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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
幕間5
119/171

怒涛の的中!・・・今年の私は違うと、私は寿司を頬張っていく・・・1ヵ月後、食卓にはモヤシしかなかった

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(・・・ここは?)

 冥はゆっくりと目を開けて、見覚えのない天井を見る。


 そして、左右を見回して、状況を整理していく。清潔に保たれた部屋で、自分には点滴から延びた管が繋がれて、心電図とも繋がっていることから、ここは病院だろうと分かった。


「・・・冥・・・ちゃん・・・。」

 冥が目覚めた事に気付いたヒヒロが泣き腫らした顔でベッドの冥の様子を覗き込んでいた。


「・・・ヒヒロ様・・・。」

 冥は目があったヒヒロの名を呼んで答える。


 そして、自分の右手にぬくもりを感じて、そこに目線を送る。

(・・・兄さん?)

 冥が自分の右手の方に視線を送ると、そこには冥の右手を両手で優しく握り、そのままベッドに頭を預けて眠っている空柾の姿があった。


「空柾起きてっ!空柾っ、冥ちゃんがっ、冥ちゃんが目を覚ましたのよっ!!」

 ヒヒロはこの喜びを最大限伝えようと空柾に大きな声で呼びかける。


「・・・んっ・・・ん~~~・・・。」

 ヒヒロの声は魂が繋がる空柾に容易に届き、その眠りから揺さぶり起こす。


「・・・兄さん。」

 冥は兄の目覚めと合わせる様に、その右手に力を込める。


「・・・・・・め・・・い・・・。」

 空柾は眠りこけた目で冥を見て、目を丸々とさせる。


 空柾はこれは夢ではないかと当然思う。が、横にいたヒヒロが涙交じりの微笑みでゆっくりと何度も頷いていることで、おぼろげな思考を鮮明にしていく。


「めっ!」

「あっ、ごめんっ、兄さんっ、それどころじゃないのっ!」

「えっ?!」

 空柾が喜びを大爆発させて、冥を抱きしめようとした瞬間、冥はハッと何かに気付いて、自分についていた管という管をサッと取り外して、今まで寝ていたのが嘘のように飛び跳ねて、病室から出て行く。その様子に、空柾とヒヒロは驚きのあまり固まるしかなかった。






「君っ、ちょっと・・・困るよっ!」

「邪魔したいで下さいッ、時間がないですッ!!」

 〔バンッ!〕

「ギキョウ様っ!!」

 ギキョウが救霊会の面々と会議をしていると、そこに突然、警備員を押しのけて、冥が姿を現した。冥は入るなり、ギキョウの名を叫び、息を荒げながら近付いてくる。


「・・・君は・・・冥ちゃん・・・だったかな?」

 突然入ってきた冥に少し動じるも、やはり年の功、スッと気持ちを落ち着けて、荒ぶる相手を前に冷静に対応する。


「はぁ~っ、はぁ~っ・・・すいません、突然・・・でも、霊界が大変なんですっ。」

 冥はここまで走ってきたのか、息も絶え絶えに事情を説明しようと試みる。


「・・・霊界・・・ですか?」

 ギキョウは言葉足らずの冥の話が理解できるはずもなく、冥の言葉を復唱するしか出来なかった。ギキョウがそんな冥の応対に困り果てていたその時、




「ギキョウ様っ!大変です!」

 冥の次に、こちらはちゃんとした救霊会の関係者の女性が血相を変えて、慌てて会議室へと入ってくる。




「・・・あっ、あなたもですか?・・・まずは落ち着きなさい・・・深呼吸をしてから、ゆっくりとお願いします。」

 ギキョウはその関係者にも冷静に落ち着いて対応して、ゆっくりと話すように指示する。


「・・・あっ・・・はっ、はい・・・すぅ~~ふぅ~~・・・。」

 会議室に入ってきたその女性はギキョウに言われたように深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。そして、



「大変なんですっ・・・霊界の武道大会が妖怪にのっとられて、十二人衆全員と多数の霊界の猛者達が共に姿を消しましたっ。」

「っ?!」

 女性が落ち着いて出来る限り、ゆっくりと言葉を発しながら、伝えるべき事を簡潔にギキョウ達に伝える。その言葉にギキョウ達は驚愕した。しかし、



「裏霊界です・・・皆は裏霊界にいます。」

「えっ?!」

 冥だけが、その驚愕の事実の行き着く先にサッと辿り着き、その場にいた全員を導く。


「・・・なぜ、君がそれを?」

 当然の質問をギキョウが冥にする。


「ギキョウ様はご存知と思いますが、私は善湖善朗という少年と式霊契約を結んでいます・・・私には分かるんです・・・彼の正確な場所が・・・。」

 冥は先ほどまでとはうって変わって、波も立たぬ湖面のように落ち着いた表情でギキョウに淡々と説明する。


「・・・なるほど・・・それを我々に急いで伝えに来てくれたのですね。」

 ギキョウはサッと頭も中で思考を整理して、冥に頷く。


「今、善朗君たちは裏霊界のど真ん中に用意された処刑場にいます・・・そこには6人の妖怪と何千もの悪霊や怨霊たちに取り囲まれていて、非情に危険な状況なんです・・・だから、早く助けに行かないと・・・。」

 冥は一番理解のあるギキョウにゆっくりと近付いていき、自分の知りえる情報と考えを丁寧に伝える。


「・・・貴方の情報は信頼できると思います・・・ですが、それならば、残念ながら、なおさら我々ができることはないと思います。」

 真剣な眼差しを向ける冥に失礼のないようにギキョウもまた真剣に向き合い、包み隠さず冥にそう答える。




「・・・ギキョウ様・・・私達にもできることはありますっ!どんな敵が居ようとも、どんなに劣勢だろうとも・・・私達がすべきことはありますっ!・・・そして、私達なら出来ますっ!」

 冥はギキョウの目の前にくるとグッと両拳に力を入れて、真っ直ぐとギキョウの目を見て、力強く思いを言葉に乗せる。



 そんな冥がギキョウと視線をまじ合わせる中、ギキョウの護衛についていた流が二人の会話に割って入る。

「・・・嬢ちゃん・・・それが、どんな犠牲を払おうとも、いいってことか?」

 真剣な冥だからこそ、流が非情な現実を含めて、言葉を突きつける。


 冥は凄む流の言葉にも一切動じることなく、流に視線を移す。

「・・・はいっ・・・でも、大丈夫です。私が居ますからっ!」

「っ?!」

 冥が流の言葉に怯まずに、怯む所か、一歩前に出て、ガッツポーズをしてギキョウと流に迫る。その様子に周囲の人間含めて、驚きを隠せない。


「・・・冥と言ったかね・・・なぜ、そこまで自信満々なんだ?相手は妖怪と何千とも言える徒党組んだ悪霊達なんだろう?」

 ギキョウの近くに居た救霊会の重鎮と思われる一人の初老の男性が余りにも自信満々の冥にそう聞かずにはいられなかった。


「確かに妖怪は私達には手に負えないと思います・・・でも、妖怪も大丈夫ですっ・・・善朗君が絶対に負けませんっ・・・そして、どんなに悪霊がいようとも・・・私は負けませんっ!」

 冥の輝かしい自信満々の笑みが地下のはずのその救霊会の会議室に太陽をもたらす。


 その自信がどこからくるのか、どこに自分達を導くのか、それを正確に知る者はこの場には一人も居ない。だが、その導く先に、光が当たっていることを感じる事が出来た者は少なくはなかった。年端もいかない女子高校生のその笑顔が天に輝く光よりも神々しく見えた。


「・・・・・・。」

 冥の言葉にその場にいた全員が高揚する中、流だけが鋭い眼光で冥を見定めている。そんな流をいつも傍で見ていた相棒のネヤは、その流の表情になぜか不安を膨らませていた。














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