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種馬スキルの悪役貴族に転生した俺、断罪を回避し娘たちと自由に生きることにした。  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売


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第38話 望まぬ来訪者

「んっ……朝か……」


 目を覚ました俺が起き上がろうとするが、体が重くて動かない。

 またいつものアレか。


「おい、起きろぉ。朝だぞ」


 布団を捲り、俺の布団に潜り込んでいる娘たちに、声をかけた。


「ふにゃ、まだ眠いの」


 俺の右腕にしがみ付いているのはシャルだ。

 成長して体も大きくなったので、色々と困るのだが。


「はふぅ……父上は、わらわのものじゃ」


 変な寝言を言っているのはメテオラだ。俺の左手に抱きついている。

 まだ小さいのに、妙に色気があって困るのだが。


「お父さん……すやぁ……」


 控えめに横で寝ているのはエステルだ。

 最近ますます可愛くなって、父親の俺でもドキリとさせられる。やっぱり困るのだが。


「んっ♡ お父様と初夜ですわぁ♡」


 極めつけはリゼットだ。俺の上に乗って胸に顔を埋めている。

 前からヤバいと思っていたが、このところガチに俺と結婚しようとしている気がする。

 最も困っているのだが。


「こら、起きろ! もうすぐ年頃になるんだから、父親と一緒に寝るのは控えないとダメだぞ」


 とりあえず注意してみたものの、分かっているのかいないのか。

 娘たちは、とぼけた感じに起き上がる。


「ふぁ、お腹空いたの」

「何で他の妹も一緒なのじゃ」

「お、おはようございます。お父さん」

「あふ♡ 夫婦が一緒に寝るのは当たり前ですわ」


 やっぱり心配だ。俺の娘がファザコンな気がする。

 何とかしないと。



 ◆ ◇ ◆



 朝食を終え外に出てみると、すでに街は賑わっていた。

 街と表現するのが適切かどうかわからないが、いつの間にか湖畔に街ができてしまったのだ。


「うーん、何か前より栄えているような?」


 知らない内にどんどん店が立ち並び、今では完全に宿場町のようになっている。

 王都の目の前に造ってしまって大丈夫だろうか?

 こんなの国王の耳に入ったらヤバいかもしれない。やっぱり大丈夫じゃないよな。


「レインさーん!」


 王都側の道からサーシャさんが走ってきた。


「どうしました、サーシャさん?」

「はあっ、はあっ、あ、あの、引っ越しの準備が整いました」

「ん?」


 引っ越しって何だろ? もしかして、ここの冒険者ギルドに住み込むのか?


「レインさんの家に引っ越します」

「俺の家だった!」


 どうなってるんだ? 俺とサーシャさんが同居だと? 普通にマズいだろ。


「えっと、年頃の女性が俺みたいな男と同居とかダメですって。危険ですよ」

「うふふっ♡ レインさん、何かするんですか?」

「し、しませんよ」


 サーシャさんと同居とか、そんなのまるで恋人みたいじゃないか。同棲みたいだな。

 って、待て待て。俺は何を想像してるんだ。


「しないなら良いじゃないですかぁ♡」


 サーシャさんが、ニマニマしながら俺の顔を覗き込んできた。


「やっぱりマズいですって。恋人同士じゃあるまいし」

「ヴィクトリアさんとは一緒に住んでるんですよね?」

「た、確かに!」


 しまった。ヴィクトリアの行動が自然すぎて、何の疑問も持たず一緒に住んでいたぞ。


「レインさん、もしかしてヴィクトリアさんのこと、す、好きなんですか?」


 サーシャさんが、不安そうな顔で俺を見つめる。


「ち、違いますよ。あいつは勝手に住んでるというか、成り行きでズルズルしているというか……」

「むぅううっ!」


 サーシャさんの視線が怖い。

 もしかして、俺って疑われてる?

 成り行きというのは、『行きずりの女』って意味じゃなく、『成り行きで一緒にいる』ってだけだぞ。


「何も無いですよ。俺と彼女は冒険者仲間なだけです」

「本当ですか?」

「本当ですよ。一緒に住んでるといっても、娘たちもいますし、部屋も別ですし」


 サーシャさんって、普段は穏やかで優し気なのに、ヴィクトリアのことになるとムキになるような?


「良かったぁ。まだ男女の仲じゃないんですね」


 安堵した表情のサーシャさんが、ホッと息をもらした。


「男女の仲なんて、とんでもない。子供の前で何もしないですよ」

「ですよね」


 サーシャさんは優しく微笑む。

 元の優しい彼女に戻ったようだ。


 同居の件は、なし崩し的に決まってしまったけど。




「そういう訳で、サーシャさんも一緒に住むことになったから」

「何でよぉおおおお!」


 サーシャさんを連れ家に戻った俺に、ヴィクトリアが泣きながら迫ってきた。


「何でって言われてもな。お前も勝手に住んでるじゃないか」

「私は良いのよ! 新妻でしょ!」

「妻じゃねえよ」


 妻にした覚えはないのに、勝手に新妻を名乗るヴィクトリア。困った女だ。


「レインさん! やっぱり!」

「お父様! どういうことですの!?」


 サーシャさんに加え、リゼットまでムキになってしまった。

 こっちがどういうことか聞きたいよ!


「とりあえずサーシャさんは、ヴィクトリアと同じ客間を使ってください。確かベッドは二つあったはずだから」


 狙ったようにベッドが揃っているのが不思議だが、こうして同居メンバーが増えたのだった。



 ◆ ◇ ◆



 更に数日が過ぎ、街がデカくなった今日この頃――

 望まぬ来訪者も増えたようで。


「おい、誰の許可を得て街を造っておるのだ!」


 王都から兵士を引き連れた役人がやってきたのだ。

 辺りに怒声を響かせながら、俺のほうに近づいてくる。


「全ての土地は国王か貴族に属しておるのだ! 勝手に都市を造るのは、明確に領主の権利侵害であるぞ!」


 何となくそんな気がしてたけど、やっぱりこうなったか。確かに王国の土地は領主の持ち物だよな。

 でも…………。


「ちょっと待ってくれよ。これは俺が造ったんじゃなく、勝手に人が集まってきてだな……」


 俺が前に出ると、お偉いさんっぽい役人が血相を変えた。


「き、きき、貴様はレイン・スタッド! 何故ここに!?」

「何故って言われても、王都を追放されたからだが」

「何だと!」


 役人の顔が、赤くなったり青くなったり忙しい。


「貴様ぁ、王国に反逆でもしているのか! 王都の前に都市を造るなど、明確な敵対行為であるぞ! 即刻退去せよ!」

「おいおい、ちょっと待ってくれよ」

「待てぬ!」


 そう言い放った役人は、肩を怒らせながら戻っていった。


「くっ、やっぱりこうなったか。さてどうするか。街ごと移転させられれば良いのだが」


 途方に暮れていると、役人と入れ替わるように、数人のエルフがやってきた。

 スレンダーな体に長い金髪の髪。若い女性が一人と、それを護衛するように戦士風の男が二人。


 若いといっても、エルフは長寿なので見た目どおりじゃないかもだけど。


「おい、そこの人族、我らの問いに答えよ!」


 護衛の男の一人が、俺に声をかけてきた。

 さっきの役人に負けず劣らず、尊大な態度だ。


「何だい」


 それが人にものを尋ねる態度かよと思ったが、初対面で対立を避けるように答えた。


「ここにエステルという名のエルフは居らぬか?」

「エステルだと!」


 娘の名が出て、俺は身構えた。

 俺の娘に何か用なのかと。


「居たとしたらどうなんだ?」

「連れ帰るのだ」

「はあ!? 何でだよ」


 俺の態度を不審に思ったのか、奥に控えていた女性が前に出た。


「早くエステルを差し出しなさい! 私は母親なのよ! 下等な人族が、私たちハイエルフに口答えなんかしてるんじゃないわよ!」


 ヒステリックに叫ぶその女性に、俺の中にある、前世の記憶が呼び覚まされた。義理の母に、理不尽な理由で怒鳴られた記憶だ。


「はぁ? 母親だと? エステルを追い出したんじゃなかったのかよ。何だよ今さら」


 俺の体が怒りで震える。元世界の義母と、目の前の女が重なった。

 子供を虐待する毒親の姿が。


 エステルは母親に『要らない子』だと言われたのだ。

 そんなの許せるはずがないだろ!



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