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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第9幕 虹を越えて、神を凌ぐ
159/171

力と力のぶつかり合い、殺死合いはいつしか励ますように高みを目指す

 

 スカイツリー天望デッキ、フロア340。

 最早、その場所に意識を堪っているのは二人しかいない。

 一人は善湖善朗。

 もう一人は、大悪鬼、酒呑童子。

 二人は静かに視線を交差させて、相手の出方を伺っている。



 〔ス・・・。〕

 〔ブォンッ〕

橙刀(とうとう) 烽炎連刀(ほうえんれんとう)」〔ゴゴゴゴゴゴッ、ズバアアンッ、ズバアアアアアンッ!〕

「くぅぅぅっ・・・・・・ふははははっ。」

 〔ブォンッ!〕

 善朗が恐れる事無く酒呑の間合いに足を踏み入れる。すると、酒呑は透かさず豪腕を奮って、善朗の頭蓋を砕こうとした。善朗は、それを交わして、橙刀の二連撃を酒呑に浴びせた。確実に酒呑の胴と背を切り裂き、地獄の業火で酒呑を焼くが、酒呑は豪腕を空に再び奮うと身を包む業火は掻き消されて、平然とその場に立つ酒呑だけが残る。



 酒呑は一方的に善朗の攻撃を喰らいながらも、平然としてその場に立ち続けている。

「ひっはっはっはっ・・・善湖善朗ぉ~・・・お前は強いッ・・・圧倒的に・・・味合わさせろっ・・・お前の全てをっ。」

 酒呑は堂々と仁王立ちで善朗をギラリと視界に収め、高らかにそう善朗に要求する。


「・・・・・・。」

 善朗はそんな酒呑を見て、大前を握りこむのみ。


「はっ!」

黄刀(おうとう) 疾刀迅雷(しっとうじんらい)」〔パーーーンッ!!〕

「カッ?!」

藍刀(らんとう) 一刀万波(いっとうまんぱ)」〔シャリシャリシャリシャリッ、ゴパアァーーーーンッ!!〕

「ぬはあああああああああああああっ!!」

 〔ドゴオオオオオオオンッ!!!!〕

 酒呑が意気揚々と一喝して、善朗に迫る。その瞬時に善朗は黄刀を放ち、雷撃で酒呑の動きを止めた。酒呑は凄まじい雷撃により、流石に一瞬動きを止める。しかし、それでも酒呑は怯まない、すぐに立て直して善朗に迫ろうとするが、次に善朗を視界に入れようとしたその時、善朗が放った藍刀が作り出した万の刃の壁に酒呑は驚愕する。そして、酒呑は刃の濁流に飲まれて、外壁へと叩きつけられた。



「まだまだああああああああああああっ!!」

 酒呑は相当な攻撃を全て受けながらも平然とまた立ち上がる。


 さすがに大悪鬼と言えど、その全身からは血が溢れて流れ、鬼としてでも平然としているのが不思議なほどのダメージが身体に刻まれていた。


「・・・・・・。」

 善朗の眉が少し(ゆが)む。酒呑には全力で大前を奮っている。手加減など一切なく必殺の一刀を放ち続けている。現に、善朗には一刀一刀に感触はあった。だが、酒呑は体中の傷とは裏腹にピンピンしているように思えた。その感覚の剥離(はくり)が善朗の感触を鈍らせた。



「どうしたっ、善朗っ!畳み掛けてこないなら、その首もらうぞっ!」

 酒呑はかなりの距離が開いた善朗との間合いを一気に詰める。それは二人以外には決して捉えられない音速の世界。それでも、


 〔ブンッ、ブォンッ、ボボッ!〕

 善朗は酒呑の必殺の豪腕を見事に紙一重で交わしていく。だが、


「・・・・・・。」

 善朗は今度はあえて攻撃せずに、ただ酒呑を見る。


 それは四角い檻の中で、相手がどれほど弱ったかを確認する猛獣のように。


「ひゃははははっ、善朗っ!!もっと喧嘩を楽しめっ!!!!」

 酒呑は善朗の行動を見抜いた上で、それでも強気に善朗を挑発する。


蒼刀(そうとう) 一刀氷心(いっとうひょうしん)」〔ヒューーーーーッ、パキパキパキパキキィーーーンッ〕

「ぬっ?!・・・・・・うおおおおおおおおおおおっ!!」

 〔パキパキパキッ、バキンッ!〕

紫刀(しとう) 光陰流刀(こういんるとう)」〔ヒンッ・・・ズバシュンッ!〕

 〔ズザザザザーーーーーッ〕

「くぅぅぅぅ・・・。」

 先に動いたのは善朗だった。

 酒呑に蒼刀を放ち、直ちに酒呑の動きを止める。

 酒呑は一瞬凍りつくも、剛力でそれを内から打ち砕く。だが、その一瞬を見逃さない善朗は紫刀を透かさず酒呑に放った。



 霊の放つ技は想いの力。



 その力を応用して、善朗は紫刀を酒呑との間合いを取る事に使った。紫刀の神速の一刀をその場で敵を斬り《《留める》》事に変換し、その神速の速さで酒呑と瞬時に距離を取った。


「・・・・・・。」

 善朗は仁王立ちする酒呑を観察する。


 〔ジャリッ・・・ダン・・・。〕

「・・・くっ・・・。」

 酒呑はこの時初めて、敵の攻撃によって片膝を床についた。善朗の攻撃にいよいよ耐え切れなくなってきたのが目に見える。



 〔ザッ!〕

赤刀(せきとう) 活火激刀(かっかげきとう)!」〔ゴゴゴゴゴゴゴゴッ、ズバッ!・・・・・・〕

 善朗は見逃さない。弱った獣ほどおそろいモノは無い。善朗はこの機に一気に酒呑の首を取りに来た・・・はずだった。


 〔シュバンッ!〕

 善朗の目に驚きの光景が広がる。


 酒呑が善朗の赤刀に合わせる様にその豪腕を奮うと、善朗の赤刀と相殺するかのように攻撃が打ち消しあった。




「・・・・・・それはさっき見たぜ・・・甘く見られたもんだなっ!」

 先ほどまで、ヒザマズき弱っていたはずの酒呑が笑みを浮かべて善朗に襲い掛かる。


「橙刀 烽炎連刀」〔ゴゴゴゴゴゴッ、ズバッ、ズバンッ!・・・・・・〕

 〔シュバンッ、シュババンッ〕

緑刀(りょくとう) 剣斬刀樹(けんざんとうじゅ)」〔シャシャシャシャッ、グニョォンッ、ズバババババッ!〕

「おっ?!・・・・・・へっ!」

 〔ドゴーーーンッ!!!〕

 襲い掛かってきた酒呑に善朗は堪らず橙刀を放った。しかし、橙刀も赤刀と同じように酒呑の豪腕に掻き消される。だが、善朗は緑刀を放つことで酒呑を退けた。



 緑刀・・・それは、まだ《《見せていない一刀》》。



 緑刀に酒呑は面喰い、その攻撃を笑って受ける。その強烈な連撃に酒呑の巨躯(きょく)はたまらず仰け反り(のけぞり)、外壁へと再び叩きつけられた。


「へへへへへへっ・・・人が悪いぜ、善朗ちゃん・・・。」

 酒呑は外壁に叩きつけられて、大の字になった状態からそう善朗に言葉を飛ばす。


「・・・・・・。」

 善朗は淀まない。酒呑の言動に揺さぶられない。静かに酒呑を常に見ている。


「・・・まだあるのか?・・・隠しっこなんてないぜ、善朗ちゃんっ・・・。」

 酒呑は全身に(たか)ったホコリを払いながら、ゆっくりと立ち上がる。


 〔タッ〕

 善朗はあえて飛び込んだ。


「はっ!」

 酒呑は善朗が己の間合いに飛び込んできたことに笑顔を浮かべる。


「赤刀 活火激刀!」〔ゴゴゴゴゴゴゴゴッ、ズバッ!・・・・・・〕

 〔シュバンッ!〕


「橙刀 烽炎連刀」〔ゴゴゴゴゴゴッ、ズバッ、ズバンッ!・・・・・・〕

 〔シュバンッ、シュババンッ〕


「黄刀 疾刀迅雷」〔パーーーンッ!!〕

 〔パシュンッ!〕


「蒼刀 一刀氷心」〔ヒューーーーーッ、パキパッ・・・〕

 〔ジュワアアアアッ・・・〕


「緑刀 剣斬刀樹」〔シャシャシャシャッ、グニョォンッ、ズバババババッ!〕

 〔ガキガキガキガキガキッ、ガキキンッ!〕



「藍刀 一刀万波」〔シャリシャリシャリシャリッ、ゴパアァーーーーンッ!!〕

 〔ブォンッ、ドガシャアアアアアアンッ!〕

「紫刀 光陰流刀」〔ヒンッ・・・ズバッ!〕

 〔キャインッ・・・ブオオンッ!〕



 善朗は酒呑の挑発に乗る様に攻撃を繰り出す。すると、


 赤刀と橙刀は鬼気を水の性質変換で相殺

 黄刀は酒呑自身の回りに水の幕を張り、雷撃を遮断

 蒼刀は鬼気を火の性質に変換して相殺

 緑刀はウネル斬撃を視認して叩き落とし

 藍刀は豪腕でなぎ払う

 最後に藍刀のなぎ払いに紛れ込ました紫刀を見切って、斬撃を払い、

 間合いを取ろうとした善朗に剛脚を浴びせるも善朗は紙一重で交わしていった。



 瞬きの合間の死合いを見事に切り抜けたのは酒呑か善朗か・・・。



「ふっふっふっふっ・・・面白くなってきたな、善朗ちゃん・・・。」

 酒呑は善朗を見下すように胸を張りながら仁王立ちで善朗を見る。


「・・・・・・。」

 善朗は変わらない。ただただ、酒呑を見据えていた。







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