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異世界でもふっと婚活  作者: NAGI
第二章 南領編
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波乱の予感

やって来たシルヴァのお兄さんだと言う人に気付いた子供達は、お菓子を得ようと我先にと争っていたことなど忘れたかのように彼目がけて一斉に駆け寄った。

「先生!」

「せんせー!」

わらわらとと取り囲む子供達と、まだ歩くのが覚束ない小さな子供達。一生懸命追いつこうとし、けれど、思うように動けない幼子達が泣き出す寸前、中でも年長の子供達が抱きかかえてあげる光景がなんとも微笑ましい。

「せんせー、お菓子もらったー!」

一人が自慢気に手のひらのお菓子を見せる。

「シルヴァにもらったのか?」

「んーん。お姉ちゃんにもらった」

そう言って、私を指差す。

お姉ちゃんだって、照れる。

「シルヴァ、こちらはどなただ?」

片翼の人が怪訝そうに弟を見た。

「それをこれから広場で披露しようと思ってたんだが、兄上が気にしているようだから先に寄ったのだ」

「お前は相変わらず説明がなっていないな」

やれやれという風に首を振る。

残念な?弟は置いといてという感じでこちらを見遣る。

「子供達に菓子をありがとう。ここではあまり手にはいらないので助かる」

次に腰にまとわりつく子供達を眺め、

「ちゃんとお礼は言ったのか?」

と、質問する。

「まだー!」

「忘れてた!」

慌てて私に向かって、お辞儀するのもこれまた可愛らしい。ほのぼのする。

彼はそんな子供達、一人一人を優しく見守った後、再び、こちらに視線を向けた。

「翼人の谷へようこそ。神殿の騎士となったセーランを伴っていると言うことは、あなたが巫女姫か?」

琥珀色の澄んだ瞳で真っ直ぐに見つめられると、ドギマギしてしまう。どうも私は大人な男性に弱いらしい。

いい年なのに恥ずかしい限りだ。見た目、若いからごまかせるんだけどね。

「はい、初めまして。ナツキと申します」

「ナツキ…、東洋の響きだ」

お!分かります?通ですね!

「若い頃、一時期ではあるが、神殿で学んでいたことがあって、あちらの世界について多少知っているに過ぎない」

ほうほう。留学みたいなもんかな?

「巫女姫が谷を訪れるなど、初めてのことだ。歓迎いたします」

騎士のように片手を胸に当て、頭を垂れる。

そんな彼を真似して、一部の子供達が同じ仕草をした。

「歓迎します!」

元気があっていいね!

そう言えば、翼人の子供達は羽がないんだねー。その代わり色鮮やかな髪の色をしている子が多い。

流石に鳥頭の子はいないようだ。

「申し遅れたが、私はカナフと言う。そこにいるシルヴァの兄だ」

カナフさんか。シルヴァとは似ても似つかぬ紳士だ。

「シルヴァ。それでお前はこれからどうするつもりなんだ。何の理由もなく巫女姫をお連れしたわけではあるまい」

「よくぞ聞いてくれました!」

テンション高いな。

「我らの神、薔薇姫を遂にお迎えすることが実現したのです!」

「何だと?」

シルヴァが私を見て、セイラを出せ!と目顔で告げた。

うざいなー、もう。

「セイラ、起きて」

鞄に入って寝ている(もはや私の鞄は完全にセイラの寝床だ。自由に出たり入ったりをしている)と思われる、セイラに声を掛けた。

起きろー。出番だよー。

《みゅ?》

ひょこりとセイラが鞄から顔を出した。

良かった。起きていたらしい。半分以上、寝こけているが。

小さな手で目のあたりをクシクシとなぞっている。ついでに大きな欠伸を一つ。

おーい。神様なのにだらしないよ?

すると突然、わあっと子供達の間から歓声が上がった。

「薔薇姫様だ!」

「本物?ねえ、本物?」

「ちっちゃい!かわいい!」

大人気だ。これにはセイラもびっくりして正気づいた。

《なに、なにー?》

賑やかなこと、楽しいことが大好きなセイラだ。大勢の子供達が騒いでいるのを見て、自身も楽しくなったようだ。

ヒュンと空中へと飛び出した。

私と魂の番となったセイラは他の人の目にも見える。薔薇姫だからと言うのもあるが、本人が意図して姿を隠そうとしない限り、視認が可能だ。

「わあ!やっぱり薔薇姫様だよ!絵本とおんなじだ」

男の子達は元気一杯にはしゃぎ、

「綺麗な羽…」

女の子達はうっとりと呟く。

《子供、おーぜい!幼稚園?》

セイラが小首を傾げる。

聖領の幼稚園に幾度となく同行しているせいか、子供達が大勢 イコール 幼稚園と言う図式があるらしい。

「違うよー!ここは孤児院だよー」

そうそうと周りも同意する。

孤児院って…。それじゃ、ここにいる子供達は…。

「そうです。親のいない子供達です」

カナフが穏やかな顔でそう告げる。

「ここにいるのは、親を砂漠の獣人との争いで亡くした子供ばかりなのです」

百年前の、玄鳥の一族の悲劇で終わったでなく、今もなお、争いが続いていると言うの?

「悲しいことにそれが現実です」


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