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10話 光と闇

 街から少し外れたところにその小屋はあった。

外壁は各所にヒビ割れが目立ち、屋根はツギハギだらけ、扉は建て付けが悪い。

そんな場所に男が2人と少女が1人。


 1人の男は筋肉質の大男で、顔には無数のキズがある。

もう1人は小柄で目には隈、格好は猫背で外見はよくないが、身につけているものは高級品ばかりでひどく対照的である。

その小柄な男は、少女を思い切り蹴りつける。


「てめぇ!どのツラ下げて戻ってきやがったんだクソが!


 壁に激突した少女は、寄りかかりながらずり落ち、けほけほと咳払いをする。


「さっき取引先の偉いさんから連絡があってよぉ⋯⋯、薬持ったまま逃げやがっただと!? てめぇのせいでこちとら信用が台無しじゃねぇか!」


 追い討ちをかける男。少女の胸ぐらを掴み、投げる。


「⋯⋯その服はどうした、仕事サボって窃盗してたってかぁ!? 優先順位ってのがわかんねぇのか! 今お前が生きてんのも俺のおかげだろうが! 仇で返してんじゃねぇ!」


 この男、生業を奴隷商としている。

裏の世界で売られている奴隷を買い取り、その奴隷を危険な仕事の請け負いに利用、時には派遣し、自分の手を汚すことなく大金を稼いできた。


 少女は10歳の時に、父親の手で奴隷オークションに出品された。

理由は借金返済のためという身勝手さ。

獣人族は身体能力の高さゆえに労働力として人気があるが、彼女は子供で女だから、という理由で買い手が付かず、安値になったところを奴隷商の男に買われたのだ。


 男は、彼女の「小柄で俊敏」という能力を活かし、窃盗や薬の密売の足役をやらせてきた。

最初は嫌がっていたものを暴力によって屈服させ、服従させた。

 嫌々ながらも、逆らっては生きてはいけないと判断した彼女は仕事を忠実にこなし、隙をついて逃げ出そうともしたが連れ戻され、かれこれ6年もの間、その生活を続けてきた。


「最近は大人しかったじゃねぇか⋯⋯。なんだってまた逃げる気になったんだ? 無理だってのは百も承知だろ?」


「あ、あの⋯⋯、こ、怖かった⋯⋯、服、破かれて⋯⋯男の人が怖い顔で⋯⋯!」


「あぁ?あいつらこんな小便くせぇガキに手出そうとしたのか?」


じろじろと少女の身体を舐めるように眺める男。


「ガキの頃からの付き合いで気づかなかったが一丁前に女になったじゃねぇか。うちの商品傷物にされちまう前に俺が楽しんどくか」


「あ、兄貴、俺も⋯⋯」


「てめぇは後だ!」


 大男を制し、少女に滲み寄る。

その顔は、今朝、少女が逃げ出そうとと決めたときの表情と同じだった。

本能で危険を察知した少女は、街で出会った2人の恩人から渡された魔具のスイッチを押す。

そして、近くにあったイスを投げつけ、男を牽制した。


「てめぇ育ての親になんてことしやがる!おい、ボサっとしてねぇで捕まえろ!」


「あ、兄貴が後でって⋯⋯」


「うるせぇ!頭使え!」


 大男が迫り寄る。先ほど同様イスを投げつけるが、大男は片手で弾き飛ばし、歩みを止めることはない。

背後は壁、出口から大男が。逃げ場を失った少女は全てを諦め、脱力した。




「女の子に寄ってたかってなにしてんだよ」


「!?」


 状況を飲み込む前に、悪い顔して女の子に近づくでかい男を蹴り飛ばした。

扉も吹っ飛んだけど姉さんに修理してもらおう。

ふ〜、間に合ったし決め台詞もばっちりだ。


「な!? お前ら今どっから出てきやがった!なんなんだてめぇら!」


「どっからでもいいよ、もうすぐ帰るから。姉さん、その子お願い。」


「うん!レイくんもやりすぎないようにね」


 姉さんは自らの背後に女の子を匿った。

さて、実況見分といこうか。


「で、おっさん、この子のなんなの?」


「こっちの質問無視しやがってクソガキ⋯⋯。俺はそいつの育ての親だ!文句あんのか!」


 親?ただの喧嘩か?そんな気はしないが。


「おい!俺たちにどうしてほしい?」


 後ろを振り返り、意思の確認。

1人蹴り飛ばしてしまってて今更なんだけど。


「⋯⋯助けて!」


「まかせろ」


 俺は成金みたいなおっさんに詰め寄る。

親子喧嘩で助けてなんて言わねぇからな。


「こっちに寄るんじゃねぇ!」


 銃だ。もう発砲してやがる。

動体視力が強化されてて弾道がよく見える。

このおっさん、容赦ないな。俺も人のこと言えないか。

放たれた2発の弾丸を素手でキャッチ。

映画みたいなシーンをまさか自分がやることになるとは、転生万歳。

おっさんは大口開けてアホ面している。


「ほら、この弾返すぜ」


「や、やめろ!う、うおあああああ!」


 親指と人差し指でキャッチした弾丸を固定し⋯⋯


「バン!!」


 その瞬間、おっさんは気絶した。

撃つふりをして「バン」と発声し、驚かせて相手を気絶させる、よくあるシーン。

あれをやろうと思ったが、発声と同時に、勢いづいた親指が弾を弾いてしまったから意味がない。

弾は明後日の方向へ飛んで行ってしまった。

カッコ悪。


 やれやれ、姉さんに良いところ見せたかったのに今日はなにやっても上手くいかない、厄日かな。

意識しすぎるのも一考の余地ありだ。

後ろを振り返ると、分厚い壁が構築されていた。

 どうやら姉さんが、相手の銃を確認し、即座に創りあげたみたいだ。

やっぱり姉さんは素晴らしい⋯⋯。

優しいだけでなく、判断力も優れている。

壁のおかげでドジったところも見られていなかったようだ。





 今日は平和なデートの予定だったのにとんだ災難だったな。

非日常的で珍しい体験だったが、姉さんとのデートを中断してまでするようなことではない。

さて、帰るか⋯⋯っと、女の子が抱きついてきた。

大声で泣きじゃくりながらお礼を言ってるようだ。よく聞こえない。


「神様、撃たれたの!?」


「いや、外したよ向こうが」


 俺が外した弾痕に説明をつける。

我ながらナイスアドリブだ。


「よかったああぁぁぁぁ」


「落ち着け、俺は大丈夫だから離れろ」

姉さんが見てるだろ!


「レイくん、今はそうしてあげてて。ねっ」


 姉さんがそう言うなら⋯⋯。

俺は女の子を抱きしめ、胸の中で泣かせてあげた。

女の子が落ち着いてきたところで今後の話だ。

 事情を聞いてみれば、どうやら帰る場所のあてがないらしい。

確かにもうこの2人の所へ戻るわけにもいかんよな。


「住むところ⋯⋯か。そういえば名前は?」


「ウル⋯⋯」


 そうだな⋯⋯、ウルは街の警備部隊にでも保護してもらうか。

今まで奴隷として悪事を強要させられていたと話せばわかってもらえるだろう。


「ウル、これから街へ連れて行くからそこで保護してもらおう。事情説明は俺たちも同行するから」


「! それはダメ!ウルは神様と一緒にいたい!」


 ん?何だこの反応は。それと俺は神じゃないんだよなぁ。


「このままだと行くとこないんだろ?あと俺は神でもなんでもない。名前はレイ、こちらにおられるのがシーラお姉様だ」


「なにその呼び方⋯⋯。ともかくウルちゃん、何か理由でもあるの?」


「⋯⋯行ってみればわかるよ」


 行っても無駄と言わんばかりの含んだ言い方だな。

しかし、このままここに置いて行くのもできないし、行ってみるしかないんだ。





 街へテレポートした俺たちは、警備部隊の駐屯所を尋ねた。

モードプールほどの規模の街には、超巨大組織「センティネル」の有する部隊が配属されているらしい。

前世の世界で言えば警察のようなものだ。

 とりあえずは連中にウルを保護してもらう他、手段はないだろう。

それにあの2人も逮捕してもらわなきゃな。


「すいません、緊急事態なんですけど」


「はい、どうされました?」


「この子が奴隷商のところで無理矢理悪事を働かされていたんです。暴力によって逆らえなかったらしくて、たまたま関わった僕たちが救助してきました」


 センティネルの隊員の目つきが変わった。

行ってみればわかるってのは⋯⋯。


「⋯⋯あー、奴隷、ね。おじさんは優しいから教えてあげるけど、世の中には『触れてはいけない事』というのがあるんだ。念のため聞いておくが救助ってのは連れて逃げてきただけか?その奴隷商に手を出したわけじゃあるまいね」


 何だその質問は。奴隷商2人をぶっ飛ばして助けてきました、と言ったらどうなる?

雲行きが怪しい⋯⋯。2択を迫られているが、こいつの言い方からして答えるべきは前者の答えだろう。


「はい、偶然街の中でぶつかって助けを求められたのでこうして連れてきました」


「そうか、なら悪い事は言わない。そのお嬢さんとは『出会わなかった』。いいね?」



 ふーん⋯⋯なるほどね。

妙にシリアスにしてしまったので次回はイチャラブ要素をふんだんに入れます

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