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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
第5幕 霊界武術大会編
107/171

なんやかんやお祭りは、ヤキソバ、わたあめ、ベビーカステラ!・・・そんな私は有馬タイトルホルダー単勝!!

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 霊界のネオ大江戸の在る大通り、大きな看板の前で道行く人々がその看板の前に集まり、なにやら思い思いに話していた。

「お前、どこよ?」

「やっぱり、辰区じゃねぇか?」

「おいおい、お前もかよ・・・。」

 二人の男が通りに張り出されたその大きな看板を見ながらそう話している。


 その看板にはデカデカと『武闘大会開催!』の文字が躍っていた。

 霊界では年に一回、ネオ大江戸12区全体参加による腕試しと称したお祭りが開催される。このお祭りは賭博としても非常に人気が高く、トーナメント方式で勝ち抜いていく1位から3位までの順位を予想したりと、大盛り上がりの催しモノとなっていた。この二人の男性の周りにも、大勢の人が、張り出された看板を見ながら連れと何処が優勝か、どこに賭けるかをしきりに相談していた。


「しかし、今回はいつもと違って、賭けは楽しめそうもねぇな・・・。」

 腕組みをした男性が、看板に張り出されたトーナメント表と見ながら渋い顔をする。


「賭けは面白くはねぇが、なんでも噂の少年は相当強いらしいじゃねぇか・・・俺はそっちの方が楽しみだぜ。」

 腕組みをした男性の隣で、アゴを触りながらニヤニヤしてる男がそう話す。


「もう観覧チケットは完売って言うじゃない・・・裏では高値で取引されてるらしいし・・・今年は皆で家でゆっくり見るしかないわね。」

 別の所で、着物を着た女性が頬杖をつきながら残念そうにしている。


「あら、奥さん・・・今年はなんでも別会場で大スクリーンもあるらしいですよ。そっちの方はまだチケットが余ってるって聞きましたわ。」

 着物を着た女性の隣で、エプロンをつけた女性が着物女性に顔を近づけながらそう話す。


「ええっ?!・・・それなら、お弁当作って、そちらに行ってみようかしら?」

 着物を着た女性は知人から聞いた情報に目を丸々とさせて、嬉しそうに答える。




 そんな武闘大会の看板を見る雑踏の外側で、一人の学生服を着た青年がイライラしている。

「・・・おもんないのぉ~~・・・。」

 どこか聞き覚えのある関西弁。もちろん、その学生服の青年は賢太だ。賢太は腕組みをして、しかめっ面でそう呟く。




「何が不満なのだ?・・・賢太は大会に出るのだろう?メンバーに選ばれて、喜んでいたではないか・・・。」

 賢太の隣で、太郎が賢太の顔を下から覗きながらそう尋ねた。


「大会に出れるのはうれしいねん・・・でも、よう考えたら同じ区やから善朗と決着つけれへんやないか・・・おもんないわぁ・・・。」

 益々不機嫌な顔をしながら賢太が怒りを溜め込んでいる。



 そして、賢太達の更に隣で雑踏をジッと見て、不機嫌そうに腕組みをしてる男もいた。こちらは黒いライダースーツに身を包んだ大の大人である。

「・・・つまんねぇな・・・ホントつまんねぇ・・・。」

 武城が壁にもたれて、呆然と雑踏を眺めながら毒を吐いている。



「まぁまぁ、見事に逆サイドに配置されたものだな・・・。」

 武城の隣で、友人のノムラが腰に手を当てながら存外子供の友達と話を合わせる。


「あれだけ頼んだんだぞっ!・・・お菓子も用意していったのにっ。」

 武城が地団駄を踏んで悔しがっている。


「・・・曹兵衛殿も再三どうにもならんと困っていただろう・・・まったく、つき合わされる俺の身にもなって欲しいな。」

 ノムラは武城が足掻いていた様を思い出しながら少し口角を上げる。


 どうやら、武城は武闘大会のトーナメントで戦いたい相手と早めに戦えるように実行委員長である曹兵衛に再三工作をしようとしていたようだった。しかし、見事に断られて、結果的に思惑とは正反対。お目当ての辰区の真逆サイドとなり、戦いたくとも決勝までは不可能になっていた。


 そんな賢太と武城の二人が毒を吐き終えて、互いの存在を認識する。

「ん?」

「ん?」

 ここで、二人の男がシンパシーにより惹かれあい。お互いの顔を見合した。賢太と武城はお互いの目を見合って、目を丸々している。


 先に口を開いたのは賢太だった。

「なんやおっさんっ・・・おっさんも善朗と喧嘩したいんか?」

 賢太は武城に歩み寄り、そう尋ねる。


「ん?・・・君は、確か雅嶺がりょう賢太君だったかな?・・・君もおもしろそうな子だよね。」

 近付いてきた賢太に自分からも近付いてニヤニヤしながら武城が賢太を覗き込む。


「ほほぉ~~・・・俺も有名になったもんやなっ・・・ただ、子ども扱いしとるんやったら、おっさんのタマァ容赦なく取ったるからなっ。」

 賢太も武城とのガンの付け合いに一歩も引かずに額をいよいよつけて、軽く押し合う。


「おいおい、賢太っ・・・何をしておる。大会前だぞっ。大会期間中は準備期間も入れて、喧嘩はご法度だと言われただろうっ。」

 太郎は武城に喧嘩を売っている賢太を止める様に二人の間に身体を入れる。


「こらっ、武城っ・・・お前もいい加減にしないかっ、大人げないっ!」

 ノムラも太郎と同じように二人の喧嘩を止めようと武城を後ろからガッシリと掴み、距離を離そうと試みる。そんな時だった。



「ざわざわざわ・・・」

「どよどよどよ・・・」



 賢太と武城がいがみ合っていると、突然雑踏が静かにどよめき出した。その様子に賢太と武城が気付いて、通りに目を移す。

「っ?!」

 今までいがみ合っていた二人は、雑踏のどよめきの原因を視界に捕らえるとあまりの驚きに動きを止めて、それを見入った。


 二人がちょうど通りに目を移した時、雑踏がどよめいた原因である善朗が目に入ったのだ。

「・・・・・・。」

 善朗は周囲の変化など気にも留めない様に、ただただ静かに歩いていた。


 腰にはちゃんと大前を下げ、茶菓子の入った茶袋を両手で抱え、黙々と歩いている。周囲の人間は流石に有名人となった善朗の顔を知っており、初めて見る者を含めて、ただ善朗という存在に興味と少しの恐怖心を持って、遠巻きにその様子をただ眺めていた。


 人々が遠巻きに自分の事を見ていることを善朗は全く気にも留めず、むしろ、全く見ていないようだった。善朗はただただ黙々と歩くだけで、何処に目を向けるでもなく、トボトボと歩いて通りから姿を消して行く。周りの人間も善朗から出る異様な雰囲気に声すらも掛けられず、見送るしかなかった。






 善朗が消えた先ほどの通りで、毒気が抜けた賢太が壁に身体を預けた状態で口を開く。

「・・・残念やったの、おっさん・・・。」

 賢太はそう言いながら空を見上げる。


「善朗君はずっとああなのかい?」

 先ほどまで、ぎらついていた武城が別人のように、しゃがみ込みながらイジイジと地面に目をやり、賢太にそう尋ねる。


「・・・もう悪霊連合の件から何日もたっとるが、相変わらずや・・・大前もあれから、姿見せとらん・・・。」

 賢太もそう言いながら武城と合わせる様に座り込み、地面に視線を落とす。


「まさか、一番の功労者が一番ダメージを受けているとは・・・な。」

 ノムラが善朗が消えた通りを見ながら、そう独り言のように話す。


「・・・楽しみにしてたのにな・・・公然と全力で戦えるチャンスだったんだけどな・・・。」

 武城は力なく立ち上がり、ポケットに手を突っ込むと、身体を小さく丸め込みながら歩き出す。


「・・・まぁ、今年は諦めるんが賢明やなっ・・・なんなら、俺が相手になったるでっ。」

 賢太もスッと立ち上がり、武城の背中に声を掛ける。


「・・・・・・残念だけど、今年しかないよ・・・善朗君の場合は特にね・・・。」

 武城はおもむろに足を止めて、横目で賢太を見てそう話し、またトボトボと歩き出した。


「・・・君も付喪神つくもがみ付なら遅かれ早かれ分かるだろう・・・それでは、私も失礼するよ。」

 ノムラが賢太の隣で武城の背中を見送っているとそう賢太に答えた後、足早に武城の背を追った。




「・・・・・・どういうことや?」

 ノムラの背中を見送る賢太が、完全に困惑して言葉を口から思わず零す。




「・・・・・・。」

 太郎は何かを知っているようだったが、口を開く事はなく。善朗と武城達が消えた方向を見ながら黙って、お座りをしてジッと通りを眺めていた。








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