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ロウゲン法師と武井ティーチャー


281年 1月 個人ターン


 俺は晋陽(シンヨウ)という都市にて、賊兵800人を抱擁した。賊の討伐は完了し、金299と兵糧2864を戦利品として入手。

先の小沛侵攻戦で行動力を大きく消費したから、流石の俺も疲れたぜ! 今日はこれで帰宅して、怜華の晩御飯の手伝いをして、ぐっすり寝るぜ!


 私は小沛の南隣に位置する譙(ショウ)っていう都市で、420人の賊兵を討伐。金22と兵糧17を入手しました。

先の戦で行動力を50も消費したので、今日はこれで終了します。


因みに、帰って晩御飯の支度をしていたら、うちの頭領が「プロテイン・フォー・マッスル!!」とかって言って、塩を入れるべき所でプロテインをしこたま入れようとしたので……まぁ、かるーく、いてこましました。

卵の殻焼きしか作れないんだからラムちゃんと遊んでて、って伝えても「TA・MA・GO! それは愛にしてi。ルーーラァー! ルーラァアーー!!」とか言って皆と一緒になってコサックダンス踊り出します。もうね、ホントにどうすれば良いと思います?

でも一応、ラムちゃんの世話は皆で一生懸命やってくれてるから、微笑ましいですよ!




281年 2月 引き続き個人ターン


 俺は今日、カシン軍の本拠地にして漢王朝(浣腸王ではないぞ。王様に浣腸なんてしたら捕まるからな)の都 洛陽にて、860人の賊兵をルーラァアーー!!

戦利品として金7と兵糧25を入手したのだが、僅かに行動力が足らないせいで残り120人を退治できなかった。莫大な戦利品が他の武将の物にィーー!! チキショーー!! 横取りした奴を見付けたら問答無用でハグして地球投げしてやるぜ!!


 私は今日、夕飯の支度をしてから賊の討伐に出掛けました。

行き先は洛陽。全勢力の中でも一歩リードした国力を誇るカシン軍の本拠地です。

ここの賊兵は誰かがギリギリまで削ってくれたみたいで、残り120人でした\(^^)/

お陰様で良いとこ獲りができました。秋渓曰く「ハイエナ戦法」らしいです。


しかも、戦利品の金141と兵糧1270に加えて、私の武力も52に成長しましたヤッタ!

その次は洛陽の西隣にある弘農(コウノウ)へ移動。そこで480人を討伐して金6と兵糧17を入手。

因みに弘農もカシン軍の領土になってます。偵察も兼ねてます。




「そして俺のターン! 今日は賊討伐を休憩してロウゲン法師を捜し出すのだ! さぁさぁ怜華、俺に続けぇ! ついでにショッピングもするぞ! でもスマンが今日は俺の強化アイテムの購入目的でな! ハブ型ポーチやアナコンダ抱き枕はまた今度な!!」


「いや、それはもう持ってるからいいし……今はどっちかって言うとマングースだから」


 ふむふむ、隠れ変人さんの今のマイブームはマングースですか、ふむふむ。

……っていうか冗談半分で言ったけど、そんな奇特な物を持ってるのか。女子の部屋に入った事がないから分からないが、今時の女子はもしかしたら熊の毛皮とか鷹の剥製とかを飾っているのかもしれないな。中々に興味深いぞ。


 そして今更だが、今日は小沛の都市を見聞しがてら、アイテム購入をしようと思う。

賊討伐で個人的なお金がある程度貯まり、頭領だから放浪軍の金を引き出す事も可能。


放浪軍自体が金の使い道に困るぐらいなので、正直に言って自分の通帳みたくしても別段問題はない。ないが、抑々にして自分の贅沢に使うつもりはないし、自分の為に使うのであれば皆の為にもなる有効な使い方をしたい。それこそが頭領たる責務だろう。


「で、アイテムを先に買う? それともロウゲンさん発掘を先にする? どっち?」


「ロウゲン法師は農村を見聞すると発見できる。アイテムは市場で買える。そして今いる場所は市場よりも農村に近い。という訳でロウゲン法師が先で!」


「了解。じゃあ農村の方に行こっか」


 俺と怜華は城内のとある農村へ向かい、俺が行動力20を消費して「見聞」を開始。

村内をくまなく捜し、時には目撃情報を人に聞き、時にはモグラに道を尋ね、瓜坊を追い掛ける怜華を追い掛ける俺を追い掛ける牛を狙う泥棒を捕まえようとする役人を邪魔しようとする石に一周回った怜華が躓いて転んでパンツが見えて釘付けになった泥棒と役人を俺が捕獲して瓜坊を逃がして…………兎に角、色々と頑張った。


「はぁ……はぁ……! 居たぞ、ロウゲン法師だ!」


 流石の俺も結構疲れた頃、漸く読書をしているロウゲン法師を見付けた。

本は顔の前にあるのに目線は斜め上を向いている為、本当に読めているのか気になるが、あの逸れ具合は間違いない。


「うむ! 良い塩梅の角度だ。流石は「斜め45°の目線」と噂される武井ティーチャーのお師匠様なだけはあるぞ!」


「えっ? 現国の武井先生ってそんな風に言われてるの?」


 現実世界に於ける現国担当の教師こと武井ティーチャー。あの人もまた、ロウゲン法師のように目線が逸れており、1800年近く前にそれを実行しているロウゲン法師はティーチャーのティーチャーに当たる筈……たぶん。


「応! あの人の目線先には妖精さんが映っている……なんて噂もあるぜ! …………俺の中ではな」


「あんたの妄想の中かよ」


「でも実際によ、武井ティーチャーって授業の時にいっつも斜め上見てね? ハイハイチャーン、アニョハセヨーー……とか何とか言いながら」


「……それはまぁ……認める。時折、何語喋ってるのかも分からない時あるし」


 基本的に真面目な怜華は、相手がどんな人物であろうと一応の敬意を払う。

それが学校の教師ならば尚の事であり、彼女は話題に挙げたがらない様子だった。


 まぁそんなこと関係なく、俺が話題に挙げる訳だが。


「それで俺さ、試しに聞き取れる範囲で何語か分からない言葉をカタカナでノートに書いてさ、授業の最後にノート提出したんだわ」


「……そしたら武井先生は何て?」


 首を傾げて見せる怜華に、俺だって首を傾げて見せた。

体験した当の俺ですら、何故か分からない出来事だったからだ。


「何でか知らねぇけど三者面談開いてくれた。最近悩みとかは無いかな? って感じで」


「ちょっ!? 秋渓あんた……! それは……その…………」


(キチガイ扱いされたんじゃないの!?)


 言って、怜華は何かを思い留めるように口を塞いだ。何だって言うんだ。


「それはその、何だ?」


「いや、やっぱ何でもない。……それで? 面談した結果は?」


「俺は俺だろ? んで母さんも母さんだろ? っていうか母さんから俺が産まれたから俺だろ?」


「ん? ん? えっ、どういう意味?」


 俺の思考についていけないとばかりに、怜華が尋ね返す。

俺は俺なりに、噛み砕いた説明を行う。


「ほら、俺って他から見ると特殊なんだろ?」


「特殊っていうか、色々とあり得ないっていうか……まぁ、変人の類いよね」


「でもそれは変人な母さんと父さんから産まれたから仕方のない事だろ? トンビの子はトビって諺だってある訳だしさ」


「いや、蛙の子は蛙ね……」


 おっと間違えた。これだから現国は苦手だぜ。

その一方で現国を得意科目の一つ(というより体育以外は得意科目。俺は体育と歴史だけが得意科目。感動的だな)とする怜華は、俺の言わんとする事を察した様で、若干の溜め息混じりに代弁する。


「……取り敢えず、あんたが何を言いたいのかは分かった。要は武井先生も仰天するような事をユキナさん(秋渓母)がやっちゃった訳ね」


「そうそう、そういう事。流石は知力100! 俺の言いたい事を良く纏めてくれたぜ!」


(正直めんどくさいわよ…………あんたの翻訳)


「それで実際に何やったかって言うと…………母さんな、武井ティーチャーの視線先に浮遊する「もや○もん」みたいな丸っこい妖精さんを見ちゃってよ」


「…………はぁ!?」


 まさかの存在が話題に挙がり、怜華は驚愕した。

俺はそんな彼女を徐に無視して話し続ける。


「武井ティーチャーにこう言ったんだよ。「可愛らしい子達ですねぇー」って」


「えっ……まさか本当に妖精さん居て……そう言えば確か、ユキナさんって霊感あったよね?」


「雪女疑惑があるだけにな! 因みに前、怜華が母さんの席でうたた寝してただろ? あの時に怜華の周りに沢山の座敷わらしが居て、髪の毛を引っ張って遊んでたんだと」


「マジか!? 何で起きなかった私! すごい見たかったわ!」


「起きてもお前、霊感ないから見えないだろ。名前はそれっぽいけど」


 知らぬ間の霊体験に、怜華は異様な食い付きを見せた。

流石は隠れ変人。ゴキブリは駄目だが、幽霊とかUMAとか珍獣とかは大丈夫なのだ。


 だが然し、「れいか」だけど「れいかん」無しとは、何とも惜しい限りだ。

ついでに言えば俺にも霊感的なものはない。


「それで武井ティーチャーはショックのあまり、体を壊したとか何とか……」


「あっ!? もしかしてそれ! 武井先生が二週間ぐらい休んだやつ!?」


「応ともよ!」


「視線先のやつ……やっぱ触れちゃいけなかったのね」


「みたいだぜ? だから休み明けの武井ティーチャーさ、妖精さんを避難させたのか知らねぇけど、斜め45°から90°に変わって白目剥いてただろ?」


「数日間だけど……あれは恐怖だったよね……」


 あの時は、よくもあんな状態で授業が出来るもんだと感心していた。

だがそれは武井ティーチャーだからこそ、可能な領域であり、他の人は不可能な筈なのだ。


 結局の所、何が言いたいのかと言えば……見聞からの初対面登用を持ち掛けて楼玄(ロウゲン)法師は仲間になったのだが、彼は何故か90°上に視線を向けて白目を剥いていたという事だ。


楼玄(字:承先)

呉国末期の文官。農政関係のキャリアを歴任した末に、清廉な人格が皇帝 孫晧(ソンコウ)の目に留まり、要職に取り立てられる。

楼玄は期待に応え、落ち目の呉国を多岐に亘って支え続けるものの、孫晧が次第にバーサーカー状態となり、国は乱れてしまう。

楼玄は孫晧に対して厳しく諫言するが、それが災いして彼は疎まれてしまい、第三者の讒言が決定打となって地方に追放される。

孫晧は追放先でも、楼玄に対する陰湿な嫌がらせを計画し、挙げ句には誅殺まで考えた。然し、実行役の地方低級官僚T氏が、楼玄の人格者然とした姿に尊敬の念を抱いてしまった為に、実行される事はなかった。

T氏が急死すると、楼玄は彼の遺品整理を行うのだが、その遺品の中から孫晧の嫌がらせ指示書を発見してしまう。

楼玄はそれを苦にして自殺してしまった。


…………その後、楼玄法師あらため武井ティーチャーとして現代転生した彼が、持ち前の教養を活かした教師となって知識チートするのは……また別の話。

『古代国家で政治家を務めた私、自殺したら現代転生して知識チートができそうだから斜め上を逝く』の主人公。色々と感動的だな

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