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神楽研究所3実験室

此処は実験室、尖った刃を二、3回、狙いを定めて打ち込み平球状の頭蓋骨が外され、金属板の上に置かれる脳を取り巻く組織から、丸まった大脳を切り離した所で、ヘラを使って前頭葉を持ち上げ、二つの視神経を小さな鋏で切り分ける。更に嗅覚や聴覚の神経、また頭蓋骨と大脳を結びついて居た繊維を切って行く。最後に、脊髄を切り離すと、大脳は完全に自由になった。博士は丁寧に液体の入った円筒の硝子瓶に移して、安堵のため息を吐いた。今からほんお数時間まえで、貴方の生命、宇宙と同じくらい広大な宇宙を宿して居たのだ。それが今や、この湿ったゼリー状の物質━━、そう、知識、記憶、想像夢統べて詰まって居たのが、その変異転がっている物体と同じように取った理受け取ったり出来る《モノ》なのだ。と感慨に耽る。博士は掌に乗る重みを伝えながら乗っている小瓶を眺め、棚に仕舞った。棚にはぎっしりと隙間を埋めるように同じ大きさの瓶が無数に並んでいた。「あともう少しだ」博士は瓶を手に取り、喜悦な表情で眺め崇敬した。

「お、きの脳の形は………」

「鮮やかな赤毛をきっちり縫い上げたメアリーじゃないか?」博士は整然と並んだ一画の瓶を取り出し、話しかける。

「たしか最初の出会いはしばらく前から赤ん坊がお腹を蹴るので、もうすぐ陣痛がはじまるのではないかと、妊娠の最終段階の指導を受けたいとやって来たのだね私は直ぐに貴方をしんさつしたね。

副部の膨らみ非常に大きく低く、胎児が下がっているのが解る。乳房もはち切れない程膨らんで乳首のは斑点があった。しかし何かが奇怪(おか)しい。聴診器を当てても胎児の心音がハッキリしない。赤ん坊がおかしな方向へ回っているのかあるいは何か問題があるのか否、そんな事ではない。メアリーのヘソがまるでおかしい。妊娠お確かな兆候の一つは、ヘソが反転すなわち「出べそ」ではなく、引っ込んでいた。「引っ込みベソ」だった。博士は軽く口笛を吹いた。想像妊娠のことは医学部で習っていた。妊娠したいと思い詰めるとーー妊娠を極度に恐れているケースも時折本当の妊娠の兆候や症状が全て出てしまう場合がある。腹部は、後ろに反った姿勢と不可解な脂肪の蓄蓄積に助けられて、物凄く膨らむ、乳汁も分泌し、つわりがあって、胎児の動きも感じる。すべてが正常に見えるが一つだけ違う。ーーー赤ん坊が居ないのだ。奇怪

「メアリー」

「赤ん坊はもう直ぐです」

「今日の午後には生まれるでしょう。痛くないようにエーテルを使います陣痛は始まって居ますので大丈夫です。メアリーは大喜びで大人しく麻酔を受けた。陣痛の時に、エーテルを使うのは普通の事でメアリーもそのつもりだった。少し経ってメアリーが目覚めると、神楽博士は彼女の手を取って優しく撫でた。そして落ち着くのを待ってから言った。

「メアリー、御気の毒ですが悪い知らせです」

「赤ん坊は死産でした。できる限りのては尽くしましたが、駄目でした。本当に残念です」

メアリーは泣き崩れてたが、この話を受け入れた。するとたちまち、分娩台の上で、副部の膨らみが、引いていった。メアリーは赤ん坊を失ってうちひしがれいて居た。伊平屋を出て行った。これから親やおっとに話さなければいけないのだそう考えると居た堪れない。だが、彼女が出て行って、10分程で、、メアリーは戻ってきた。しかも前よりも大きな腹部をしたメアリーが飛び込んで来た。

「先生! 私は幸せものです。また来ました! 診て下さい!」

「双子の一人がまだ、お腹の中に残ってたんです!」

「ぉお、この脳の欠損はエリオットじゃないか!」

私は、エリオットの知性や合理性に過度に心を奪われていたことに、そして、さまざまな理由はあったにせよ、かれの感情面にあまり注意を払って居なかった事に気づいた。初めて会った時、エリオットの感情に異常なことは何も無かった。彼は感情的には控えめな人間でそれ自体は少しも異常な事ではない。世の多くの輝かしい人間、社会の規範になるような人間が感情的には控えめだ。彼が感情過多でない事は間違いなかった場違いに泣いたり笑ったり叫んだりしなかったし、悲しげでも楽しげでも無かった。彼は戯けたりはしなかったが、言葉少なにユーモラスな事を云う。しかし、細かく分析してみると、ある重要なことg、見失われていることに気づいた。私はそれに対する基本的な兆候の多くを看過して居た。かれは己の身に降り掛かる事の重大さにそぐわない超然とした態度で語って居た。彼は常に自制的で無感情な傍観者として描写して居た。自分自身が主人公でありながら苦しみと云ったものはどこにも無かった。

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