ep.15 カミングアウト
「つまり、ご両親の都合で離れ離れになった双子の兄妹が渚先輩とひまりんで、渚先輩のお父さんの再婚相手の連れ子が詩音ちゃんとりーおんってこと?」
俺たちは何故か6人で所謂 "兄妹問題"について話しながら食卓を囲んでいた。これまでの経緯をざっくり説明すると意外にも心音の実妹、もとい後輩の結城桃果がうまく話をまとめた。
「そういう事になる。黙っていて悪かったよ」
俺以外の5人はなかなか難しい表情をしている様子だ。特に篠崎姉妹に関しては突き刺さるような視線を向けてくるので正直なところ今すぐにでも全速力で逃げ出したい、脱兎の如くという言葉がこんなにもしっくり来る場面に遭遇したのは初めてだ。
すると詩音さんが身を乗り出して顔を近づけて来た。
「なんでそんな大事なこと言ってくれなかったの? 私たちのことそんなに信用してなかった?」
これには莉音さんもブンブンと首を縦に振って同意している。
「本当にごめん、でも隠しているつもりは全くなかったんだよ。完全に俺がタイミングを逃しただけで」
そして今度はしばらく黙っていた陽鞠が口を開いた。
「なぎちゃんの事だからどーせこの事が知られたら私とりーちゃんが気まずくなるとか思ってたんでしょ?」
それに関しては完全にそう、図星だ。双子の割に性格は似ていないがこういう思考の部分だけは昔からそっくりだと言われてきたのだ。だから陽鞠にも俺の真意が分かったのだろう。
「でもまぁ、パパが幸せになれたなら私はそれが分かっただけで充分だよ。それに可愛い妹が2人もできたし!しかしなぎちゃんもこんな美少女2人と同居なんて隅に置けないなぁ〜」
先ほどまでの張り詰めた空気を一瞬で我が物にしてしまう陽鞠、実に見事だ。そして緊張が解けたように次第に場の空気は元に戻っていった。誠に恩に着る、我が妹よ。
「もう、事情は分かったけど今度から隠し事は無しね? なぎお兄ちゃん?」
「次お兄が隠し事したら、、、わかるよね?」
実妹と幼馴染、そしてその妹の前で同級生女子からお兄ちゃん呼びを強調されるのは流石の俺でも羞恥心が沸々と湧いてきて居心地が悪い。
更にさっきから食卓の端の方に黒く禍々しいオーラを感じるのだがこれは言わずもがな心音だろう。恐る恐るそちらを見ると小さな声でぶつぶつと独り言を発している。
「ナギサガドウキュウセイビジョフタリトドウセイ? ギマイ? オナジヤネノシタニトシゴロノダンジョガサンニンデクラシテイル? 」
あ、これダメなやつだ。早くなんとかしないと確実にあの世へのゲートが開くやつだ。クソッ、自分で撒いた種だがこうもタイミングよくカミングアウトする羽目になるとは、、、。戸惑っていると救世主が現れた。桃果だ。
「そっか!!じゃあお姉ちゃんが小さい頃ずっと好き好き言ってたナギサくんって渚先輩のことだったんだね〜!!!」
救世主だと早まった俺の考えが浅はかだった。桃果がそう発した刹那、心音の黒いオーラが消滅して今度は顔まで真っ赤に染まっていった。同時に夕食のハンバーグを頬張っていた篠崎姉妹のフォークが食卓に落ちる音が響く。それをニヤニヤとした顔で眺める実妹の陽鞠。まさにコレこそがカオスというモノなのだろうと実感した。
「ちょ、ちょっと桃果!!!何言ってるの?! それは昔の話、、、っっっっつ!!」
昔はよく言っていたと自白したような形になりあわあわし始める心音。そして桃果の暴走は未だ止まることを知らない。
「ちなみに詩音ちゃんとりーおんは渚先輩と暮らしてて何もないのー? 例えばあんな事❤︎とかそんなこと❤︎とか、、、?」
この子、賢いと思ったけど撤回だ。まるで全てを巻き込んで突っ走る台風のようで全く歯止めが効かない、危険すぎる。そしてなんだその❤︎は。
その時、いつの間に桃果の背後に回った莉音さんが強烈なヘッドロックをお見舞いした。
「いててててて!!!!!ごめんってりーおん!!! なんかいつもより強く無い?!」
あ、なるほどね。桃果の暴走を止める莉音さん、これいつものパターンなんだ。またひとつ勉強になったな。なんて一周回って落ち着いた俺が頷いていると詩音さんがぷるぷる震えながら半ベソで訴え始めた。
「本当に何も無いよ?! 私たちあくまでも兄妹だからね?! 信じて、、、?」
おい、半ベソかかれるとなんかこっちまで罪悪感沸いてくるだろ。
食事中だとは思えないカオスに包まれたこの空間はこのあとまだ暫く続いた。
そして全員の門限が迫り解散した後、俺は即座に家事を済ませて自室に逃げ込んで行ったのだった。




