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「」は日本語

【】は英語でお願いします。


大学が終わり、いよいよ会食の時間が近づいてきた。

電車で近くの駅まで行った後、タクシーに乗ってホテルまで向かう。


タクシーから降りると、今までTVでしか見たことがない荘厳な入り口を目にして足が止まる。

こんなホテルを選ぶぐらいだ、この服やネックレスなども含めて考えるとお金持ちなのだろう、そんな人たちとうまくやっていけるのか今更ながら怖くなったのだ。


だが、そんな思いを振り払い、勇気を持って足を踏み入れた。




母とは1階のラウンジで待ち合わせだったが、軽く見回していないことを確認する。

約束の時間よりは少し早いが、話したいことがあるから少し早く来て欲しいとお願いしたのは母だった。


携帯を確認すると「ごめんなさい!渋滞につかまったので少し遅れます。」というメールが入っていた。


ホテルのロビーにあるソファーで座って待っていてもいいのかと悩んでいると、ホテルマンがゆうなの前にやってきた。

ドレスコードはクリアしているはずだが、こうった場所に慣れていないゆうなは思わず挙動不審な動きをしてしまう。


「いらっしゃいませ。笹森 ゆうな様ですね。

お話を伺っております。こちらへどうぞ。」


そうして、ゆうなを少し奥まった専用と思われるエレベーター前まで案内した。


「31階フロアを全て貸し切ってご用意しております。

階に着けばまた別の担当が案内いたします。

それでは、今日という良き日をお楽しみくださいませ。」


「へっ、あ はい。ありがとうございます。」


促されるままエレベーターに入り、ホテルマンの礼にゆうなも思わず礼を返してしまう。

そのままエレベーターのドアが閉まり、ゆっくりと上がり始めた。


「あれ?これっていいのかな・・・。いや、でも私の名前知ってたし。

でも、お母さんいないのにいきなり初対面済ますのもどうなのかな。

・・・お腹痛くなってきた。」


一人だけのエレベーター内で思わず本音が漏れたが、今更戻れるはずがない。


エレベーター内にあるボタンは何故か1階と31階しかなく、ノンストップでエレベーターは31階まで上り続けた。


チーンと軽やかな音を立ててエレベーターはそのドアを開けた。


そこには、ずっとそこで待っていたのかのような隙のない立ち姿で立っている外国人の男がいた。

先ほどのホテルマンとは違い、サングラスをかけてスーツを着ている。

ホテルの人には見えなかったが、この人が案内の人なのだろうかと戸惑っていると、流暢な英語で男がゆうなに話しかけてきた。


【ユウナ=ササモリ様ですね。お待ちしておりました。部屋までご案内します。】


母親が英語の通訳をしているため、それなりにゆうなは英語が出来、今のセリフを聞き取れた。

ここまでくれば仕方がない。腹をくくって先に相手の家族に会う決意をゆうなは固めた。



【はい、私はユウナ=ササモリです。よろしくお願いします。】


そういって頭をさげると、機械のようだと思われたその男が少しだけ唇に笑みを浮かべた。



【私に礼は不要ですよ。リトルプリンセス。 】


小声だったためかよく聞き取ることができず、【あの、もう一度】と聞き返す前に男はすでに前を歩き出してしまった。

そのため、そのあとをゆうなは大人しくついていくことにした。



長い廊下を歩いた先で、男の足が止まる。

重厚なホテルのドアを軽くノックして、ゆうなが着いたことを知らせた。


【では、こちらへどうぞ、ユウナ様。】


案内をしてくれた男性が重そうなドアを軽々と押し開き、ゆうなは中へ足を踏み入れた。



そして、ゆうなは何かを目にする前に柔らかい弾力のあるモノを顔に押し付けられ、力一杯抱きしめられた。


「ふはぁ!?」


何も見えないが耳元では「ユウナ」「ユウナ」「会いたかったわ」と嬉しそうな女性の声が聞こえる。

覚えのあるこの感触はどうやら、とても豊満な女性の胸を顔に押し付けられていたようだった。


ぎゅーと遠慮なく抱き潰され、うまく声が出ず息をしにくかったゆうなは抱きしめてくる腕に思わずタップを2回して降参の合図を送った。


「こらこら、そのままだとユウナが窒息してしまうよ。」


横からとても良い男性の声が聞こえた。


その声に反応して、「それは大変ね」と言いながら、ゆうなに胸を押し付け・・・もとい、熱烈な抱擁をしていた女性がゆうなを解放した。


ふらふらになりながら、ゆうなが目にしたのは見たこともないような金髪・碧眼の絶世の美女だった。


目が合うと、にっこり微笑まれ今度は加減されながらも再び抱きつかれた。


「会いたかったわ!!私の可愛い娘!!」


呆然としていると、頬や額にキスの雨を降らされ、あわや唇までキスされそうになり、それを阻止することでようやくゆうなは正気に戻った。


「あら、残念。」


美女が妖艶に人差し指を唇に当て、その赤い唇を舐めた。


「ナーヤ、君のその過激で熱烈なところは愛すべき長所だと思っているが、ユウナが驚いている。

まずは自己紹介だろう。」


バリトンの声が部屋によく響いた。

美女の横にはいつの間にかハリウッド映画に出てそうな背の高い渋い男性がいた。

黒髪に珍しい青い目、彫りの深い顔にいくつかの小さいシワが見えたが、それも彼を魅力的に見せていた。


「初めまして、だね。私はケリーア。

君の父親になりたいと思っている男だ。歳は48才。

どうか、ケリーでもダディでもパパでも好きなように呼んでくれ。

そして、君を窒息させかけた彼女だがー」


「私はナーヤよ。歳は秘密。

私のことはナーヤもしくはナーヤお母様と呼んでちょうだい。

ず〜っと娘が欲しかったの!仲良くしましょうね!」


そういって、二人は自己紹介をしてくれたのだが、ゆうなは全くもって理解できなかった。

明らかに夫婦らしき二人に娘と呼ばれるのはどうにもおかしい。


「・・・あの、私、部屋を間違えました。

多分、私は貴方がたのおっしゃるユウナさんとは別人です。」


そうだ、これは誰かと私を間違っている。

声に出すことで徐々にそれが確認に変わってくる。

多分、今日偶然別に同姓同名のササモリ ユウナという人がこの人たちと会うことになっているのだ。



「まぁ、そんなことはないわ。

だって、その服も下着も私が選んでサヤカに持たせたものだもの。」


にっこり、間違いないはずだと美女が笑う。


「そのネックレスも私が直々に選んで渡したものだ。

それにこんな嬉しい写真も送られてきたからな、間違えるはずがない。」


そういって男性のスマートフォンから見せられたのは、先日この服をもらった時に母親としたファッションショーの写真で、間違うことなくゆうなだった。


「・・・じゃあ、これはドッキリなんですか?」


泣きそうな声でゆうなはまわりを見渡した。


部屋の中には、先ほどと同じスーツをきている男たちが数人いるだけで、どこにもテレビカメラや「ドッキリです」という看板を持った人はいなかった。


「あらドッキリって何かしら?ドキドキの一種?

ごめんなさい。日本語はマスターしたはずなのだけど、まだまだ知らない言葉がたくさんあるわ。」


困ったように美女が首を傾げたのを見て、これがドッキリでないとゆうなは悟った。



「とりあえず、座ろうか。

サヤカも遅れると連絡があったし、息子も着いていないしな。」


そういって、男性がゆうなの肩を優しく包み、部屋の中央にある豪華な椅子へ座るよう促した。


ほとんど崩れ落ちるようにして、ゆうなは椅子に腰をかけた。















「落ち着いたかな。ユウナ。」


ケリーアが差し出してくれた水をゆうなは一気に飲み干し、なんとか気分を落ち着かせた。



「・・・はい。ありがとうございます。」


美男美女のカップルはニコニコと本当に嬉しそうに、ゆうなの一挙一動を見ている。



「あの、質問を良いですか?」


まだにこの人たちが言っていることが理解できないが、出来ないのであれば聞くしかない。

ゆうなは勇気を出して、聞こうと声をかけた。



「もちろんだ!」

「何でも聞いてちょうだい!」


嬉しそうにして二人が答える。


「あの、では・・・。

私は今日、母親が再婚すると聞いて、その家族に会うためにこのホテルに来ました。」


恐る恐る、今日のこのホテルに来た目的を話す。


「そうだね。」

「貴女に会うのを楽しみにしていたわ!」


間違いないと、二人はうなづく。


「・・・あのお二人は夫婦なんですよね。結婚しているんですよね!

母親は誰と結婚するんですか!?」


思わず大きな声がでてしまったが、二人はお互いの顔を見つめあうと揃って笑い出した。


「サヤカはずるい女だ。大事なことは何も話さなかったのだな。」

「あら、それを世間では良い女というのよ。」


ケリーアは少しだけ困ったように眉を寄せ、ナーヤは微笑んだ。

そんな二人の様子はまごう事なき夫婦の会話だった。


「まずは、どこから話そうか。

私の横にいるナーヤは、君の言う通り確かに私の妻だ。そして、サヤカも妻に迎えたいと思っている。」


「それって、一夫多妻ということですか・・・?」


国によって憲法や価値観が違うのは当然のことだ。

現在の日本では聞かない一夫多妻という言葉をゆうなは冷静に確認した。



「そうだ。日本では一夫一妻制だったね。だが、我がアルタニアも一夫一妻制だ。」


ケリーアが言っていることがわからない。

そんなゆうなの様子を見て、いつの間にか自分の横に立ったナーヤがギュッと抱きしめてくる。

それはゆうなを失いたくないと言っているような優しい抱擁だった。



「アルタニアは国王のみ、一夫多妻制なんだよ。

そして、私はアルタニアの国王をやっている。

正式名はケリーア=シャイ=アルタニアだ。」


「私は第一王妃。正式名はナーヤ=シャイ=アルタニアよ。

そして、サヤカを第三王妃に迎えたいと思っているわ。」


「・・・国王様?第一王妃様?」


ゆうなの口から頭で処理しきれない言葉が漏れた。


「ええ。私たちに娘はいないから貴女はアルタニアの第一王女で、私たちの娘にもなるのよ。」



【王、王妃。王子がご到着されました。】


そんな時、ドアの向こうから先ほどの男性の声が聞こえた。


【あら、やっと着いたのね。

ユウナと同じ学校に通っているのに、ユウナより遅いなんて男として失格よ。】


ナーヤがゆうなを放して、ドアに向って歩いていく。

その歩く姿は何処か品があり、誰かを彷彿とさせた。


【途中で渋滞に巻き込まれたと連絡があっただろう、仕方がないさ。】


ケリーアがすかさず、遅れてきた息子のフォローを入れる。



そしてドアが開いた先から現れたのは、ゆうなの学校で一番有名な何処かの国の 『王子』と呼ばれるその人だった。


出迎えたナーヤに軽い抱擁とキスを頬にかわし、王子は満面の綺麗な笑みでゆうなに近づいてきた。


「初めまして、だね。ユウナ。

リィヤ=シャイ=アルタニアだ。リィヤもしくはリィヤ兄様と呼んでくれると嬉しい。

君のことは遠くからずっと見ていたけど、やっと話すことが出来た。会えて嬉しいよ。これからよろしく。」


そういって、座っているゆうなに熱烈な抱擁をし、その瞬間ゆうなは気を失った。







ここまでお読みいただきありがとうございます。


2016.7.18 少しだけ話を修正しました。

ストーリー展開に変更はないです。

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