12 波乱のお茶会。
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本日二回目の更新です。
――ヒノside――
水の曜日。
その日私は余所行きの袴に刀を携え、プリシアの護衛として着いて行った。
無論ツキからの情報もシッカリと聞いている。相手は飛び道具を使う様だ。
侯爵家では男の付き添いはと渋られたが、プリシアの権力、そしてシャルルの従弟であることを告げると公爵家は渋ったのが嘘のように案内しれくれた。
シャルルの名声とは相手が公爵家であっても通用するのだ。
多くの女性達を見た私だが……正直皆が同じ顔に見えて仕方がない。
違いはドレス位だろうか?
確かにこれは酷いと私は気持ち悪さを感じた。
この国に来て思ったことは、シャルルの力に依存しきった貴族達と言うモノだ。
生まれ持った姿を醜いといい、シャルルのスキルで手に入れた理想の姿こそが己だという。
これは、異常以外の何物でもなかった。
もし仮にシャルルが力を使う事を辞めた場合、この国はどうなってしまうのだろうか。
私はそんな事を考えながら周囲に神経を研ぎ澄ませ、どの位置に何人暗殺者が居るのかを貯め顰めていた。
(一人、二人……屋根の上に合計二人か)
あの距離ならば、ツキでも十分すぎる程捕まえることは可能だろう。
捕まえた場合、暗殺者は殺すことなく、自殺することも無いようにツキが処置を行う。
魔法扉のスクロールも余分に貰っている為、何とでもなるだろう。
問題は飛び道具がプリシアにのみ向かうのかどうか。
私は一人の女性にも目をつけていた。それはこの国の第一王女であるガーデニアだった。
護衛対象は二人……そう思った方が良いだろうと顔には出さずプリシアの傍で待機すると、一人のご令嬢が私に話しかけてきた。
「そちらの男性は……シャルル様の従弟と聞きましたが」
「はい、シャルル兄上には幼い頃よくして頂きました」
「本当にシャルル様の従弟なのですね!」
「シャルル様には劣るけれども美しい顔立ち!」
「でも少数民族の住む島国出身なのでしょう?」
「野蛮だと言われる少数民族にも、こんなに礼儀正しい方がいらっしゃるのね!」
この国では少数民族=野蛮で粗忽者というイメージが強いらしい。
事実そうではあるのだが、余りいい気はしない。
すると――。
「皆様、少数民族とて民は民。そのように言うものではありませんわ」
「すみませんガーデニア様」
「我が国は少数民族とも良好な関係を築いているからこそ、他国からの侵略が無いとも言えます。家臣であるあなた方がその様な態度では、何時この国が無くなるかも解かりませんわよ?」
そう声を掛けたのは、意外にもガーデニアだった。
私はガーデニアの芯のある言葉に少しだけ目を見開き、言葉を聞いていた。
「我が国は冒険者や民がいるからこそ成り立っているのです。貴族だけでは到底成り立つものではない事は、皆さんもご存じでしょう」
「「「「……でも」」」」
「ガーデニア様の言う通りですわ。それに、皆さんのお言葉はシャルルとシャルルの従弟を下に見ているという発言にも繋がります」
「そんな!!」
「わたくし達はシャルル様が下賤な者とは思っていませんわ!」
「ですが、事実シャルルと私はまごう事なき従弟。少数民族の血を引く者は皆野蛮ですか?」
「プリシア様の言う通りですわ。わたくしはシャルル様の事も、私様の事も野蛮等とは思いません。皆さんとてそうでしょう?」
「そうですわね……わたくしたちが間違っていましたわ」
「シャルル様はとても素晴らしいスキルを持つお方ですもの!」
「あの神の様なスキルと美しさは、神に与えられし素晴らしきものです!」
「ヒノ様は何かスキルを持っているのですか?」
「申し訳ありません。他者にスキルを伝えることを禁じられておりまして」
「まぁ、そうでしたの」
「残念ですわ」
と、そこまで会話がされたその時、乾いたパンパンと言う音が聞こえ瞬時に刀を抜き、飛んでくる二つの鉛玉を刀で切り落とした。
令嬢たちは悲鳴を上げていたが、机に落ちた半分に切られた鉛玉を見て更に悲鳴を上げる。
「皆さん動かないで!!」
真っ先に声を上げたのはガーデニアだった。
動き出そうとした令嬢たちは震えながらその場にとどまり、私は刀を抜いたまま耳を澄まして上を見ている。
直ぐにドサリと言う音が二つすると、魔法スクロールが発動する光が見えた。
どうやら暗殺者はツキによって連行されたようだ。
しかし――銃発は二つ、一つは間違いなくプリシアに向かった物。
だがもう一つは……ガーデニアに向けられたものだった。
刀を仕舞い、深々と頭を下げると、ガーデニアは笑顔で気遣ってくれた。
悲鳴を聞きつけた護衛達も駆け寄ってきたが、机の上にある半分に切られた鉛玉を見て、暗殺者が居たことに驚き周囲を見渡している。
「今日のお茶会はこれで終了ですわね……。暗殺者が二人いたようですわね」
「はい、一つはプリシア様を、もう一つはガーデニア様を狙った物でした」
「ヒノが居て助かりました。貴方が咄嗟に動かなければ、わたくしたち二人の命は此処で散っていた事でしょう。流石シャルル様の従弟ですわね」
「有難うございます。お二人ともご無事で何よりです」
そう話していると公爵家の当主が慌てて出てくると、公爵令嬢は泣きながら父親にしがみついていた。
「何とお礼を言えば良いか。我が公爵家で暗殺があるなど……何と恐ろしい!」
「暗殺者は暗殺失敗で逃げたようですが、何時またあるやもしれません。充分に気を付けた方が良いじゃろう」
「君! 良かったら家で働かないかね!? 金は好きなだけだそう!」
「申し訳ありませぬ。シャルル兄上からはプリシア様の護衛として雇われております故、ご遠慮させて頂きたく思います」
「シャルル様の!! それは申し訳ない」
「いえ」
「素敵……」
本当に小さく、常人ならば聞こえぬくらいの声の大きさで聞こえた声の主を見ると、頬を赤らめたガーデニアの姿があった。
私はどう反応して良いか分からなかったが、優しく微笑むとガーデニアは目を逸らして顔を赤らめた。
何はともあれ護衛の仕事は出来た。
後はシャルルに報告し、ガーデニアも狙われていた事を話すのみなのだが――何故か茶会終了してからガーデニアもまたブルーローズへと着いてきたのだった。
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ヒノとツキ。
小説によく出てくるのはツキなんですが、ヒノが結構タイプだったりします(*ノωノ)
冷静なお兄さん好きですか!?
大好物です('Д')!!




