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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第一部 空想上の物語
31/74

昔語 後編

有川湊が初恋の相手に出逢ったのは至って普通で有り触れていた


幼い有川湊はクラスメイトと一緒に少し遠めの児童館へ行こうという話になり


4,5人でその児童館へと向かう


理由なんて存在しない。強いて言うなら、たまには別の場所でピクニック気分で遊びたかったのだろう


そして、子供の自転車で約20分ぐらいの距離にある。


その児童館で来た友達とそこで遊んでいる子供達とで色々なことをして遊んだのだ


主に児童館の外で遊んで遊んで遊びつくした


有川湊は疲れたので少し児童館の中で休むといい、一人で中へと向かったのだ


そう、これこそが出会い


本がかなりある一室チラっと覗いた時、彼女が居た


頼れるお姉さんオーラを出した銀髪の女性が年下であろう子供達に本を読み聞かせていたのだ


そしてその光景から目を逸らせなかった


単純に一目惚れしたのだ


ーーーーーーそこから全てが始まった


それ以来、有川湊は何度もこの児童館へ来た


遠いながらも、彼女に会うために


だがどう話せばいいのか分からず立ち往生していたら


その児童館で出会った友人が休みがてら聞かせてもらおうと提案してきた


勿論全力でうなずいた。話だけでもいいから間近で見たかったのだ


そして友人と共にその輪の中に入り、清聴させてもらう


優しくて、暖かくて、聞いていて安心するような


そんな感覚になった


だが湊は有ろうことか窓際で聞いていたので、その壁に背を預けていたらいつの間にか寝てしまったのだ


しかし寝てしまうのも当然。クラシックを聞いていると眠くなるのはそれほど静かに耳を済ませたいほど聴いていたいと思うから目を瞑る。その結果寝てしまうことも多々あるだろう


それと似たような感覚だった


そしてその眠りから目が覚める



ーーーーーーーここから始まる彼女と湊の初めての恋。そして最悪で有り触れた恋



「・・・随分と眠っていたんだね」


目が覚めると彼女がそこにいた


本を読みながら、恐らく自分が眠りから覚めるのを待っていたらしい


掛け時計を見る


すると5時過ぎだった


眠っている時間はそれほど長くは無かっただろうが、そろそろ帰らなければいけない時間だ


「・・・・・・うん、折角読んでいてくれたのに、ごめんなさい」


「そんなことは別にいいの。好きでやってることだから」


パラッと本を捲りながら話しかけてくる


「・・・そっか」


そんなことしかいえなかった


もっと話がしたいのに


もっと解りたいのに


こんな言葉しか出ない


若干の間


それが凄い居心地が悪かった


だから


「・・・そろそろ帰らないと。」


逃げることにした


時間を言い訳にして、この場を去ることにしたのだ


「そうなんだ、君はこの辺の人じゃないよね?だったら気をつけて帰りなさいよ」


見かけない顔だからこそその結論に至ったのだろう


「気遣い、ありがとう。それじゃあね」


立ち去る、そのために玄関へ向かう


だがその直前に、この部屋の扉から出る直前に声を掛けられた


「・・・・ねぇ、君の名前はなんていうの?」


彼女から、当然の疑問を投げられた


隠すことではないので俺は素直に応える


「湊。小学2年生」


「私は■■■■。小学5年生だよ。これからもこっちに来るのなら、一度私のところへ顔を出して欲しいな」


無邪気に笑いながらそう告げる


「・・・・うん、分かったよ」









2日後、その翌日、さらに翌日、そして次の日


何度ここへ着ただろうか


もう殆んど毎日来るようになってしまった


そのたびに■■■■と一緒に話す


話すだけである


別に動き回って遊ぶとか、そういうことはせず


ただ静かに世間話をするだけ


それだけで、心の距離が狭まっているのが分かった


そんなこと続けて早数ヶ月


いつしか抱き付かれるほどの仲のよさに変貌していた


お互いがお互いのことを知り尽くしていて


尚も相手のことを知ろうとする


故に肉体言語


抱きついたり、手を繋いだりと


そういう健全なことをしながらさらに距離が狭まる




そう、ただこれの繰り返しだ


こんなことを約1年繰り返しただけで


いや、ある日に花火大会に一緒に行ったこともあったか


その時は有川家しかしらない見やすい場所、つまりあの裏山へと誘った


屈託のない笑顔で嬉しそうに教えてくれてありがとうと喜んだ


さらに関係は進む


彼女と湊はもう離れられないような関係まで


このまま行けば、小学生特有の無邪気な結婚宣言すら実現するんじゃない勝手ぐらいに


だが・・・・・


ある日の児童館の手前の道路


こういう関係になってからいつも途中まで彼女と湊は一緒に帰る


話しながら、駄弁りながら、笑いながら


そしてはしゃぐ


彼女ははしゃぐ。嬉しくて、楽しくて、恋しくて


はしゃいだ結果


彼女は勢い余って普段あまり車が通らない車道へ出てしまう


そして・・・・・・・


「俺は助けようとした。俺が犠牲になってでも、彼女を助けようとした。なのに彼女は・・・・」


有ろうことか、彼女は突き飛ばしに来た俺を逆に突き飛ばしたのだ


そんな力、男の子一人だが、そんな力いつも本を読んでいる文科系の彼女が持っているはず無いのに


俺を突き飛ばした


そしてその結果、誰であろうと解るだろう


俺の目の前で


彼女はーーーーーーーーーーー


「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


声にならない悲痛の叫びが轟く


彼女が・・・・・死んだ


目の前で轢かれた


その有様は無残なものだった


四肢を引きちぎられ、腹からは腸が飛び散り、頭は、顔は原型を留めていない。目玉は飛び出て脳はぶちまけられて、首なんてものは存在していなかった


まさに肉塊


肉の塊に他ならない


「ーーーーーーアアアアアアアアアアアアアアアああああああアアアアアアアあああああアアあああアああああッッ!!!!!!!」


この叫びは彼女が死んだからではない


彼女は故意に殺されたことが分かったからだ


あの一瞬


運転手は無表情に彼女を轢き、そしてそのまま去っていった


殺された


彼女は殺されたんだ


なんで・・・


なんで彼女が殺されなきゃいけない!?


何故、どうして、理由は?


ワカラナイ、ワカラナイ


だけど、これだけは分かる


彼女が殺されたのなら


僕は一生そいつを許さない


許さない許さない許さない


僕は絶対に許さない


・・・・・・・アア、だがなんだろうか


この虚無感は


怒りより、嘆きより、復讐よりさらに不快な感覚


何もかも失ったこの感覚は


ぽっくりと穴が空いたこの気持ちは


死んだんだ。彼女は


もう、この世界に居はしない


ーーーーーーーアア、逃げたい


どこかへ逃げたい


彼女が居ない世界に居ても意味がない


・・・・アアそうだ。彼女がいる世界に行こうじゃないか


そうだよ、そうすればいい


つまり


僕も


死ねばーーーーーーーーーーーーーーーーー








「そう思った瞬間、俺とアイツは入れ替わった。気づけば病院の一室。そこから俺の全てが始まったんだ」


語り終えた


コイツが知らなくてはならない俺の過去を


簡潔に簡単に語るとこの程度の話


詳しく思い出も語ることも出来る。だがそれはソヴィのとって関係のないものばかり


だから語らない。これだけで俺が何を伝えたいか分かったと思うから


そう、これはどこにでも有り触れて、どこにでも在る出来事


まさにドラマでありアニメである。架空に等しい現実味のない普通の物語


だけど、こいつはそれが現実であることを知ってる。体験している


だから今なら話せるし知らせるし理解できると思った


だから、伝えた。


「・・・・もう、言わなくても分かるな。そうだ、お前の姉を救えなかった、見殺しにしたのはーーーーーーー」


「それ以上は言わないで」


事実を、真実を口にしようとした瞬間、ソヴィがそれを止めた


「・・・それ以上は、もういい」


そう呟くと、俺の両手を掴み抱き寄せる


格好からすれば、マフラーで寒さから耐えるような姿になる


「・・・少しだけ、眠るわ」


「・・・ああ」


それしか、いえなかった


それ以上、いえなかった


眠りと同時にこれからのことを考えるのだろう


だから俺はそれを妨げない


今日一日でどれだけの真実を聞かされたのだろう


どれだけの重みがあったのだろう


どれだけの痛みがあったのだろう


本人にしか分からない


だけど、こいつは今、それを受け入れることが出来たんだ


・・・・やっぱり、凄いよ。お前は


今改めて、お前を救ってよかったと思う


お前のような人間が、あんな所で死ぬのは許されない


俺が救うのも、真実を知るのも、ここまでくれば最早必然とまでいえるだろう


そしてそれに耐え、認め、受け入れ、理解したお前なら


何処でも、生きていけるだろう


・・・・なら、俺の決断は変わらない


ソヴィが寝たので俺も寝ることにする


不思議と、腕に力が入りソヴィの身体を抱き寄せてしまう


端から見れば、傷を舐めあっているようにしか見えないな


だが、俺達はそれでいい


何せ俺達は元々、弱くて惨めで情けなくて不恰好な人間だったのだから

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