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第1章 ミカとの再会

第1章 ミカとの再会






 広い銀河の一角にあるミータッツ太陽系。その中の、また片隅のような位置にある惑星パングリオンがあった。更には、そんな惑星の片田舎の町ガガノートに奮闘する一人の警官がいた。


「おい!まて!とまれ!」




警官は制服の一部である帽子を抑えて、駆けながらに叫んでいた。誰かを追いかけているのか、その足は止まることはなかった。


 古いビルとビルと合間の路地を駆け抜け、警官は大通りに飛び出した。路地とは打って変わって日差しが照り付ける大通りには通行人で溢れていた。


タヌキ族の親子が手をつないで歩いていたり、青い肌の美男美女カップルが宝石店での前で立ち止まったり。岩石族の老人が縦列駐車に悪戦苦闘していたりと、追跡の妨げになるものがたくさん目に入って警官は頭を悩ませた。


「くっそー・・・休日だもんな・・・」


あたりを見渡して、ターゲットが見つからないことに悔しそうにつぶやいた警官だったが、次には思考を切り返すと大きく瞬いた。


「よーし!」


と、意気込むと同時に警官の目と足に赤いオーラが灯った。


瞬間、警官はバネのついたおもちゃの様に高く飛び上がった。それによって抑えていた帽子も吹き飛んで栗色の髪と瞳が露になった。


そうして近くのビルの屋上に着地した警官は、そのまま真っ赤にした目で町中を見渡した。


パッ!パッ!パッ!と忙しく頭部を揺らして対象者を探す。


 バーガーを食して騒ぐ女学生の集まり。客がいないのにギターを弾き続けるストリートフォーマーな鶯族の男。最近できたこだわりラーメン屋に並ぶ行列。


そしてフライカーに乗り込む太った狼族の男。


「みつけた」そこで警官がつぶやいた。


と、それと同時に標的にしたフライカーは、宙に浮かび上がって動き出すのだった。


警官は逃すまいと再び足に赤いオーラを発すると、飛び出す準備をした。だが、相手は空飛ぶ車・フライカーである。いくら自分が脚力を強めようとも空を飛べるわけではない。


するとそこで警官はちょうど目に入ったものに『しめた』と思い付いて、そちらに向けて飛び出した。




「ははーん、と♪」


空には一台、フライングバイクが飛んでいた。操縦するペリカン族の男は上機嫌に鼻歌を奏でていう。そこへ。


ドカン!と、何かが衝突――いや、ハンドルをもつ正面部分に何かが、乗っかったのだった。


栗色の髪をした警察官だった。


「んな?!ななな!?」


「警察だ!悪いけどこれ借りるぞ!」


ペリカンは大きなくちばしをパクパクさせて、気の動転を見せるが、警官は急ぎ手帳とバッヂを確認させると運転を代われと迫った。







 「早く出せ!」フライカーに乗り込んだ太っちょ狼男が吠えた。半身を覆う機械の腕を刃物にして運転手に詰め寄った。すると気の弱い営業マンのような優男がビビりあがって「ひぃ!」と声を上げた。同時に狼男がさらに声を荒げると、優男の足がペダルを踏んでフライカーを急発進させた。


ガガノートの空を暴走気味のフライカーが風を切って勢いよく飛び出した。あまり多くない障害物を避けては空飛ぶ車はどんどんと街から離れていく。が、しかし。


ドカン!!


次の瞬間、何かがフライカーに激突した。


「うわぁあ!」


「な、なんだぁ?!」


運転手と狼男も吃驚仰天。車体は空中で何度も横っ飛びに回転しながら吹っ飛んで、傍の電波塔にぶち当たった。あまりの衝撃にフライカーは沈黙し、そのままへし曲がった鉄塔に沿うようにズルズルと落ちて、やがては地上に逆さまの形で転がった。


「ち、ちくしょう・・・!」すると逆さまなフライカーの後部座席から狼男が、なんとか這い出してきた。その手には大事そうにアタッシュケースを抱えている。


 舌打ちをしながらに運転席を除けば、優男が仰向けになって気絶していた。白目をむいて、まるでこの世の終わりでも見たかのように固まってのびている。


これ以上のライカーの使用はだと踏ん切り付けた狼男が、急ぎ立ち上がった。


そこへ。


「そこまでワンバゥ!強盗の容疑で逮捕する!」


真っ赤なオーラを纏ったフライバイクに乗った警官現れたのだった。バイクには大きなへこみができて、新品だったろうそれが痛々しいまでに傷ついていた。しかし、警官はそんなことなど気に留めず、バイクを降りると手錠を取り出した。


「てめぇ!警察がこんな乱暴なこと・・・!」


「はいはい、あとは署で言ってくれ」


今にも逃げ出しそうな狼男ワンバゥをすぐさまに取り押さえると、警官はすかさずに手錠を掛けた。機械の腕とふささふな生身の腕とに特別の手錠がはめられて、ワンバゥは「ふざけるな外せ!」と叫ぶも警官は聞く耳持たず、無線に手を伸ばした。


 しかし、警官はそこで後ろから妙な音が聞こえたの気付いて振り返った。


「・・・やば」警官は声を詰まらせた。


見れば先程乗ってきたフライバイクが煙を上げている。バチバチ、ボカン!と電撃と焦げた匂いを漂わせて、嫌な予感を覚えさせた。そして冷や汗流す警官は、バイクのエンジン部分にまで亀裂が走ってるにも気づいて、顔をひきつらせた。


瞬間、ドッカーン!!とフライバイクは爆破してしまったのだった。


「うわ!!」


思いがけない事態に警官は身体を丸めて防御の姿勢を取ったが、そのまま爆風に吹き飛ばされ地を転がってしまった。


それを狼男ワンバゥは見逃さなかった。


「し、しめた!」手錠を掛けられながらも太った身体をなんとか動かして逃走を図った。幸い、警官の影になっていて爆風の影響はほぼ皆無であったため、すぐにでも行動に移すことが出来た。


「へっ、ドジな奴だぜ――…」と、まんまと逃げおおせた転がっている警官を尻目にワンバゥが駆け出した。


が、その時。


「げぇ!」


ウー!ウー!ウー!


けたたましいサイレンが鳴り響き、一挙にしてワンバゥをパトカーが取り囲んだのあった。続けてパトカーの中から、電光石火のごとく2人のイヌ族の警官が飛び出して、そのままワンバゥを取り押さえたのだった。


「うげぇ!」再び地に伏せられて目がバッテンになるワンバゥ。


「よーし、よし!動くなよおいワンバゥ、『お前』は『俺』が捕まえた!わかるな?」


「おおい!何言ってやがる!?俺の運転のお陰で追いついたんだぜ!?だったら俺が捕まえたも同然だろう?!」


ドーベルマン形のイヌ族の二人は手柄の取り合いで、言い合いになり、そのとばっちりでワンバゥは締め上げられて更に悲鳴を上げていた。




 そんな光景を、転がったままの威勢だった警官が、虚ろな目で見ていた。横転したフライカーと炎上するフライバイク。周りは、バイクの爆破やパトカーの集結による大捕り物を見ようと人だかりに鳴っている。そして、その中で他所に取られていく強盗逮捕の手柄。


「・・・しまった、実にしまった」


ゴロン、と、姿勢を元に戻すと、警官は首を横に降って肩を落とした。


せっかくの好機を寸前で取り逃がしてしまい、溜息とだだ漏れてしていた。


しかし、そんな彼に突如として聞き覚えのある声がどこからか飛んできた。


「あれ、もしかしてケント?」


「へ?」ケントと呼ばれた警官は思わず、声の方へと目を向けた。


そこにはキャップ棒を被った金髪の女性が立っていた。それもコンビニ袋を手に下げ肉まんを頬張りながらに。


 すると女性は、人混みを割いて前の方に出てくると、警官の間近までやってきた。


「・・・やっぱり!ケントじゃない!」


「ミカか!?」


二人はお互いの名前を言うと確認するように頷いた。


「なんか騒がしいから覗いてみたら、まさかあんたとはね・・・警察官になったとは聞いてたけど――ぷっ」ミカは思わず吹き出して口に手を当てた。


「・・・なんだよ」


「全然、似合ってないわね警官服!」思わず指差して大きく笑いだしたミカ。それにケントも「なんだと!」と反論を試みるのだが、そんな彼に次なる声が降り掛かった。


「おいおいおいおいおい、こりゃまた派手にやったな?えぇ?」


声の主はチワワ型のイヌ族の男であった。ケントの三分の一ほどの背丈しかないが、ビシっと引き締まった警官姿に位の高さを示すバッヂが光っていた。


ケントはそれを確認した途端、鉄のように固まって姿勢を正した。


「あー、なんだ?その・・・つまりは強盗犯を捕まえる過程でこうなったってわけだな・・・あぁ――君は・・・」


「ケントです!警部殿!」


「・・・そうかケント君。君が、車をひっくり返してバイクも燃やしたおかげでめでたく犯人逮捕に繋がった。そういうわけだ?え?」


「そ、そうで、あります!」どこか引っかる言い方のチワワ警部にケントが、息の詰まる思いで返答した。横ではミカが、今度はピザまんを頬張りながらにその現場を眺めている。


「ふーむ、なるほどな・・・!いや、いやいやいや!素晴らしいケントくん!犯人逮捕に多少の犠牲はつきものだ!市民の協力を得てこそ我々警察も治安を守れるというもの!うん、よくやったケントくん――」


「本当ですか!ありがとうご」


「――と、でも言うと思ったかね?」警部の声が恐ろしいほどに低くなり、ケントは血の気が引いて顔面蒼白になった。

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