06 殺された城
次の日、幸運にも警備兵を相手にする心配はなくなった。だが不運にも、他のもっと掴み所のない心配がロザリアを待っていた。
花の都の警備兵は死んでいたのだ。
その二体の堅実な警備兵は、血まみれでそれぞれ左側、右側に突っ伏している。特に争った形跡もない。一方的に心臓を串刺しにされている。まだ死体が温かい。殺害されてからそこまで時間は経っていないようだった。
不気味だった。厄介な相手が消えたのは幸運と言えるが、タイミングが良過ぎる。
幸運も度が過ぎると不自然さを生む。そしてその不自然さは、大抵の場合偶然の産物ではなく、そのまま不運へと直結する。過ぎたるは及ばざるがごとしとはよく言ったものだ。
城の中も散々なものだった。
あちこちに飛び散る血痕。無残に転がる死体。かろうじて一命をとりとめた者は、ただ呆然と立ち尽くすのみ。目の前の現実を受け止められていないのだ。
ロザリアの聞いた話では、かつてグリムは王女マグノリアに仕えた身。その忠誠心はダイアモンドのように硬く、揺るぎないものであったそうだ。
彼は城のどこかに幽閉され、既に十年という月日が経った。
それでも尚、王女様に危機が迫れば、どこからともなく現れ、騎士の忠義を果たしに来るという。
お伽話のような話だ。ただ、現実は小説よりも奇なり。案外胡散臭い伝承話の方が、その事実性は高かったりする。
城を襲撃し、マグノリア王女を人質に取る。城には王女様危機の報せが蔓延する。するとグリムが現れて…
というのがロザリアのシナリオだった。
少々雑感は否めないが、グリムがどこに捕まっているのかわからない以上、これしか方法はなかった。
…王女を探さねば。
王女が既に逃げ出した、もしくは殺されていた場合、計画は破綻する可能性が高い。とにかくまずは王女の安否を確認する必要がある。
階段を登る。白くまとめられた内装が、べっとりと張り付く血痕を際立たせている。
明らかに殺し過ぎだ。まともに動ける者がある程度残っていないと、王女様危機の報せを広めることができない。
道中、転がっていた死体が城内の地図を持っていた。
そして通路を通り、突き当たりを左に曲がり、再び階段を登る。
大きな扉。紫色の花模様が描かれている。
「間違いない、王女の間だ。」
ロザリアは扉を開けた。




