久方ぶりの山賊討伐
個人ターン5月 長沙
「はじめましてカクセキさん。殿路秋渓です。突然ですがお仕事は?」
「善良な山賊です。3,000人を超える部下と一緒に、都市の治安を下げています」
「ご趣味はなんですか?」
「討伐に来るカンゲン軍の武将と、おままごとする事です」
「カンゲン軍にはコウチュウさんがいる筈ですが、彼が来たらどうするんですか?」
「武力94のチートお爺ちゃんの訪問はお断りしています。ここだけの話、カンゲンさんに頼んで治安以外の仕事をさせているので、私のもとに来るのはチンショクさんやカンコウさんです。彼等とは武力が近いので、割と良い勝負ができますよ」
「……そうですか。では武力103の俺は……」
「危険分子ィィィィィーーーー!!!」
テレテレテレテレ! テレテレテレテレ! デン! デンデン! デンデンデン! デン! デンデン! デンデンデン!
『野生のカクセキ(武力59)が現れた!』
「イィィイーー!! イィ! イイイィィィーーー!!」
岩タイプのカクセキが土中からモゴモゴモゴモゴ! と姿を見せる。八頭身になったムキムキのディグダのようだ。
「殿路流軍学が二世、“戦屋の殿路”。俺の愛は全てを包む!!」
賊討伐の最中、賊将カクセキと遭遇した俺は、急遽一騎打ちをする事になった。
脱ぎ捨てた服から見せる輝かしい肉体美が、カクセキの部下達を早くも魅了させる。
野良で鍛えた筋肉も当然素晴らしいが、強敵と競い合って昇華した俺の筋肉はもっと素晴らしい筈。この勝負、もらったぜ。
「見合って見合ってぇ……はっけよーい…………バリバリの実ィィ!!」
真っ向勝負で負けることはないが、常勝戦法でいこう。まずは始めの2ターンを守りに徹し、《回復》で気力を蓄え、《反撃》で敵の大技を弾く。
この辺の事は第91話「サクッと片付ける陳留攻略戦②」を参照してくだされ。
「イィィーー! イィィーー! イイィィィーー!!」
カクセキの攻撃は、気力を消費した大技だ。小手先の技ではなく、全神経を集中して繰り出すメガトンパンチ!!
「効かァァーーーん!!」
俺の大胸筋を侮るなかれ。胸に届く前に大胸筋の熱量が空間を歪ませ、カクセキの攻撃を離れた場所から見守る彼の部下に肩代わりさせる。
即ち反撃である。カクセキは味方に攻撃してしまった事で、精神的ダメージを負った。
「イィィーー! イィィーー! イイィィィーー!!」
2ターン目も、カクセキは変わらず強攻撃にでた。
というより、AIが行う一騎打ちの行動は大抵変わらない為、この2ターンで気力の大部分を使い果たした後は、気力を消費しない弱々対応になる。
「無駄よ! 無駄無駄ァァァ!! 肉体の熱エネルギーだけで自家発電ができるわっ!!」
カクセキの岩岩チョップも、《反撃》で軽く受け流す。
キレてますよポーズをする事で、俺の周囲に滞留する空気イオンが頬染めから始まる化学反応を引き起こし、何か色んな過程を挟んだ上で電気が生成され、その電気が盾となってカクセキの攻撃を弾くとともに、彼の指先に強めの静電気を迸らせたのだ。
それが反撃ダメージとなり、カクセキの体力を削った事は、言うまでもないだろう。
「ここからは俺のターンだ。殿路流奥義! 東大寺大仏殿落下!!」
1/1スケールすなわち原寸大の東大寺大仏殿が、カクセキ上空から突如として落下。カクセキは当然ながら、3,000人を超える彼の部下達も巻き添えになる。
彼等は悲鳴をあげる間もなく、大仏殿の基礎となったのだ。
『キンキンキンキン!! K・O!!!』
「……フッ! 悪いな、筋肉の女神に愛されすぎて」
『Tonogi WIN!!!』
今日も今日とて、筋肉天使達の笑顔が爽やか満点輝き百万点。
奥義炸裂で相手の体力を0にした俺は、一騎討ちに完全勝利した。
因みにこの奥義、単発ではない。相手の体力が残っており、次のターンに繰り出した攻撃も奥義となった場合、大仏の目から追尾ビームが放たれるのだ。
何? そんな大仏がいてたまるかって? いるのだ、殿路家の裏庭に。
「……ィィ……イィィーー」
ボロボロになったカクセキが、地面に伏せている。
俺の攻撃がよほど良かったのか、快感に潰されて「良い! ん良いィィ!!」と述べている様に、俺の中で脳内変換された。
「カクセキ……イイ! ンイイィィッ!(訳:カクセキ……俺達の仲間にならないか)」
「イィ!? イィイッ! イイー!」
「イイイ。イイ! イィ! ンイイィィッ!(訳:遠慮はいらない。おかしな仲間は多ければ多いほど賑やかだ)」
「イィイッ! イイー! イィイッ! イイー! イィイッ! イイー!」
「ハッハッハッハ! そうだな。それじゃ早速――
何言ってるかわかんねぇよっ!!」
殿路家裏奥義・肉体言語!!! ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!!!
「ンンイイィィィンッ///」
一騎討ちは終わったが、俺は無数のガトリングパンチをカクセキにお見舞いする。
それもただの百烈拳と侮るなかれ。一発一発から手足の生えたムキムキな “あ” から “ん” までの五十音体が射出され、自我を持った彼等が逞しい肉体で標的を囲み、危ないオーラでドMに目覚めさせるのだ。
「イィ……! イィ……! イイッ///」
体中のツボというツボを刺激され、全身性感帯に改造されたカクセキが、色んな液体を出しながら再び地面に伏している。これなんてエロゲ?
「カクセキ、ゲットだぜ」
名馬・爪黄飛電ことUMAをプレゼントしたお返しに、怜華から貰った「怜華ボール」。未確認生物を100%捕獲できる優れものだ。
俺はそれで郭石を登用もとい持ち帰る事にして、ついでに彼の部下だった賊兵3,620も放浪軍に加える。
ついでのついでに、彼等が蓄えていた金337、兵糧3,288も頂いていく。
「また一つ、平和な世の中に近づきました。あぁ、筋肉の男神ポセイドンよ。迷える子羊達に愛の祝福を」
『その望み、叶えよう……!!!』パァァァァァーーー
「「「んほぉぉぉぉ!!!」」」
放浪軍に加わったばかりの賊兵3,620が、男神の後光に当てられて筋肉に目覚めた。
絶対的な忠誠を誇る不死の精鋭が、出来上がった瞬間である。
【武将列伝】
郭石(字:不明)
黄巾の乱後、長沙で反乱を起こした区星に呼応する形で、周朝と共に荊南地方を荒らした人物。長沙太守の孫堅によって討伐された。
演義には登場せず、正史の記述も上の内容だけである為、どのような性格や境遇だったかは不明。当然ながら知名度は殆ど無い。
ただ彼も、「勝てば官軍、負ければ賊軍」の言葉に従わざるを得なかった敗北者である事を考えれば、想像次第によっていかようにも楽しめる。
時の王朝に対して反乱を起こした事で悪者にされているが、もしかしたら腐敗した漢王朝以上に頼れる侠気溢れた人物だったかもしれない。
荊南地方を荒らしたというのも、史書を編纂するときに都合よく記しただけで、疲弊した当時の民衆にとっては悪代官をやっつけるヒーローだったのかもしれない。まぁ最初はヒーローでも、だんだんとダークヒーローに変貌していく例もあるのだが。




