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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
幕間4
104/171

お馬さんの遊園地で始まる唐突な我慢大会・・・勝利の美酒とばかりに私達は我慢する・・・気がつくと私は自宅まで我慢していた

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「チーーーーートだああああああああああああああああああっ!!」

 暗い森の中に蛇虻だぼうの抗議の怒号が何よりも響き渡っていく。


「・・・・・・。」

 あまりの蛇虻の変貌振りと大声に開いた口が塞がらない賢太。


 鼻息荒々しく蛇虻がギラギラの目で賢太を睨み付けている。

「・・・ずるいぞ、賢太っ!男と男の勝負に助太刀とは卑怯だっ!」

 蛇虻は大きく地団駄を踏んで、賢太に徹底抗議する。


「・・・ほな言われたかて・・・のぅ、美々子・・・えっ?」

 蛇虻の徹底抗議に呆れかえる賢太は傍にいたはずの美々子に話を振るが、さきほどまで傍に居た美々子はもうすでにその場から離れて、後方の安全な所でニコニコしていた。


(あのガキャ~~~っ・・・ホンマ不思議ちゃんも大概にせぇ~~よ・・・。)

 蛇虻に続き、美々子にも振り回される賢太。思わず、心の中で愚痴をこぼす。



「有り得ない・・・。」

「ん?」

 蛇虻は今度は身体をワナワナと震わせながら塞ぎ込み両拳を力一杯握りこむ。そんな蛇虻の変化に賢太は見入る。



「・・・有り得ないだろ・・・俺だけなんだ・・・俺だけが転生して・・・。」

「いや、俺らは死んだだけで転生はしとらんよ・・・。」


「俺だけが女神様からチートスキルをもらったんだ・・・。」

「誰やねん、女神って俺はおうたこともあらへんぞ。」


「この世界をすべるのは俺なんだ・・・俺だけが力を手に入れるはずなんだ・・・。」

「普通、世界救うんちゃうか?」


「もう少しで、俺が一番になれる・・・俺こそが勇者になるはずなんだ・・・。」

「勇者って・・・現実世界で思っとるやつ・・・そこそこおるか・・・俺の同級にも何人かおったわ・・・。」




「やかましいぞっ!!!!」

「っ?!」

 蛇虻はブツブツ独り言を言っていたが、その都度都度ツッコまずにはいられない賢太の言動に怒りが爆発する。その怒りに流石に賢太もビクッと驚いた。




「俺はなぁ~~・・・これまで、このチートスキルで頑張って頑張って、何人も殺してきたんだ・・・勇者の道には必要な犠牲者達・・・そんな屍を越えて、俺はこの世界を統べなければならないんだっ!そして、神となり、この世の欲望全てを叶えるっ!」

 蛇虻はバネを抑えに抑えて、最後に爆発させるように口調も加速させて、最後に両腕を高々と上げて、思いの丈を叫ぶ。


(おうおうっ、ぶっとんどるのぉ~~~・・・。)

 賢太はそんな蛇虻を生暖かい目で優しく見詰める。


「イライラするガキ共だ・・・これから、遊園地でイチャイチャしているカップル共を犯して、なぶって、男の目の前でグチャグチャにしてやろうと思っていたのに・・・。」

 蛇虻はそう言いながらまたウツムキ、ブツブツとしゃべり出す。


「んっ?」

 賢太は蛇虻の様子に自然と臨戦態勢を取る。



「ぶち殺してやるぞっ、ガキどもがああああああああああああああっ!」

 蛇虻は賢太をギンッとにらみつけて、怒号を浴びせる。すると、蛇虻から重くネットリとした霊幕が爆発的に広がっていくのを賢太は感じとった。


 その霊幕は悪霊らしく異質で異様なもので、人々がローラーでぺちゃんこに潰された姿が折り重なって出来た幕だった。もう人と分かるのは、瞳だったであろう、その潰れた二つの穴とその下にある鼻だったであろう小さな二つの穴。そして、誰もが、もがき苦しんだ慟哭を表すように大きく伸びた口であろう穴。何十とは言えない、無数の潰された人々の悶絶の姿が幕を形成して、賢太達を飲み込んでいく。そんな中、


「ええやんかっ、おっさん・・・これでこそ、ぶちのめしがいがあるっちゅ~もんやっ。」

 賢太は不敵に笑う。不敵に笑う中で、両拳を強く強く握りこんでいく。


「クソガキが~~・・・お前もすぐこいつらの仲間入りだ・・・。」

 鼻息を荒々しく鳴らす蛇虻がジリジリと賢太との距離を詰めていく。


「美々子からの手助けも、ち~とばかし気になっとったが・・・正直そんなこと、どうでもよくなったわ・・・おっさん、きぃつけいよ・・・俺も全力でいくでぇ~~・・・。」

 ジリジリと距離を詰めてくる蛇虻に、賢太も負けじとジリジリと距離を詰めていく。そして、



 〔バキーーーーーンッ!〕

 二人の距離がそれぞれ射程距離に入るや否や、お互いの拳が交差する。



 リーチが長かったはずの蛇虻の顔面に賢太の右ストレートが食い込む。

「ぐぅ~~~~~~・・・。」

 蛇虻は先ほどとは違い、痛いのを我慢して、歯を食いしばっている。


 〔ドゴオオオオオオオオオンッ!〕

 寸でのところで賢太に交された蛇虻の右手が、賢太の頭を即座に掴んで、そのまま賢太の頭を地面に叩きつけた。


「痛いぞオオオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!」

 蛇虻は賢太の頭を地面に叩きつけながら、恨みを大声に込める。


 〔バカアアアアアアアアンッ!〕

「うるさいわっ、ダボガアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 地面に叩きつけられた賢太だったが、スルリと蛇虻の手の中から抜け出して、上体を即座に起こし、距離が接近していた蛇虻の右頬に大振りの右フックを叩き込む。


 〔ボゴオオオオオオオオオンッ!〕

「痛いんだよっ!!」

 蛇虻は賢太の右フックも歯を食いしばりながら受け止めて、お返しとばかりに大振りの右フックを今度は賢太の顔面に叩き込む。



(賢太っ、何をしているっ?!あんな大振りの攻撃、サバくぐらいできるだろっ!)

 賢太の頭の中で太郎の抗議が響く。



「へへへへっ・・・。」

 太郎の頭の中の声に賢太はニヤリと笑う。


(・・・おもろないやろ、そんなん・・・おっさんが真っ向勝負しとんのやぞ・・・こちとら男として、それをねじ伏せな、寝覚めが悪い・・・。)


 〔ゴオオオオオオオオオオオオンッ!〕

「ねんっ!!」

 賢太は今度は態勢を低くしてから、伸び上がるように蛇虻のがら空きの右わき腹に大振りの左ボディを打ち込む。


「ガハッ?!」

 丈夫な蛇虻も流石にこの一撃に一歩後退する。


「どないしたっ、おっさん?・・・自慢の頑丈さも、俺の勝ちかっ?」

 賢太は悠然と蛇虻を見下ろして、右口角を少し上げる。


「ぐぅうううううううううううううう・・・。」

 蛇虻は右のわき腹を抑えながら、血の涙を流さんばかりに目頭を絞り込んで、賢太をにらみつける。


(賢太っ!)

(だまっとれやっ!・・・このおっさんはなんだかんだ理由つけとっても、所詮は他の悪霊と変わらん・・・弱い者いじめ楽しんどるカス共じゃっ・・・同じ土俵でブチのめさな・・・俺の気が済まんっ。)

 無謀と思える賢太の戦い方に太郎が尚も抗議しようとすると、賢太がそれを黙らせるように自分の考えを頭の中の太郎にぶつける。賢太の右拳はさらに強く握りこまれて、ワナワナと震えていた。







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