1 異世界に召喚される
「なんだ、今回の勇者はやけに弱そうだな」
謁見の間の豪華な椅子に座る小柄な老人が僕をしげしげと眺めながらそう言った。頭の上にちょこんと王冠が乗っているところを見ると、この人が王様なのだろう。
「あのう、ちょっとわけがわからないんですけど」
学生服を着た僕はあたりをきょろきょろと見まわす。学校に行こうとして家を出たとたん、足元の地面に光る魔法陣が現れ、次の瞬間に、僕はこの部屋にいたのだ。
「王様、こやつは一見弱そうに見えますが、必ずや魔王を倒しこの王国に平和をもたらす者です。間違いありません。この宰相コワルスキーが保証しますぞ」
王様の隣に立つ、やたらと背が高くて頭が禿げた男がうやうやしく言った。
王様は疑り深そうに横目で宰相を睨む。
「毎回同じことを言って、こいつでもう5人目だぞ。これまでの4人は魔王城にたどり着く前に死んでしまったではないか」
「いや、今回こそ間違いありません。こやつこそが真の勇者でございます」
「あのう……勇者とか、魔王とかって何の話ですか? 僕、こんなところで油を売っている暇はないんだ。学校に遅刻しちゃうよ」
「ああ、君、君は何という名だね?」
宰相が僕に尋ねる。
「僕はマサル。山本マサルだよ」
「そうか、勇者マサル殿。君はもう学校とやらに行く必要はない。だから、遅刻なんて気にしなくていいのだ」
「だって、遅刻したら校庭に立たされるんだ」
「君は勇者に選ばれたんだよ。光栄なことだぞ。魔王を倒した暁には、巨万の富と名声が君の物になる」
「ええ!」
宰相コワルスキーの説明によると、ここは僕がいた世界とは別の世界であり、僕はこの世界のモンスターたちの王である魔王を倒すために、この世界に召喚されたらしい。
「僕に魔王討伐なんて無理だよ。だって僕は何のとりえもないただの高校生だよ」
「大丈夫、勇者として召喚された君には、特典として特殊能力が発動するのだ。その能力を使って魔王を倒せばいい」
「特殊能力? 超能力とか魔法みたいなもの?」
「まあそんなところだ。では頼んだぞマサル。魔王を倒し、この世界に平和を取り戻せるのは君だけだ!」
「はあ……頑張ります」
王様が頬杖をついて退屈そうにあくびをした。




