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伏魔団地  作者: 真暗森
【第2号棟  亡骸纏う墓穴の風琴】

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第095号室 SemiFinal Wave 環境DNA



    ―――バリケード焼失の28分前………



 とある団地の町工場、ブラジル出身の反社(マフィア)、ダヴィは打ち直した日本刀を見て満面の笑みをこぼした。


「小ちゃくなっちまった!」


 触手の異形ダゴンに折られた日本刀を、鬼人ティヲの指導の元、なんとか継ごうとしたが上手くいかず、見兼ねたティヲが代わりに継ごうとしたところを意地で拒否して、ダメにしたので継ぐのは諦め小太刀に打ち直したのだった。


「あてが10本打つ間に、あんたは1本の半分、まだまだやねぇ(ネチィ……!)まあ、ここは狭い場所も多いさかい、小太刀も役に立つでっしゃろ」


 そう言うと袴着姿のティヲは10本の内から2本選んで腰に佩き、残りの中から更に1本選んでダヴィに渡した。


「とは言え、普段はこっち使うんがよろしい」

「ほ……はは〜!!ありがたき幸せ!!」


 時代劇のように正座で両手を突き出し刀より低い位置まで頭を下げて受け取るダヴィに、ティヲがなんやそれとちょっとびっくりする。


「残りの刀はどうすんだよ?」

「気に入らへん、ポイや!」


 もったいねえーと漏らしたダヴィであったが、刃物を見る目には自信がある。車の車軸を抜いて打った刀であるからして、刀身にヒビが入っていたり、均質化出来ていなかったりと、残りの刀を捨てる理由は見れば分かっていた。


 鬼人なんてものは生まれつき反社(ヤクザ)のようなものである。反社(マフィア)のダヴィとは同じ反社者同士、気があったのだろう。


 古傷を自慢し合ったり、入れ墨を褒め合ったり、盃を交わして酔っぱらいになると、早速、打った刀を引っ提げ表に繰り出し、薄めの倫理観(モラル)でゾンビを辻斬り。一刀で首を飛ばす。


「あら、お上手やねえ!あんた随分と人斬るん慣れとるやないの?」

「そう言うお前も、ケッコーなお手前で!」


「そりゃおおきに!」


 しばらくするとゾンビが群をなして集ってきたので、こりゃ敵わんと二人だって駆け出す。


 外付けの非常階段の錠前のかかった扉の乗り越えゾンビを撒くと、そのまま屋上まで登り辺りを見回して二人同時に妙なものに気づいた。


「ありゃ何やろか?」

「さあ、何だあれは?」


 歩けば5分ほどの距離といった空中に何やら怪しげに回転する物体が浮かんでいる。


「う、虚舟(うつろぶね)やろか!?」

「ゆ、UFOなのか!?」


 そのどちらでもない。飛んでいたのは竜型戦闘飛行機のヴァルキュリーであった。



ーーー



 工業団地(バビロニア)から団地ダム決壊の調査に派遣された人型汎用機械のディーゼと、竜型戦闘飛行機のヴァルキュリーはダムの痕跡を探してはサンプルの採取と解析を続けていた。


『ダムの建材に混ざっていた生物由来の合成物や環境DNAの分布図を見るとこの先に(くだん)の相手がいる可能性が高い』


 地図上である一点を示すデバイスモニターを確認しながら歩くディーゼから、少女のような合成音声が息継ぎ無く発せられた。


『あ〜……ようやく終わりそう?あと、息継ぎ忘れてるわよ?』

『威力防衛事業部の誰かさんが触手のサンプル取り逃さなければもう少し早く終わっていたかも知れないのに』


『あら辛辣ぅ……てか逃げられたの気づいてたのね………』


 ジェットエンジンを吹かして縦軸回転しながら移動していたキュリーが、まず異変に気付いた。


『サンプルの解析通りね、前に何かあるわ』


 先行するキュリーの機影を追うにつれ、空気中の環境DNA、つまり臭気が強くなる。


 汚水に濡れて虹色に油照る団地の小路を抜けたディーゼのカメラに映されたのは、先の抗争に敗れて命を散らしたダゴンの深淵、老獪触(オルガナイザー)の死体と、その死体を掘り起こしたと思わしき異形、奪衣比丘尼(ダツエビクニ)のソヒガラシヤだった。


『……穏便に済ましませんか?』


 生気を抜かして機械的に構えた2機に対して、ガラシャが毒気の無い言葉をかけた。


『どう済ますって言うの?』

『あなた達に協力しますよ?要件を言ってごらんなさい』


『……あら、どうしましょう?ディーゼ??』

『言うだけタダでしょう……ひとつ目、その死体はウチらが預かる。ふたつ目、触手共の資産はウチで預かる。みっつ目、触手の生き残りがいるはずだ、そいつを捕まえる。このみっつに協力出来るのなら敵対しなくて済む』


『良いですとも、一つ目、これほどの上位個体、ゾンビにしても扱いきれそうに無くて思案していたところです。差し上げますとも。二つ目、刹那を死せる我々に金など必要ありません。持っていくがよろしい。三つ目、そのような者がいれば捨て置きましょう』


『……やけに物分かりがいいのね?なんだか腑に落ちないけど、キュリーあなたはどう思う?』

『貰えるもんは、貰える内に、貰っちゃうのが吉よ?』


 穏便に済んだらしい交渉に胸を撫で下ろしたガラシャは、持っていた長い木製のオールを担ぎ直すと、ダゴンの死骸の回収作業を始めた2機に背を向けた。


(あの邪神、脳は破壊されていましたが、細胞はまだ腐ってませんでした。邪神とはいえ神は神、腐っても神、腐ってなくても神ならば、触らぬ神に祟りなしです。神といえばもう一体、稲荷神も邪神を探しているはず……)


『うまいこと、カチ合って潰し合わないかしら?』


 ガラシャはシニア向けスマートフォン、らくらくスマフォを取り出した。







 

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