聖女、草生やす1
せっせとせっせと、マオは小屋の近くの土を耕していた。
先日拾った子猫のポルとカルも、マオのマネをして前足で懸命に掘っている。といっても、最初はお手伝いのつもりでも、掘っているうちに楽しくなって深く深く穴を掘り始めるから、定期的にマオに首根っこを掴まれている。
「ポルとカルの草、植えるんだからね。ちゃんとやる!」
マオはポルとカルを地面に下ろすと、手で土を掘ってみせて「このくらい掘る。やめる、次いく」と教えていた。
子猫たちといえば、マオがそうして怒るのも教えるのも遊んでくれているとしか思っていないから、ミォミォ鳴いて楽しそうにしている。
拾ってきたばかりのときはモチモチしてよちよちだったのに、ほんの一週間ほどでぴょんぴょん飛び回る元気な足腰を手に入れてしまった。
マオは自分の育て方がいいからだと信じているが、リンクスはやけに成長が早いと首を傾げていた。
子猫の育成に熱心なマオは、子猫たちの食べるものにもかなり気を使っている。
小魚を釣ってきてそれで出汁を取ったスープを作ったり、鳥肉を柔らかく蒸して細く小さく割いたりしたものを食べさせている。
それで、肉や魚ばかりでなく、サラダ的なものも食べさせなければと思い至ったようで、子猫たちのための植物を育てる用意を始めていた。
「マオさん、ちょうどいいところに! 例のものを手に入れたんだ」
マオと子猫たちがせっせと畑を作っていると、レブラがやってきた。その手には、何か袋が握られている。
「ありがと!」
「猫草なるものを育てている人はいなかったから、雑草の種を集めている人から譲ってもらった。それを育てて、お目当ての草を増やしていくしかないだろうな」
「そっか。猫草、ないか」
マオはレブラから袋を受け取ると、少ししょんぼりした。
子猫の食事に気を使っているマオは、猫が好んで食べるとされる草を育てたかったのだ。元いた世界では飼い猫用にそういった草を育てる飼い主もいると説明し、レブラに村の人たちに尋ねて回ったのだが、やはりこちらにはないらしい。
「まあ、何種類か生えてくんなら、その中に好きな草があるんじゃないのか」
小屋からリンクスが出てきて、子猫たちを捕まえた。リンクスのことが大好きな子猫たちは大喜びで、腕から逃げ出し肩によじ登っている。
「そっか。猫草、いろいろ種類あるらしいし。そのどれか生えてくれたら、健康大丈夫……?」
「まあ、こいつらも自分に必要なもんはいざとなったら外に食べに行くだろ」
「……リンクスにも草、必要だった?」
「いや、違うよ? 獣人の俺をそこらへんの猫と一緒にするなよ」
マオは子猫たちとリンクスを見比べ、心配そうな表情を浮かべた。
最近は子猫たちにするように耳や尻尾に触れてくるから、リンクスはちょっと困っていた。マオが自分のことを猫か何かだと思っているのではないかと感じると、複雑な気分になる。
「ちび共がおねむだ。種を蒔くなら、早く蒔いてくれ」
「あ、はーい」
リンクスの肩の上で、子猫たちは動きがゆっくりになってきていた。まだ遊びたくて執念で動いてはいるが、こういうときは突然パタリと動かなくなるのだ。
寝ている間に済ませなければいけないことがマオにはたくさんあるから、種蒔きは急いで片づけたいところだ。
「急げ急げー」
マオは自分で自分を急かしながら、耕した土の上に種を蒔いていった。その動きが面白かったからか、ポルとカルはリンクスの肩から降りて、マオのあとをついて歩いた。
マオがタタタッと進む後ろを、子猫二匹はぴょんこぴょんこついていく。
その可愛らしい姿に、レブラだけでなくリンクスもニマニマして見守っていた。
だが、見守る二人の目の前で、今しがた種を蒔いたばかりの場所にとんでもないことが起こる。




