マネージャーとお姫様
それは
元々その舞台の主人公の相手になる
メインヒロインのオーディションだった。
「今回、スポンサーの意向でメインヒロインは
先に決まってしまいましたので
申し訳ありませんがサブキャストのみの
オーディションとなります。」
結局その他脇役のオーディションには
なってしまったが役を貰えるなら何でもよい。
私はそもそも主演級を
張れるようなビジュアルではない。
主演級の演技と脇役の演技というものは
そもそも売り方や魅せ方も変わる。
私は演劇サークルでも常に脇役をやってきたわけで
脇役のオーディションになったことは
むしろ自分にとっては良い流れで
結果を出せると思っていた。
なのにーーー
ダメだった。
みんなが応援してくれた。
大学のみんなも
バイト先の店長も
あの2人もーーー
それでも
また、ダメだった。
私はさすがにショックを隠しきれず
生意気にも落ち込んでしまっていた。
家に帰った私を待っていた2人は
壁一面にオーディション合格おめでとうの
垂れ幕を飾り、ステーキ肉とケーキを買って
お祝いする気満々で準備をしていた。
「おわぁ!?アカネ様帰ってきました!」
「アカネ!おかえりなさい!?
なぜ連絡くれずに帰ってきたのでして!?」
だよね。
合格したよって私から連絡くると
思ってたんだろうね。
オーディション結果を連絡せず
そのまま帰ってきてしまったので
2人は当然驚いている。
「......」
「......アカネ?」
「アカネ様まさか......」
「......ごめんダメだった」
「......」
「ざ、残念でしたわね!......次頑張りましょう!」
「じゃ、じゃあ今日は残念会ですね......!
気を取り直して明日の英気を養いましょう!」
2人が慌てて取り繕う姿を見て
私はその場で崩れ落ちてしまった。
「ごめんね、ごめんね......
せっかく応援してくれたのに......」
「アカネ!よく頑張りましたわ!
またチャレンジすれば良いのですわ!」
「アカネ様!悲しい時はお肉と甘いモノを
食べると良いと誰かが言ってました!」
2人に慰められたり励まされたり
すればするほど私は辛くなり、
溢れる涙をおさえることができなかった。
「ごめんね、ごめんね......!」
私は2日ほど寝込んでしまい、
何もしない日を過ごしてしまった。
2人はあっというまに大人気配信者に
成り上がってしまったのに、かたや私は......
何も好転しない。
金銭補助までも受けておいて
自分は結果が出せない。
ふてくされちゃダメだ。
諦めずに頑張らなきゃ。
頭ではわかっていてもやる気が起きない。
「......アカネ。来週ハロウィンイベント生配信を
やりますの。相談にのってくれますか?」
「勝手にやりなよ......。
私なんかの意見聞いても何も結果でないよ」
「アカネ......」
「私なんか役に立たないから2人でやりな!」
「アカネ様......」
なんの結果も出せない私に
2人のチカラになれることなんてない。
どんどん心を蝕まれていく私は
2人にも冷たい態度を取ってしまう。
「アカネ。では、せめて生配信観てくださいましね」
「......」
2人は撮影のために出かけてしまう。
ああ、
何やってるんだろ私。
2人に当たり散らかしたりして
......最悪だ。
頭ではわかっているの。
でも、ダメなの。
しばらくそっとしておいてちょうだい。
数日後、
部屋から久しぶりに出た私は
アイスでも買おうと
コンビニへ1人歩いていた。
コンビニ前には何やらいかつい高級車が
停まっていてなんだか少し人だかりが
できていた。
......なんだろ?
たいして気にもとめず私はコンビニに入り
目当てのアイスを買い出てくる。
ちょうどその高級車から
サングラスをかけたとても凛々しい
キャリアウーマンみたいな人が出てきた。
その後ろについてでてきたのは
私のよく知る2人。
「あ!アカネ!」
「アカネ様!?」
人だかりはこの2人を見ていたようだ。
「......何してるの2人とも?」
「撮影の帰りですわ」
「車というものに乗ってみたかったので
乗せてもらい送っていただいたのです〜」
「ふぅん......んでその人は誰?」
「アリーの撮影を手伝ってもらってる人ですわ」
「......」
「アカネさん初めまして。
挨拶が遅れて申し訳ありません。
私、2人のチャンネル運営の補佐を
させて頂いています、トモエと言います。」
丁寧な所作でその人は
フリーマネージメントとかいう
よくわからない職業で
なにやらおしゃれに
【Tomoe】という名前の描かれた
名刺を渡してきた。
「......はぁ」
どうもチャンネル運営に関して
段取りや手続きなど仕事がやたら
早いなとは思っていたが、
そうか、マネージャー業をしている人が
ついていたのか。納得。
「トモエさんとはどこで?」
「突然声をかけてきましたわ」
「平たく言えばスカウトさせて頂いたと
思ってもらえれば結構です。」
「......ふぅん」
「アカネ様、せっかくなのでみんなで
一緒にお食事でも行きませんか?」
「結構よ。
よかったじゃない、2人とも。
面倒見てくれる人ができて。
私なんかより、その人と一緒にずっと
居ればいいわ。私なんかと居ても
何も身にならないわよ。
とっとと私の家からも出ていきなさい。」
「アカネ!!」
「アカネ様!!まってください!」
「はいはい!さようなら!」
私は2人を振り切り、
さっさと1人で家に帰る。
違う
こんなこと
言いたいんじゃない
最低だ
これはただの嫉妬だ
もう何もダメだ
でも、きっと2人は
私なんかじゃなく
あの人と居た方がいいんだ
それは間違いない
だから
これでいいんだ......!
少し寒くなった秋の夕暮れ
私は1人泣きながら
とことん最低な自分のことを
大嫌いになっていっていた......
読んでいただきありがとうございます!
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