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05 棄てられた地下牢
錆びた鉄の匂い。
鉄格子越しの淡い空。
じめじめと凍てつく空気。
壁に繋がれた左腕。
渇きパサつく口内。
ぎゅるぎゅると鳴り続ける空腹のサイレン。
血が欲しい。
一口でいい。たったの一口、いや、一滴でも構わない。
目を瞑る。
瞼に移る絵はいつも同じ。
一面に咲き乱れる花。
赤、青、黄、緑、そして、紫。
花を指さす少女。藍色のドレス。日傘。
柔らかい陽だまり。
少女は紫色の花を手に取ると、愛らしく微笑んだ。
「この花はマグノリアって言うんだよ、花言葉は、自然への愛。」
そして私も紫色の花を手に取り、少女へ手渡す。
「この花は、ヘリオトロープと言います。花言葉は、忠誠心。お嬢様への永遠の忠誠を誓います。」
ヘリオトロープには、まだ他の花言葉もある。
私はこみ上げるその言葉を、そっと押し殺した。
…ポタッ。
ふと、頰を希望の雫が伝う。
そのまま口元へ流れた。
涙が溢れる。
ポタッ、ポタッ。
二滴、三滴とまた垂れる。
どこから滴る血なのかは皆目わからない。
しかし、どこ出身の血なのかはこの際気にしてはいられない。
生命の源。
生存の証。
「お嬢様、マグノリアお嬢様……」
棄てられた地下牢。
グリムは血をすする。




