出会いは突然に
まあ、あれだ。出会っちゃったものは仕方ない。と言うか、私ってばお忍び旅なのに、面識のない西領の騎士さんに、しれっと本当の名前を言っちゃった。いや、今さらか。
「ナツキ…、ナツキと言うのか。聞きなれない名前だな。もしかして、他領から来たのかな?」
あれ?私だって(巫女)ばれてない?
「ええ。そうです。ここには知り合いを訪ねに来たばかりなんです」
「そうだったのか。しかし、今は先代の領主様が亡くなったばかりで、どこも閉まっていて、あまり楽しめないだろう?」
「そうですね…。宿をとるのに困りましたけど、今は良い方に巡りあって、宿泊させてもらってます。それに、こうして温泉にも入れるし。
西領の領都が、こんなに素敵な所だと知っていたら、もっと早くに訪れたかったくらいですよ。温泉に入れるだけで満足ですから!」
ぶっちゃけ、温泉だけでOK!星五つです。
鼻息も荒く、そう言うと、ヴァンのお父さん、いや、ジーグさんは、ハハッと快活そうに歯を見せて笑った。
「お嬢ちゃんも温泉好きか。俺もだ。普段は温泉なんぞない、海辺の町にいるのだが、領都に来ると、やはり入りたくなってな」
モフモフの温泉好き仲間か~。はー、好き!
そんな風にまったり、のんびりと過ごした後、ジーグさんは、私達より一足先に温泉を後にした。
「それじゃあな、お嬢ちゃん。お先に」
ホコホコと濡れて湯気を立てていた、ジーグさんの騎獣は、丁寧にお世話をされた結果、すっかり綺麗に乾かされ、すごく満足そうだった。
「ジーグさんは、領都にまだ滞在予定ですか?ここに来れば、また会えますか?」
せっかく出会ったイケオジならぬ、ヴァンのお父さんだもの。機会があれば、また会って話がしたい。ただ、どこまで私のことを話していいものか、皆に要相談だ。うっかり本名を名乗ってしまったが。
「そうだな…。まだ、しばらくはいる予定だ。本来なら、先代領主様の葬儀を終えたら、すぐにでも戻るつもりだったが、色々と面倒なことになってな…」
ヴァンのことだろうか?幼い頃、領主家に預けたとは言え、ジーグさんにとって、血を分けた息子だもの。
「それじゃあ、また、会ってくれますか?」
「俺は西領騎士団の宿舎にいるから、いつでも来てくれて構わない。今は喪中で、騎士団も活動を自粛しているから、俺も大抵、そこにいるからな」
よし!言質をとった!これで堂々と会いに行けるはず!見えないように拳を握りこむ。
そんな風に別れを惜しむ私達(?)をよそに、一人と一匹は目覚めることはなかった。うん、二人とも護衛失格だね。今度会う時、ヴァンに報告しとこう。
さて、ジーグさんが去ってからも、だらだらと過ごした後、私達も温泉を出て、ミハイルさん宅へと戻った。時刻は夕方近かった。
あれ?こんなに時間が経つのって早かったっけ?首を傾げつつ、帰宅。他の皆はとっくに戻っていて、帰宅が遅いと私達三人は、アリーサからこっぴどく叱られた。
お叱り担当のヴァンがいない分、アリーサのお叱りは長かった…。正座は、やっぱり足がしぴれるね!
お夕食を頂いた後、私は温泉でヴァンの父親に出会ったことを報告した。
「でね、偶然にもヴァンのお父さん、ジーグさんがいたのよ」
「まあ…。それは」
アリーサが驚きから、目を見開き、片手で口を覆った。セーランは通常運転です。
「ヴァン様のお父上が領都に滞在していらっしゃるとは聞き及んでいましたが、そんな偶然があるのですね」
「あれ、そうなの?アリーサは知っていたの?」
きょとんと問いかける。
「私達がお世話になった、いえ、現在もなっている二家がどのような立ち位置か知らないわけではないでしょう?とうに存じておりました」
逆に何故、知らないでいられるのか疑問だと言う顔をされた。
うう。だって、この短期間の間にも色々あったし。温泉だよ、やったあ!とか、ハンバーガーなんて久しぶり~!とか、ヴァンの婚約者候補現る!とか。
うーん、考えば考えるほど、私のレーヴェンハルト生活?において、西領ってば、重要なポイントがてんこ盛りじゃない?幾つも片付けなければならない案件もてんこ盛りだし。ほんと、この先、どーなるの?
本日で仕事納めの方、羨ましいです。多分いないと思うけど、学生さん達(読者さん年齢高めじゃない?という作者の憶測)、冬休みを楽しんでいますか?
年内最後の更新をお届け出来ました。良かった~。また、来年の更新を気長にお待ちください。今年もありがとうございました!




