07 吸血鬼の饗宴
ああ、一目でわかった。
「貴様が、グリムだな。」
どこかくたびれた立たづまい。鉛色の重厚な鎧。四メートル近くある大剣。そして、鎧の胸元に描かれた紫色の花模様。
「相違ない。貴殿も、名を名乗りたまえ。」
「ロザリア。ロザリア・パールメリア。」
鎧越しでもわかる。鋭い殺意。堅い誓い。何かを護らんと決意した男は、こんなにも雄々しく美しい。
「ロザリア。しかと記憶した。都の脅威、残虐の鬼。マグノリアの名に誓い、粛清の花束を授けよう!!」
「貴様が血。修羅が血。飲み干し、我が野望の礎としてくれよう!気高く逝け、そして眠れ、孤独の同志よ!!」
幕は上がった。
吸血鬼は血を武器とする。手から染み出した血液は、記憶に準じて凝固し、独自の武器に錬成される。
ロザリアの武器は双剣と投げナイフ。身軽な体を活かした連続攻撃と、素早いナイフ捌きで敵を翻弄する。
右腕に担がれた大剣の長さに目を奪われていたが、よく見るとグリムは左手を失っている。
血が滲む包帯がちらつくあたり、最近のものだ。
グリムは左手を繋がれて幽閉されていた?実際どのように脱獄を果たしたのか、ロザリアは不思議に思っていた。自力で左手を引きちぎった?いくら吸血鬼とはいえ、そんなことが可能なものなのだろうか。
ロザリアの投げナイフでは、あの鎧は貫けないだろう。せいぜい牽制くらいにしかならない。懐に潜り込み、双剣を喉元に食い込ませ致命傷を狙うのがいいだろう。
グリムは、リーチを活かし、隙の少ない突き攻撃に徹していた。
片腕のみでは、この長さの大剣を振り回すことはできない。かかる遠心力に、握力が釣り合わない。一度薙ぎ払うことで精一杯。
ただ上手く距離を取れば、リーチで一方的に仕掛けることができる。
突きというのは攻撃が直線的で、バリエーションに乏しい。相手のリズムを崩していくことが重要になってくる。
突き。ギリギリまで引きつけ右にステップ。
突き。今度は左にステップ。
さっきから、避けてばかりでこちらから手を出さない。押されている。このままでは集中力が切れ、いつかボロが出る。距離を詰めなければ。
次、右側へ踏み込んで…
ストッ。
足を置こうとした場所に剣先が飛んできた。動きが完全に読まれている。
弱点を探さねば。
…そう、左だ。
奴には今左手がない。ロザリアが、グリムから見て左側へ回り込むように移動することで、突き攻撃は融通が効かなくなってくる。
そして、奴は今背面にある壁と距離が近い。
そのまま位置取りを回転させることで、剣は突くと壁にぶつかるよう仕向けることができる。
もしくはグリムがそれを察し、壁と距離を取ろうとした場合、必然的に横移動か後退を強いられる。
…それは少なからず隙となる。
タタッ。
駆ける。グリムの左側へ回り込む。
左へ。左へ。
カキィッ!
グリムの剣先が壁にぶつかり、弾かれる。
体勢が少し崩れる。
…今だ!
風のように体を運ぶ。一気に距離を詰め、そのまま勢いを殺さずに跳躍、逆手に持った双剣を喉元に振り下ろす。
ドシュッ!!
赤い血が迸った。




