都さん
私の名前は藍井 都、女子高生にして風魔忍軍の中忍をしている。
女子高生は世を忍ぶ仮の姿で、夜は忍者として諜報活動を主に行っているの。
まぁ、忍者の仕事が原因で授業中は寝ちゃうんだけどね。
先生はテストさえ点数取れてれば文句も言わないし、勉強してなくてもテストの答案くらいなら盗んでコピー余裕なので、進級は問題無い。
そんな風に思っていた時期が私にもありました。
今日、いつの間にか私の机の中に手紙が入っていた。
手紙には「スキです。」という一文が書かれているだけだ。
これは敵対している忍者(今までそんなの見たこと無いけど)が私の隙だらけな姿を見て呆れて出した警告文なのでは? そう思った私は周囲を確認する。
迂闊だった。学校は安全だと思い込んでいた。
こんな失態、家族に知られたらどんな地獄の修行が待っているだろうか。
考えただけで足が震える。
・・・
翌日
あれから手紙の主からは連絡も接触もない。
だけど油断してはいけない。そう、油断が死を招くのだ。
向うは私の隙を狙っているはずだ。唯一気が休まる学校でこんなに神経を削られるとは思わなかった。
私の警戒むなしく放課後まで何も起こらなかった。
今日は授業中に眠れなかったから頭が重い。父さんに頼んで今日の任務は休ませてもらおう。
その時、私は気を緩めていたかもしれない。
瞬間、私の肩は何者かに強く掴まれた。
「都さん、スキです!」
ようやく来たか。敵忍者め!
でも甘いわね。そんな拘束じゃ、私は捕えられないわよ!
私は敵の腕を掴んでそのまま投げ飛ばす。
思ったより抵抗は少なく、簡単に投げ飛ばされた敵の背後に回り込み、ナイフを首筋に当てた。
「……って、田中くん?」
敵は隣の席の田中君だった。どういう事なの、これ?
私は変装術を見破る訓練もしているので彼が本物の田中くんだと分る。
でもなんで田中くんがこんな事を?
「もしかして、あの机に入っていた手紙も田中くん?」
「えっと、多分そうかな。」
「私ってそんなに隙だらけかしら?」
「どういう意味?」
「そのままの意味よ。」
何か話がかみ合っていない気がする。
一応、私の考えを伝えた方が良いのかしら?
「私が隙だらけだから、忠告文を机に入れたんでしょう? さっきだって隙ですとか言っていたじゃない。」
「そんなアホな。」
「じゃあどんな意味なのよ?」
「あなたの事が好きって意味ですよ。ラブです。ラブ。」
……えっと、ラブ?
ラブって、好きってこと? という事は、田中君は私が好きってこと?
好きって事はラブってことで、ラブってことは―――
「いや、そんな事、いきなり言われても!?」
顔が熱くなっているのが分る。
陰気な私に告白してくれる人なんていなかったし、免疫が無いと言いますか。
いや、田中くんの事は嫌いじゃないけど、私忍者だし。危険な女だし。
うわー、顔見れない。どうしよう。
そうだ、田中くんが忍者かどうかだけでも聞いておかないと。
「ところで田中君は忍者じゃないわよね?」
「いきなり何? 僕が忍者に見えるの?」
「見えないけど―――」
うん、全然見えないわ。彼は忍者ではないみたい。
でも、こんな短時間じゃ正確には分らないから、もう少し話してみようかな。
取りあえず、一緒に帰ってみよう。