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墓地々々でんな  作者: 葛屋伍美
幕間4
102/171

ネズミや犬やアヒルが二足歩行でかっ歩する摩訶不思議ランドに騙されてはいけないと・・・つぶらな瞳で見てくる馬と見詰めあって私はそう再確認する。

お手数でなければ、創作の励みになりますので

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「ケンちゃん・・・遊園地行きたいっ。」

 寝転がって、TVを見ていた賢太に対して、美々子が突然グズり出す。


(・・・コノアマ、ホンマ行き成り何ゆうとんねんっ・・・。)

 賢太はいつもの美々子の突拍子もない言動に尻を掻きながら横目で美々子に呆れている。


「遊園地ですか・・・興味深いですな。」

 美々子の隣で、器用に前足でお茶をすすりながら、太郎が尻尾を振っている。



「太郎ちゃんも行きたいってっ!」

 太郎の賛同に気分を良くした美々子が笑顔で賢太に迫る。



「美々子ォ~~ッ・・・今は家でジッとしとかないかんって、空柾あきまさに言われとったやろうが・・・。救霊会のおっちゃんどもも、今は調査しとるさかい・・・おとなしゅうしとけや・・・良い子にしとったら、今度連れてったるわっ。」

「今が良いのっ!・・・今じゃないと嫌っ!」

 賢太が体勢を変えて、寝転がりながら美々子にコンコンと説明するが、食い気味に話に割って入ってくる美々子。


(こいつ、ホンマ話しきかんのぉ~~・・・ここまでグズるとゆうことまったく聞かんくなるからな~~・・・。)

 美々子が食い気味に迫ってくると賢太は引き気味にさらにあきれ返る。




「あらあら、美々子ちゃん・・・遊園地行きたいの?おばあちゃんが連れてってあげましょうか?」

 賢太と美々子が揉めていると、台所で用事を済ませてきたアヤメが美々子にニコニコしながらそう話す。




「アヤメッ・・・孫をそんな甘やかしたら、あかんやろうがっ。」

 相変わらず寝転がりながら、美々子に甘いアヤメを注意する賢太。


「あらあら、おばあちゃんっていうのは孫には甘いものよ。」

 賢太にもニコニコしながら、そう主張するアヤメ。


「・・・空柾からもジッとしとけって、いわれとるやろ?・・・ええんか?」

 賢太はアヤメの主張に上体を起こして、アグラをかきながら反論する。


「大丈夫よっ・・・あなたが居ればっ。」

 完全に他力本願なアヤメ。



(ホンマ、この血筋は・・・めんどくさいのぉ~~・・・。)

 アヤメの言葉にガックリと頭をうな垂れて賢太が呆れる。



「賢太よ、オヌシの話は正しいが、家の中でジッとしているだけでは息が詰まる。気分転換としても、いいのではないか?」

「ポチッ、尻尾バタバタやかましぃーぞっ・・・。」

 太郎がアヤメの援護に出ると、賢太は真面目な話の割りに、後ろで尻尾をバタバタさせていることを太郎にツッコむ。


「拙僧はポチではないッ!犬が散歩に行きたいからといって、何が悪いっ!」

「お前のぉ~っ・・・その格好で何かっこつけとんねんっ!」

 太郎は息巻くように主張するが、青天になり、美々子にお腹を撫でられながら尻尾をバタバタ振っている。賢太はもちろん、それにも的確に間を取り、ツッコむ。


「それじゃぁ、行きましょうか?」

「わーいっ、わーいっ!」

「はっやっ!?」

 アヤメはそうこうしているとあっという間に出かける準備をして姿を現す。隣で、美々子がはしゃいでいる。その余りの速さに賢太は目が飛び出た(リアルに)。






 電車で揺られる事、数時間。

 賢太達は3人と一匹で有名な遊園地に来ていた。


「なんやっ・・・近所の遊園地やなかったんかっ?えらい遠いやないか・・・。」

 移動で、すでにぐったりとしている賢太が愚痴を零す。


「ふふふっ、美々子ちゃんがどうしてもここがいいっていうから・・・ねっ?」

「うんっ!」

 アヤメが美々子と手をつなぎながら、ニコニコと美々子に話す。

 美々子はアヤメの笑顔に満面の笑みで返す。


「それじゃぁ、中に入りましょうか?」

「わーいっ!」

 アヤメは美々子を連れて、久しぶりの孫との外出を全力で楽しむ気満々だった。美々子も全力で遊園地を楽しもうと入り口の方へ走り出す。


「こらっ、美々子っ!離れるんやないっ!迷子になっても知らんぞっ!」

 一人で行動しようとする美々子を怒鳴る賢太。


「大丈夫だっ・・・拙僧の鼻があるっ!」

「・・・さいですか・・・。」

 賢太の注意を角度をつけて叩き落そうとする太郎に呆れる賢太。






「大人一枚と子供一枚お願いします。」

「はいっ、フリーパスですね・・・ありがとうございますっ。」

 出入り口の案内所でアヤメが遊園地のチケットを買う。

 笑顔でアヤメに対応する係員。もちろん、賢太と太郎は見えていないので、入場料など必要ない。周りの同じような見えない人々も。



「・・・えらい人多いな・・・同類も同じぐらいおるやんけ・・・。」

 賢太は一般人と幽霊の多さに驚きを隠せずに言葉を零す。



「少しばかり、悪霊もおるが・・・弱すぎて話しにならんな・・・放って置いても問題にもならん・・・。」

 ここに来て、初めてまともな仕事をする太郎。


「お前の鼻、ホンマ便利やのう・・・。」

 太郎の能力というか、犬との会話に素直に感動する賢太。






「わああああああああああああっ!」

「きゃあああああああああああっ!」

 どれぐらいの時間を遊園地で過ごしたのだろう。

 遊園地を楽しむ雑踏を背に日がオレンジ色を帯びてきているのを実感してくる頃、


「あ~~~・・・楽しかったっ!」

「おうおうっ、それはよござんしたねぇ・・・。」

 今も元気一杯に飛び跳ねる美々子と幽霊にもかかわらずベンチに座り、ぐったりする賢太。


 そうこうしていると、美々子がふと立ち止まる。

「・・・・・・。」

 今まで元気一杯に騒いでいた美々子は一点を見つめて黙り込む。


「・・・・・・どないしたんや?」

 突然黙り込む美々子に目を丸くする賢太。


 賢太の目に突然走り出す美々子の姿が映る。

「おい、こらっ!?」

 賢太は余りにも突然の美々子の暴走に思わず大声を上げる。


「美々子殿っ!?」

「美々子ちゃんっ?!」

 美々子に飲み物を買ってきていた太郎とアヤメが走り出す美々子を目撃して、驚く。

 太郎は即座に美々子の後を追い走り出した。


「アヤメっ!あんたはジッとそこで待っといてくれっ。すぐに連れて帰るっ!」

 賢太も太郎の後から美々子を追う。途中ですれ違ったアヤメに指示をして、全力で追いかける。


「賢太君っ、お願いねっ!」

 賢太の背後からアヤメの叫び声が響く。



(なんちゅう速さや・・・あいつ、ホンマに小学生かっ?!)

 美々子を追いかける賢太は、異常な美々子の身体能力に度肝を抜かれる。



 美々子の暴走に追いかけた太郎が徐々に距離は詰めているものの、未だに美々子に追いついていない。


「いかんっ?!」

 太郎が突然、大きな声を出す。


「おいっ!お前何処行くねんっ?!」

 太郎が更に速度を上げて、いよいよ美々子に迫ろうと見えたが、太郎が美々子を取りすぎて、前方へと更に走っていく姿に賢太が太郎に対して、怒鳴り声を上げる。


 賢太の怒鳴り声が遊園地の人ごみから離れて、遊園地を囲む森の方へと響き渡る。

 その森は日が傾くにつれて、深い闇が支配しようとしていた。







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