かいチェーンがひんやり。
輝石はというと僕の胸の…ちょうど心臓の横の辺りの位置で落ち着いた。
「うんうん。似合ってる」
「本当ですか?…こういうの…オシャレとかあまりしないのでよく分からなくて」
「ちゃんと似合ってるよ。ねぇ、次は使ってみて?試しに腕力を強化して私を簡単に持ち上げてみるとか」
「……あの、これ使う時に何か言ったりするんですかね。こう…合図?というか掛け声みたいな…?」
「思いつくままにやってみて。多分何言っても大丈夫だと思うけど」
「わ、腕力をっ、強化!」
「そのまますぎ…あっ」
使用した瞬間、両腕が重くて軽い不思議な状態になった。
それにすごく自信があった。何でも持てる、何でも殴り壊せる…そんな力持ち特有の自信が。
サッと屈んで凪咲さんの足に左手を回し、右手は彼女の両肩を抱いた。
そのまま姿勢を元に戻せば。
「すごいです!持ってる感じがしない!成人女性ですよ!?だって、え!?おにぎりより軽いです!」
「例えが変だよ!待って、落ち着いて!1回降ろしてー!!」
「すみません、もう少しだけ!階段の移動も試させてください!」
「あぅ…分かった。分かったけど丁寧に…ね」
「はい!」
大成功だ。
階段を2往復し、無駄に腕立て伏せを100回こなし、凪咲さんに軽く怒られた。
それから寝るまで凪咲さんと相談しながら輝石のテストをした。
テストの結果。強化内容を相手に知られないためにも、発動時には"輝石を握る"ことにした。
別に何も言わなくても発動できるみたいだ。
そして輝石の効果時間は大体5分。必要であれば僕の意思で延長することもできる。
重要なのが、輝石で強化できるのは何か1つだけ。重ねがけというのは無理らしい。
とりあえず、明日起きたらランニングをと考えている。
足を強化すればきっと…楽しみだ。
………………………to be continued…→…




