77 王都へ3
まだ頑張るベルナデッタを連れたまま、私達は再び気軽な街歩きを始めた。露店が並ぶ通りはさっきまでと違う雰囲気で呼び込みをする元気な声が響き様々な物が売られている。
通りは大体同じような種類の店で分けられているようで私達が入って来た所は服飾店がズラリと並んでいた。
台の上に動きやすような服やゴツい感じの靴等が並べられている作業服を専門に扱っている店や、子ども服を専門に扱う店、もしくはごちゃ混ぜで色々な服や装飾品を扱っている店もありワイワイと賑わっている。
「活気があるわねぇ〜。それに色んな物がある」
露店から目を離せないでいる私をすれ違う買い物客とぶつからない様にカイが庇いながら歩いてくれる。ピッポは上手くすり抜けて前を行く。
「おっと、危ないぞ、気をつけろよ。騒がしいけどこの辺りが元気があるのは街全体が潤っているって事なんだ」
「この辺りって平民がってこと?でも買う人の一人単価はさっきの高級店の方が何倍も高いでしょう?」
「そうだな。貴族街は高級品が揃っていてある程度定期的に品が売れて安定しているけどそんな風に生きていけるのは一部の人だけだ。国としては平均的な民が元気に暮らしていける事が街、ひいては国全体が潤っているって事に繋がっている」
平均的な民でないベルナデッタがいくら高級品を買おうが儲けは極一部にしか還元されていないって事か。
陸での生活の成り立ちはここで暮らして来た人達にしかわからない事情があるようだ。私は回収船の中だけで育ったからそこの事情はよくわからない。こればかりはいくら本で勉強しようが実感がわかないものだ。
その後もカイが色々解説してくれるままに歩き回り気がつけばピッポの両手には美味しそうな肉串が握られていた。
「美味すぎる肉っ!!」
「私にもひと口ちょうだいよ!」
唸るピッポの手を引き寄せ串に食いつくとグイッと肉の一片を引き抜いて食べた。
「なにコレ美味しい!」
ジュワッと口に広がる肉汁に濃い目のタレが合わさって絶妙な味をコレでもかとぶつけてくる。
「これはエールと一緒に食うと美味いんだよな」
横でカイも唸りながら食べているがこの私達の姿を少し離れた所でリュディガーとベルナデッタが見ている。リュディガーは悔しそうな顔で口をもぞもぞと動かし溢れてくる涎と格闘しているようだ。その横のベルナデッタは嫌そうに顔を歪ませ「不潔だわ」と言いながら口元にハンカチを当てている。
「リュディガー食べないの?」
色々な通りを歩きそろそろ本気でお腹が空いてきたかなというタイミングでカイが連れてきてくれたその名も「ご飯通り」。色々な食に関する露店が連なるこの通りに入った瞬間ピッポがテンションアゲアゲで買い物を始めた。
「なんだコレ、スゲー肉の塊!」
「それはスライスして皮に挟んで食べるんだ」
「コレはコレは?」
「それは肉で色んな具材を巻いている」
「こっちは?」
「蒸した生地の中に肉ダネが入ってる」
ピッポの質問に答えながらカイが次々と購入し最後にまた肉串を買ってちょっとした広場にたどり着いた。私とピッポは買ったその場で齧りつき食べながらの移動だったがお嬢様であるベルナデッタはそれを断固拒否。繋がれているリュディガーも同じ事を強制され今の状態となっている。勿論カイも自由に食べながら支払いながらの移動だ。
「腹減った……」
力無く零すリュディガーをベルナデッタが複雑な面持ちで見ている。
「こんな不潔な所で不潔な物を口にすれば直ぐに病気になってしまいますわ」
眉間に皺で話すがそもそも私達はここと同じ様な不潔そうな回収船の一般船室で育ったのだけれどベルナデッタにはそこの事情はあまり伝わっていないらしい。街で接触するリュディガーは余程体裁を整えているのだろう。仕事とはいえご苦労様です。
「ベルナデッタ、ひと口でも食べないか?あれ美味いんだよ」
必死なリュディガーが説得にかかっているがベルナデッタは首を横に振るばかり。
「そんなにお腹が空いてるならちゃんとしたレストランへ行きましょうよ。ほら、前にも行った貴族街の二番通りのお店」
「いや俺はエメラルドから離れるわけにはいかない。レストランが良いなら一人で行ってくれないか?」
お腹が減り過ぎたのか力なくリュディガーは言った。そもそも私とピッポが街歩きをしたいと言ったからここにいるのであって、それを無理にくっついて来たベルナデッタが行き先を決めるのは違うと思う。それに不満ばかり零すベルナデッタを宥め続けているリュディガーにしてみれば嫌な思いをしてまでここに居なくても良いのではと思っての発言だろう。
「酷いわリュディガー。私に一人で行けなんて!」
声高に叫んだベルナデッタを見てピッポが「お、泣くかな?」と言った。驚いて彼女見たら物凄い顔で私を睨んでいた。
え!?私?
「わかった、もう行くわ!」
ベルナデッタは踵を返すと後ろからついて来ていたお付きの人と一緒に大通りの方へ歩いて行った。
「はぁ~、やっと行ったか」
彼女の後ろ姿が見えなくなるとリュディガーが盛大にため息をついた。なんだかちょっと酷い気もするがゲッソリしているリュディガーを見て何も言わないほうが良いかなと思った。
ベルナデッタには悪いがそこからはやっとなんの気兼ねもなく街ブラを楽しめた。ずっとベルナデッタと一緒だったリュディガーが取り戻すかの様に私の手をひき色々な場所へ連れて行ってくれる。仕事で何度も来ているだけあってそこそこ街に詳しい。
雑貨屋でヘンテコな帽子を買うピッポを見て笑い、甘味屋で旅の途中で食べようと見たことのないスイーツを必死に選んだりと楽しく過ごす。
歩き疲れた頃、カイが連れて行ってくれたのは見晴らしが良く海が見える展望台だった。地元の若者に人気の場所らしく、飲み物やスイーツを買いベンチに座って食べる事が出来るようだ。
私達もそこの一角に腰を下ろすと目の前に広がる海を眺めた。坂の街の中腹辺りにある展望台から見た海は太陽の光を受けてキラキラと輝き穏やかだった。
こんなに海から離れた場所で海を見るなんて不思議な気持ちだ。これまで一時だって海から離れたことが無かった私がそれを見下ろしているなんて。
「なんか、変な感じ」
ボソリと零すとリュディガーがポンポンと頭を叩く。
「直ぐに戻れるさ」
何も言わなくてもリュディガーにはわかっているようだった。でもそれがなんだかムカつく。
「なによ、さっきまでベルナデッタさんにかかりっきりだったクセに」
「いっ!?それは、取引相手だし、お前のことで世話にもなったから」
わかってるんだけどね。でも何かひと言言いたい気持ちなんだよ。
「ほらほら喧嘩すんなよ。これ飲みな」
ピッポがカイと飲み物を買ってきてくれ差し出されるままに受け取り直ぐにカップに口をつけた。
「美味しい……」
オレンジよりも爽やかな酸味のジュースが歩き疲れた体に染み渡る。
「いま女性に人気のジュースだってさ」
カイが選んでくれたのはこの地元で新しく売り出されているキッカンという柑橘系のジュースでお肌に良いと言われているらしい。説明してくれながら長細いパンの様な物を渡してくれる。砂糖がまぶされ油で揚げられたそれはこの街の名物キューというらしい。
「これも美味しい」
「良し、機嫌良くなったな」
カイに色々与えられなんだか子供扱いされた気がするが確かに気分が良くなったので何も言えない。そして何故かリュディガーがちょっとムッとしているが無視だ。
ちょっとずつしか投稿出来ておりませんが宜しくお願いします。
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