最後の晩餐みたいな
私、深澤美沙が目の当たりにしたもの。それは、悪魔の夜。大きな窓がある廊下の先での病室のこと。
松山君がベッドで静かに息絶えていた。血の気のない薄く青がかっている顔を見ることになったのはそのすぐ後。医者が無表情で死亡したことを確認したあとだ。病室の異様で私までも一緒に死んでしまいそうな雰囲気だった。
その後は気味が悪くて、気分も悪くなり私はこの場から逃げ出したんだ。扉を開いて自分の病室へ戻ろうとすると廊下には前が見えない程の黒煙がもやもやたっていた。
そしてその霧をスパッと切って走っていくと、壁が見えた。だが安心できたのもつかの間、次の一歩を踏み出した途端、足を滑らせて奈落の底へさようなら......。
そこからの記憶は曖昧でただ覚えているのは、松山君は死んでなどいなかったこと。
どうせ、悪夢でも見たのだろう。納得できる。だって病院ってのは............という固定概念があるから。
そして彼のいない病室で泣いている私は小雪ちゃんに手を引っ張られ、休憩室に入るとそこにはなんとも明るい松山君の姿があった。いつもの笑顔とは違う、また別のもの。 薄くて無理をしているような......。すると、部屋中に響く声で
「よ!深澤! 今日は来るの遅かったな。 絶対寝坊してたよね。」
いつも通りの高い声で、私に話しかけてくれる。いつもは当たり前のことなのだが、今日だけは恐怖を感じた。
「う、うん...。ははは。」
震えた声しか出すことのできなかった私をなんとも思わず、2人はさっそく話を始めた。
私も、静かにその話へ乗る。どうやら、「恋」の話をしているらしい。
小雪ちゃんが興味ありそうに松山君へ聞いた。
「松山君って誰か好きな人いるの?」
するととっさに
「そ、それは......!あとでちょっと来て......。」
さっきの彼の笑顔が嘘みたいに、顔が真っ赤になる。すこし人間味がでて私は嬉しかった。
そのあとも話は続いたり、外へ出て散歩したりしているちに、もう日が沈みかける。
三人とも解散して、病室へ戻る。
松山君が、病室を変えてからこの部屋はとても静かだ......。鳥の鳴き声が綺麗に聞こえてくるくらい。
風の音も聞こえるのではないのだろうか......。ここの窓を私は何回も開けた。
心が清まりそうなここから見える景色。いつも輝く自然の音が耳を通り抜けていきそう。
そうやって私は、前から読み続けていた、ある小説を開いた。
今日裏でおこったこと、そして次の日、終わりのない絶望へ落ちることも知らずに............。




