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中学の卒業式に告白した人が高校で隣の席だったらイチャイチャできるのか  作者: コヨコヨ


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「今は楽間さんに怒っているの?」


 嵐山さんはツインテールが鞭のようにしなるほど頭を左右に振るう。


「えっと、ちょっと教室で待っていて。昼休みが終わる前に教室に戻るから」


 僕は図書室に向かう。図書室の隅っこでライトノベルを読んでいる少女がいた。


「やっと来た……。女子を待たせていいのは、イケメンだけだぞ」

「ごめん。ちょっと立て込んでいて」


 僕と楽間さんは図書室を出て、廊下に作られている自習スペースの椅子に座る。もう、五分くらいしか昼休みが残っていないが、すぐに授業が始まるわけでもないので、焦り過ぎる必要もない。


「今朝、歩と言い合いになったじゃんか……。そっから空気が悪いし、ちょっとうちも無神経だったかなと思って。神村はどう思う?」

「うーん、確かに言い過ぎだったかもね」

「うち、根暗の癖に仲良くなると何でもかんでも言っちまうんだよな。別に、歩の悪い所を言いたくて言っているわけじゃなくて、どうせ何しても悩むんだから気にする必要がないって、伝えようとしただけで……」


 楽間さんは黒い瞳に涙が浮かび、カッターシャツの袖で目尻をぬぐう。


「女子ってさ、ホントのこと言うと嫌われるんだよ。空気読めないとか、角が立つとか……。でも、家が男兄弟ばっかでさ、はっきり言わないと誰もわかってくれなかったから、自然とこんな性格になった」

「でも、それって……悪いことじゃないと思うよ?」


 僕からすると、はっきりものを言ってくれる楽間さんは非常にありがたい。だけど、女子同士となるとうまくいかないことが多いようだ。


「神村、そういうとこ優しいよな」


 少しだけ、楽間さんの表情が緩んだ。いつもは見せない優しい顔。ちょっぴりドキリとさせられる。


「歩は珍しく気が合う陽キャで、本当なら話す機会がない人種だけどさ、陰にいる人種だってたまには日の元に出たくなる時もあるだろ。だから、謝りたいんだが、あいつが何に怒っているのかわからなくて、どうやって謝ればいいかわからないんだ」


 こちらも、今朝の喧嘩で悩んでいる様子。どうやら面と向かい合うと、互いに喋らなくなってしまうらしい。僕に間を取り持ってほしいそうだ。

 どちらも仲直りしたい気持ちは同じ。でも、謝ることは凄く難しいこと。時間が経てば、なおさら謝りづらくなる。こじらせてしまう前に、早急に解決した方がいい。

 話している間に、昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴った。十分後に授業が始まるので、教室に早く戻らないと。


 楽間さんはずっと下を向いて、表情が暗かった。仲直りができるか不安なのかもしれない。


「楽間さん、怖がらなくて大丈夫。喧嘩して仲直りすれば、前よりもっと強い絆で結ばれる。きっと親友同士になれるよ」


 友達と親友の違いは、大なり小なり喧嘩して仲直りした経験があるかどうかだと思う。もちろん、喧嘩しなくても親友になれる人達はいるだろうけど、大喧嘩して仲直りした相手の方が、絆が強い気がする。

 教室に戻り、自分たちの席に向かう。すでに嵐山さんが椅子に座っていた。


「とりあえず、握手から」


 僕は二人の手を繋ぎ合わせる。相手に怒りを覚えている者同士に強制するのは逆効果だ。でも謝りたくて渋っている者同士なら物質の化学変化を助ける触媒のように僕が手を入れてあげれば、がっちりと繋がり合う。


「け、今朝は色々言い過ぎた。ごめん……」

「わ、私も、書道部だって大変なのに、楽そうとか言ってごめん。愛理ちゃんに図星を突かれて、沸点が低くなっちゃって……、意味もないのに怒っちゃってごめん」


 両者は握手しながら自分の悪いと思っていたところを謝り合った。互いに認め合い、尊重し合い、仲を今まで以上に深める。絶景や絵画とは別で、何とも言い難い美しい光景だった。人の絆が深まる瞬間は一種の芸術なのかもしれない。


 僕は仲直りができた二人を見ながらウンウンと頷き、一安心して椅子に座ろうとする。

 だが、僕の両手が嵐山さんと楽間さんに握られる。


「ありがとう、神村くん」

「あ、ありがとう、神村……」


 両手を包むぬくもりと、ちょっとだけ伏し目がちな二人の表情。そんな顔、反則じゃないか。


「どういたしまして。と言っても、僕は大したことしていないけど……」


 握られていると、手のひらがじんわりと熱くなる。放してもいいはずなのに、どちらも放してくれない。というか、微妙に力が入っている気がするのは気のせいか?


「愛理ちゃん、早く手を放しなよ」

「歩こそ、さっさと手を放せよ」


 なーんか、また視線がぶつかり合い、バチバチと火花を散らせているように見える。別に、どっちから手を放してもいいじゃないか。


「むむむむむぅ……」


 後ろの方から異質な念が送り込まれている気がする。

 振り返らず、二人の手を同時に放した。熱は手のひらにしっかり残る。


 ゴールデンウィークが開けてからすでに一週間。五月末に中間試験が待ち構えている。高校に入学してから初めての大きな試験で、成績に大きくかかわってくるから非常に重要だ。

 部活も勉強も本格的に忙しくなり、体に染みついた中学校の雰囲気が脱色され、高校色に染められていく。

 テスト範囲はとっくに終わっているのに、授業はドンドン先に進んでいく。もう、期末試験の範囲に突入した。

 詰め放題の袋がパンパンになっているのに、まだ入る、まだ入ると無理やり広げて物を詰め込んでいる状況が目に浮かぶ。


 僕や香奈さんの袋は伸縮性があってよく入る網袋だとすると、部活に忙しい者たちの頭は伸縮性が弱いポリ袋。中学より明らかに進む速度が速いため、袋に穴が開いて、物が零れだしても再度入れ込む余地がない。

 袋を入れ替えなければ、詰め込んだ物が、どんどん、どんどん、零れていく。つめてもつめても、何も残らない。

 賢い人は一度しっかりと清算し、新しい袋に入れ替えられる人間だ。でも、余裕がないと難しい。


 中間テスト、二週間前の放課後、僕は相も変わらず教室でシャープペンを持ち、まじめに勉強した。テスト範囲が発表されるのは、およそ二週間前。でも、僕は授業後に先生に「次の中間試験はどこら辺が出ますか?」と聞いて回っていたおかげで、他の者より一週間前から試験範囲をあらかた網羅した。

 通常、正直に教えてはいけないらしいが、先生が勉強熱心な生徒を嫌う訳もなく、やんわり答えてくれる。情報は武器だ。勉強も狙い撃ちすれば命中率が上がり、成績が伸びる。

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