表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

■第7話「接触」

 真実は、必ずどこかに痕跡を残す。


 どれだけ巧妙に隠しても。

 どれだけ精密に設計しても。


 完全に消すことはできない。


 だから。


 追う側に必要なのは、特別な力ではない。


 ただ。


 諦めないことだけだ。



 如月玲は、画面に映るログをじっと見つめていた。


 拡散の波。


 アカウント同士の関係性。


 微妙にずれたタイミング。


 それらを、何度も何度もなぞる。


「ここだな」


 小さく呟く。


 一つのポイント。


 わずかな歪み。


 そこから、さらに深く潜る。


 通常の解析では届かない層。


 だが。


「見えてるよ」


 指が止まる。


 画面の一部に、明らかに“人の手”が入っている痕跡。


 完全ではない。


 だが、消しきれていない。


「やっと見つけた」


 口元がわずかに上がる。


「あなたたち」



 同じ頃。


 雨宮澪は、ふと動きを止めた。


「……あれ?」


 画面を見直す。


 いつも通りの拡散。


 いつも通りの流れ。


 だが。


「覗かれてる」


 直感だった。


 誰かが、こちらの動きを追っている。


 しかも、かなり近い。


「へえ」


 楽しそうに笑う。


「来たね」


 キーボードを叩く。


 いくつかのルートを切り替える。


 フェイクを混ぜる。


 ノイズを増やす。


「どこまでついてこれる?」



 レギオン本部。


 如月は、さらに深く解析を進めていた。


「動いた」


 小さく言う。


 さっきまで見えていたルートが、急に変わる。


 痕跡が薄くなる。


 だが。


「逆にわかりやすい」


 完全に消えていない。


 むしろ、意図的に“隠した”痕跡が残っている。


「こっちだね」


 新しいルートを辿る。


 そして。


 ついに。


「……いた」


 画面に、一つの接点が浮かび上がる。


 完全な正体ではない。


 だが。


 確実に。


 “誰か”がいる。



 鷹宮龍斗は、その報告を受けていた。


「位置は?」


「まだ特定までは」


 如月が答える。


「でも、かなり近いです」


「そうか」


 短く頷く。


 ついに、尻尾を掴みかけている。


「氷室」


「はい」


「この動き、どう見る」


「組織的です」


 即答だった。


「単独ではない。複数人で役割分担している」


「規模は?」


「少なくとも三人以上」


 堂島が口を挟む。


「やっと出てきたな」


「まだ“出てきてはいない”」


 氷室が冷静に訂正する。


「見えたのは、あくまで一部です」


 鷹宮は目を閉じ、考える。


 ここで焦れば、逃げられる。


 だが。


 慎重すぎても、機会を失う。


「……追う」


 静かに言う。


「ここが分岐点だ」



 一方。


 神代昴は、静かにモニターを見ていた。


 如月の動き。


 澪の対応。


 全てが、リアルタイムで把握されている。


「接触したか」


 小さく呟く。


 想定より、少し早い。


 だが。


「問題ない」


 むしろ。


「ここからが本番だ」


 画面を切り替える。


 別のルート。


 別の仕込み。


「見せてやる」


 誰にともなく、そう言った。



 黒鉄蓮は、東雲と対面していた。


「進捗はどうだ」


 東雲が問う。


「順調です」


 淡々と答える。


 三人の候補者。


 それぞれが結果を出し始めている。


 表面上は。


「いい傾向だ」


 東雲は頷く。


 だが、その目は笑っていない。


「ただ」


 ゆっくりと続ける。


「少し、騒がしくなってきたな」


 その一言で、蓮は理解する。


 気づいている。


 完全ではないが。


 確実に。


「外部の動き、ですか」


「そうだ」


 東雲は立ち上がる。


「面白い」


 窓の外を見ながら言う。


「どこまで関わってくるか」


 その声には、わずかな興奮が混じっていた。



 白鷺悠真は、静かに状況を整理していた。


「来たね」


 小さく呟く。


 レギオンの接近。


 想定内。


 だが。


「少し早い」


 それも事実。


「どうする?」


 自分に問いかける。


 そして。


「まあ、いいか」


 微笑む。


「それも含めて、物語だから」



 時任紗那は、画面を見つめていた。


 複数のルートが、大きく変動している。


 成功率が揺れる。


 分岐が増える。


「……来た」


 静かに言う。


 ここが。


 最初の分岐点。


「第一の裏返し」


 その言葉を、淡々と入力する。



 接触は、成立した。


 追う側と、仕掛ける側。


 その距離は、確実に縮まっている。


 だが。


 まだ。


 決定的ではない。


 だからこそ。


 この瞬間が。


 最も危険で。


 最も面白い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ