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シゾフレニア  作者: 民音慧可
第一部 空想上の物語
29/74

【真編】有川湊

ーーーーーーーー精神世界


有川湊が出した答えは3つ目の選択肢、つまり俺の記憶を全て引き継ぎ自分自身の手で助けることを選んだ


俺はそれに従い、俺の記憶全てを受け渡した


全て見せた。何もかも


俺が経験してきた、見てきた地獄、友達、恋人、日常、家族


戦争、紛争、暗殺、虐殺、殺戮、社会、軍、


そして、人


俺が味わってきた全てを、こいつは受け入れることが出来たんだ


ならーーーーーーーーーーーーー


(・・・もう、俺がいる意味は無いな)


これで役目を果たせた、ことになるのかな


ともあれ俺は既に用済みだ


ここから逸早く退散するに限る


この世界から、現実世界から


だが、その考えは有川湊によって消された


「・・・やっと、解ったよ。君がどんな人生を歩んでそこまで強く成れたのかを」


「人並みの努力を、お前は望んでいなかった。だから、普通じゃない方法で強くならなければいけなかった・・・。この罪は俺が持っていく。お前は俺の記憶を使い、その身体でソヴィを助けーーーー」


そういい残し消えようと思った


なのに、こいつは


「これでようやく、僕は消えることが出来る」


・・・・・・は?


「・・・今、なんていった?」


「これで消えることが出来るって言ったんだ」


「何、考えてんだよッ!お前は!」


流石に怒鳴らなければ収まらなかった


俺は、お前が現実の世界で不自由なく過ごせるようにここまで・・・


「今、君の全てを知ったから君の気持ちはよく解る。だから・・・ありがとう。こんな僕に生きる意味を与えようとしてくれて・・・本当に嬉しい」


だけど


「ソヴィトヴィーニアを助けるのは君だ」


「・・・どういう」


「順を追って説明しよう。まず1に、ソヴィトヴィーニアは君に助けを求めた。これは考えなくても解るだろ?こんな僕に彼女が助けを求めるわけが無い。なら何故有川湊の携帯に助けを求めたのか、答えは一つ。強さを持った、強さを求め努力してきた君がまだいると願っていたからだ」


「・・・・・・・」


俺は、黙って聞くしかない


反論は最後にでもすればいい


聞きたいことは後でまとめて聞くさ


だから今は、こいつの考えを聞こう


「そしてその2に、僕はもうすぐ消える。だからその前に君が歩んで来た、有川湊として歩んで来た全てを知りたかった。君に責任を・・・いや、全てを丸投げした情けない僕が出来る最後の罪滅ぼしだったからね。本来、君が今背負っている罪は僕が背負うべきなんだから」


・・・消える?


なんで、お前が消えなければいけないんだ


お前はこの体の持主だろうが


「その3・・・・これは願望だけど、また君に押し付けることになるけど・・・どうか僕の意思を継いで欲しい。君が僕に記憶をくれたように、今度は僕の記憶を渡す。そしてどうか、突き止めて欲しいんだ」


「・・・・・言いたいことはそれだけか」


「うん、僕の目的と望みはこれで全てだ。現実世界での生活を望んでは居ないってことは解って欲しい」


「・・・なら、今度はこっちが質問する番だ。まず一つ、お前は何故現実世界に出た?それは心のどこかでまた現実で過ごしたいっていう願望が在ったんじゃなかったのか?」


「違う。それは君の全てを知りたかったための手段だ。普通に話して説得しても君は絶対に記憶を渡してくれなかっただろうからね。・・・まあ、確かに現実世界に未練が無いと聞かれたら、少なからずあるけど、そんなことよりも君の歩んで来た人生を知り、君の負荷を少しでも軽減させたかった」


「・・・その二、どうしてそこまで俺のことを思う?俺はお前の一部でしかなかった。俺はお前の願望機でしかなかったのに」


「・・・さっき僕はもうすぐ消えるって言ったよね。その理由はそこに関連されているんだ・・・。何故消えるのかを疑問に思ったと思うけど、それはこの身体がもう既に僕を拒んでいるからさ。この身体も、この精神せかいも現実も全て君を選んだ。もう僕に居場所なんて無い・・・。当たり前だよ。なんせ僕は既に10年前に死んだも同然だ。そんな奴が今更出てきたって誰も認めてはくれない。それはさっき君が言った通りにね」


・・・・・・・・


「その証拠に、君が僕の考えがわからなかったように僕も君の考えが解らない。本来なら、記憶は共有されてなくてもその気なれば知ることが出来るはずなのにだ。それが出来ないってことは、お互いが別々の存在として確立してしまっているんだ。僕は僕という人間として、君は君という人間として」


「・・・待ってくれ」


「この身体は本来人間・・・いや、人格は一人用だ。そこに2人も入っていたらいずれ限界が来る。そして今、その時が近づいてきていた。現実の世界で生きている君には解らなかったと思うけど、この世界は既に崩壊しかけている。この世界にいる僕だからこそわかったんだ」


「待ってくれよッ!」


その言葉でようやく説明を止めた


「お前ばかりペラペラ喋るなよ。お前ばかり都合よく好き勝手言うなよ。そこまで考えているのなら、自分が死ぬって解っているなら、何でお前はそうも平然としていられるんだ!?」


「・・・言っただろ?僕は既に死んでいるようなものなんだ。あの時、ミーシェを救えなかったあの時から、死んでいるようなものだ。今の僕は、未練という形でここに留まっているに過ぎないと思う。」


死んでいる


死んだまま、この世界で10年の時を過ごしてきた


そう言っているのか?


「また生きたいとは思わないのか?」


「・・・ミーシェがいない世界で生きても、無意味だよ」


儚げに告げる。


・・・・ああ、そうか。こいつは、どこまでも愛に狂っていたんだな


どこまでも、本気でミーシェのことを愛していたんだな


だから彼女が死んだ時、お前も現実的に死んだ


「・・・俺は、今まで無意識だったけど、お前の望みを叶えるために生きてきた」


「うん」


「お前がいつでも現実に戻っていいように、友達も、家族も、最低限大切にしてきた」


「うん」


「全部・・・本来の人格であり、この身体の持ち主であるお前のためにやってきたことなんだ。俺は、お前だったから・・・お前のことを一番理解していたから・・・俺はここまでやってこれたんだ」


「・・・さっきから無責任なこと言ってるよね、僕。でも、この身体と現実が君を望んでいるんだ。君はそれに応えなくちゃいけない・・・。もう君は、僕の一部という器を遥かに超えている。一人の人間として、存在しているんだ」


「・・・お前の意見は尊重する。お前が、本物が決めたことだ。偽者の俺が口出しする権利は無い・・・。お前が、本当にそれでいいのなら・・・俺は、お前の願った姿のまま生きていこう」


そうだ、俺はこいつの望みを叶える願望機


無欲だった俺でしか成れなかった存在


その望みとは一言で「強さ」だ


俺は強い。強くなければいけない


だから、最後まで、俺は「強い有川湊」として生きていく


強いから、弱音を吐かない


強いから、辛くても耐えれる


強いから・・・・強いからこそ、泣言は許されない


「・・・いい顔になったね。やっぱり君は無愛想で関わりにくい顔の方が似合っているよ・・・。これでようやく僕の真実を教えることが出来る」


「その真実ってのは、お前が求めた強さに関係するのか?」


「そうだよ。そしてこれこそ、何で強さを求めたのか、その理由の根源だからね・・・。百聞は一見にしかず。渡そう。僕の、記憶を」


さっき俺が見せたように、今度はこいつが自分の記憶をこの世界に流れ出す


「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだよ、これ。」


ありえない、信じたくない、解りたくない光景が広がっていた


「そう、それが真実だ。僕がここに居る理由であり、君が生まれた理由であり、僕の渇望の真実だ・・・。単純だろ?でも単純だからこそ、解りやすかっただろ?僕の、負の感情がーーーーーーーー」


ーーーーーーーーーーーー刹那


本当に一瞬だった


この世界には時間という概念は存在していない


だから気づいた時には全て終わっている


そして、今


その一瞬という間に有川湊、願望機である有川湊は襲われたのだ


何に?決まっている


ここは精神世界。ここに居られる存在は限られている


本来の人格である有川湊が逃げ込むというのは異例だ


本来ここに居る存在は、誰もが持っている心。そしてそれがこの世界のみ具現化された姿


つまり・・・感情


負の感情


ーーーーーーーーーーーーーー畸形だ







虚空ーーーーーー


虚無ーーーーーー


虚像ーーーーーー


広がるその世界は暗く、不気味で、そして果ての無い闇が続いている


「・・・・・・知っている」


俺は知っている


ここは悪夢だ。いつも悪夢で見る世界


つまり、畸形の世界


俺はさっきまで確かに湊と話していた


だが、気づいたらここにいる


妥当に考えて畸形共に襲われたんだろうな


「・・・だがあのタイミング。考えるにただ襲ったわけじゃ無さそうだ」


≪そう、ただ襲ったわけじゃない≫


何も無いはずの空間に響く


俺じゃない、俺の、有川湊の声が


「お前に教えておいてやろうと思ってなァ、手荒な真似をして悪かったよ」


「お前はなんだ」


何も無いはずなのに、気づけは目の前には俺が居た


目が無い、俺が居た


「俺はテメェだァ。そしてアイツも俺。解ってんだろ?」


なるほど、畸形が姿を変えて対話の出来る状態にまで進化したのか


有川湊という存在がブレている隙を狙って


「・・・それで、何を教えてくれるんだ?」


「決まってる、真実さァ!」


畸形は手を広げ、この闇を掴む


「真実ならこれからアイツに教わろうとしていたんだが、なんだ、お前からも教えてもらえるのか。ありがたいねぇ」


「ああそうだ。無知で馬鹿なお前に説明してやるよ。そうだナァ・・・・アアそうだ。お前はまず勘違いをしている


「・・・勘違い?」


「アア、お前は本来の人格の一部から生まれた存在。そう自覚しているし教わっただろォ?」


「なんだ、違うのか?」


だった俺はなんなんだ


「まあいって解らねえし、信用しねえと思うが・・・ひとまずは言わせてくれヨォ」


「言ってみろ、言うだけならタダだ」


その軽々しく言った言葉が、次の瞬間には重く感じ、聞いてはいけなかったと後悔した




奴は虚空の目でこういった




「・・・・テメェは、テメェこそが、この身体の持主、本来の人格。有川湊なんだよ」




「・・・どういうことだ?」


「テメェは逃げたんだよ。女一人助けられなかったからこの世界に引きこもったァ。んで、この肉体を操る存在が必要だったんで、さっきまで図々しく説明していたあいつを創り、あいつに任せた」


「それは逆だろ。」


「なにを証拠に言うよ」


「俺は子供の頃の記憶を持っていない。それはアイツが持っているからだ。あいつだけの記憶だから持っているんだ」


「違うゥ。テメェはあいつに押し付けたんだ。その記憶を、この身体をォ!そして晴れてテメェは真っ白の状態だァ・・・後はこの世界で何もかもやりたい放題だ」


なに言ってるんだコイツは


「・・・意味が解らない。なら何故俺は海や耕哉、ソヴィ達と知り合えたんだ?俺がここに居るってことは会える訳がねえだろ。お前、さっきから矛盾しているぞ」


「・・・・アア、アアなるほどなるほど。お前、自分の記憶も弄ったな?」


「・・・・・・?」


弄った?記憶を?


「いいか?理屈はこうだ。テメェは引きこもり、ニセモノを創った。そしてお前は妄想していたんだよ。今まで、10年間、ずっとなぁ!ソヴィ?海?耕哉?アア確かに存在するよ、現実に。だけどなァ!それを経験していたのはテメェが創ったニセモノだ!お前はニセモノを通して妄想していたに過ぎねェんだよ!いい加減気づこうぜ。何が真実で、何が嘘かをよォ」


・・・つまりあれか?


引きこもっていたのは俺で、現実ではあいつが身体を操っていた。そして俺の今までの記憶は全てあいつを通して改竄し、弄った妄想その物だった、と。


「この世界は妄想を具現化する。当たり前だ、なんせテメェが創ったテメェのための世界だ。そしてテメェはニセモノを通して妄想の材料をかき集め、この世界でそれを再現した。テメェはずっと殻に篭ってたんだよォ」


「・・・違う。これは俺が経験してきた記憶だッ!俺がこの身で、この目で見てきた記憶だ!」


味わってきた現実を、否定させるわけには・・・・


「いいやァ?それも全て、何もかも、この世界で創られた妄想なんだよォ!」


ーーーーーー・・・・ッ!!


「ならお前たちは一体なんなんだ!?何で存在している?」


「俺達は女一人助けることが出来なかったテメェ自身の感情そのものだ。あの時抱いたテメェの思い、悲しみ、苦しみ、嘆き、痛み・・・、憎しみ、怒り、復讐。そして殺意だァ!」


「・・・お前たちは俺を襲っていた。今まで、ずっとだ。その理由はなんだ!?」


「女一人救えなかった自分への罰であり贖いだよォ!そうやって自傷行為して償っているつもりなってたんだよ、お前はァ!」


アッハハハハハハハハハハハ!!!


笑う、嗤う、哂う


嘲笑う、大いに笑う、歓喜しながら笑う


全てが俺を笑っている。馬鹿だと、無知だと、腰抜けだと


もし、コイツらの言ってることが本当なら・・・


「・・・だが、この世界にいるミーシェはどう説明する!?」


「ちっと考えれば解ることを・・・ンなのテメェが寂しかったんだろ?大切で好きで恋してた人間が居なくなって寂しかった。だからこの世界を創り、逃げ、そしてその女を創造したァ」


「ならあいつの言っていたことはッ!?」


「ぜーんぶ嘘だよォ!何せ全部無理やり押し付けられて現実で頑張って生きていたんだ。そりゃストレスも溜まって逃げたくなるよなァ・・・。だからなんとしてでもお前を、本来の人格を表に出して、自分は消えたかった。そういうことだァ」


「・・・・・・」


頭が、理解が追いつかない


「だったら・・・お前たちは一体何がしたい?そんな真実を教えて、何がしたいんだ」


「あのままだったらテメェは表に出ることになっていただろう。うまく言い包められてな・・・。それじゃァこっちとしては都合が悪いんだよ。創造者であるお前がここから消えたら、この世界は崩壊する。それは有川湊の心そのものが消えてなくなるって事、つまり「有川湊」そのものの死を意味する。俺も含め、お前も、お前が作り出したニセモノも死ぬんだよッ!・・・最もォ?ニセモノはそれを望んでいるっぽいけどなァ」


死ぬ


俺が、現実に戻ったら、何もかも消えてなくなる


何もかも、全て、有川湊は終わりを告げる


こいつはそう言っている


「・・・・残酷な、真実だな」


「そう、現実でも精神世界ここでもどこだって残酷だァ。何が正しいのかよく考えろよ?今の有川湊は、この世界があるから生きているってことは頭に入れてなァ」


・・・確かに、こいつの言っていることは道理が通ってる


横暴な箇所もあったが、ここでは理屈が存在しない。だからその横暴な理屈も、本来なら間違っている理屈すらも正しくなってしまう


何が正しいのかが、解らなくなるほどに


・・・・何が、正しかったのか


・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・


・・・・・・


・・・




「ーーーーーーーーーー・・・・・ミーシェッ!!」


「やってるわ!・・・だけど、彼はアイツらの根元の部分にまで連れ去られてるっ!」


飲み込まれた


あいつらに、彼が飲み込まれた!


失念していた。これを狙っていたのかあいつら


今の彼をあいつらが完全に取り込んだら・・・・


「ーーーー・・・・ッ!どうすれば助けられるんだ!?」


「・・・・ここまで来たら、全て彼次第だわ。私達の出る幕は無い。例え貴方が■■■■■でも、どうすることも出来ない」


「ーーー・・・・畜生ッ!」


何も出来ない。何もすることが無い


最後まで、なんて惨めな存在なんだろうか、僕は!


なんて、無力なんだ・・・


「嘆くのはまだ早いと思うわよ」


「・・・それは、どういうーーーーーーーーー」


「だって、彼強いじゃない。いつだってどんな時だって、彼は強いわ。それは貴方が一番よく知っていると思うけど」


「・・・・・・・・そう、だな」


「ええ、だから信じましょう。彼が自力で帰ってくるのを。私達はそれを想定して今は動くとしましょう」


「ああ、その通りだ」


情けないけど、情けないままだけど


僕は君が戻ってくるのを信じる


どんな地獄にも生きて帰ってき君だから、信じられる


だからお願いだ


どうか・・・どうかあいつらに取り込まれないでくれ。湊・・・・ッ!!








・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・


・・・・


「さァーて、そろそろ決まったかナァ?ここでは確かに時間という概念は存在しねェが、ここまで待たせられると流石に飽きてくるぜ」


「・・・・ああ、決まった。いや、元々最初から決まっているよ。お前らと言葉を交わしたときから」


そうだ、ここに着てからもう答えなど出ている


「へェ、だったら聞かせてみろよ。表に出て死ぬのか、それともここで暮らして妄想に励みながら生きるのかをよォ」


「ーーーーー・・・・・俺は、生きる。死ぬのなんて御免だ」


「・・・・クハ、クッハハハハハハハ!!だよなァッ!!死ぬのは怖いもんなァ!アァ、安心しろ。誰もテメェの邪魔なんかさせねェ。俺達がお前を守り続けてやるよ。ニセモノはせいぜいこの身が朽ちるまで働いてもらうさ」


「そうだな、その方が安全か。」


そう、俺は生きる


死ぬのが怖いから


ミーシェのように死ぬのが怖いから


俺は生きなければいけない


例えどんな姿になっても、どんな辱めを受けても


この身が果てないように生きなければならない


人型の畸形が歩み寄る


俺もそれに順じて歩み寄る


そうすると畸形が手を差し伸べる


笑いながら、虚空の目で、差し伸べる


この手を取れば死ぬことは無い


この身体は自然の摂理による寿命を迎える


それで幕を閉じる


それが、人間なのだから。感情はその一部でしかない


・・・そう、一部でしかないんだ


「さァ、護っていこうぜ。この身体を、そしてお前の妄想せかいをォ!」


「・・・ああ、護るさ」


そう、護る


差し伸べさらえたその手を握ろうと右手を前に出す


そしてーーーーーーーーー


「・・・だから、もうこの茶番劇をオワリにしよう」


「------・・・・ナッ!?」


俺はその差し出された手に触れず、そのまま奴の首を握り掴む


思い切り、力強く、容赦なく、握りつぶさないよう加減しながら


「テッ・・・メェ!。ナニヲ・・・・ッ!!」


「不思議か?いや、そうでもないだろう。何せこんなことされる覚えがあるはずだ。」


「・・・・なんの、コトを!」


「お前、嘘ついてるだろ?さっきからずっと。まったく・・・演技するのも大変だったぜ」


「ーーーーー・・・・・ッ!!」


そう、全部嘘だ


何もかも、コイツの言ったことをは最初から全て嘘


「何で解ったのかって?理由はいくつかあるが、一番有力だったのが・・・。畸形だよ」


「それは、オレタチのコと・・・」


「俺も最初はそう思っていた。生まれた時からずっとそう思っていた・・・。だがそうじゃないと確信できたのはお前のおかげだぜ?だからありがとよ。俺の成長のエサになってくれて」


「・・・どウいう」


「俺はずっとお前たちを見てきた。ここでも、現実に生まれてくる前でも、ずっとな。なんせ俺はお前たちと同じだからだ。だから俺はこの身体の主になった時も、現実でお前たちが視えていた」


そう、最初はそうだった。なんて地獄だろうと思った


「けどな、俺はお前たちを視過ぎたんだよ。長い間視過ぎて・・・・俺は他人の畸形すら視得る様になっていたんだ」


「ーーー・・・ナッ!そンなことが・・・ッ」


「俺も半信半疑だったさ。だけどそう思うと納得できるところが幾つもあんだよ。」


そう、俺が嘘を見抜けるのもそのおかげだ


他人の畸形、つまり他人の感情が直感で解ってたんだ


だから嘘を見抜けるし相手がどう思っているのかも察し出来る


何せ、他人の畸形かんじょういつも視ていたのだから


それがなにを意味するのかぐらい解る


「・・・ッ、だがそれが俺の言ってることが嘘かどうかなんて」


「解るさ。その理由は3つある。一つ、これは他人を視て来なければ解る筈もない存在だ。故に俺は外の世界で暮らしていた。だから他人の嘘が、感情が見抜ける。そして2つ目、その存在はお前達とは違う形、色、声、気配をしている。それなのに何故お前達と話している時その存在がお前達と一緒になって視える?決まっている。お前達が嘘をついているからだ。そして最後の3つ目、これがお前達の唯一の敗因・・・」


有川湊という本来の人格がこの身体の芯の部分にまで植えつけた負の感情。それが畸形


そして俺は有川湊の思想から生まれたニセモノ。故にその感情を視てきたし理解も出来る


それが次第に視ていくうちに他人の感情すら理解できるようになってしまった


だから視える。解る。他人の考えが、思想が、虚飾か、思いが


だがこの存在はこの身体に植えつけられている畸形かんじょうとは違うものだ


違うものだがこの身体の感情以外のそれは似たり寄ったりしていた


それが、思うに一般的な感情なんだろう


俺が特質だった。この身体が異質だった。この二つが合わさったからこそ他人の感情が解る様になった


・・・だが、アイツは違った。俺の周りで唯一この身体の畸形と似ている人間が居た


それが、ソヴィトヴィーニアだ。だから俺はソヴィを有川家に迎え入れた。俺と似ているから、俺と同じに思えたから


だが他人と同じなどあるはずもない。境遇は似ているし、その考え方も似ていたが、結局人格が一緒って訳じゃない。それもそうだ。


なんせ俺は人の子として生まれていなんだから。


俺はあくまで一部であり、ニセモノであった


それに比べてソヴィは紛れも無く人の子として母親から生まれた存在だ。そんな存在と俺が一緒な訳がなかったんだ


それに、他人と一緒だなんて吐き気がする


・・・そう、他人


他人なんだよ。他人だけなんだよ。その存在が、お前達とは違う畸形が視える相手は


なのに、お前達畸形にもそれが視えた


つまりーーーーー


「・・・お前達の敗因は、その姿になったからだ。進化してしまったから、お前達は俺と同じ段階、つまり人間に近しい存在になってしまったんだ。だから俺はお前達から別の畸形を読み取れた。お前達が嘘をついていると解った・・・。俺と対話するなら、以前のような形で話しかけ、説得すべきだったなぁ?」


「ーーー・・・・クッソガッ!!」


「さあ・・・もう、終わらせようか」


この悪夢を


この世界を


夢は終わる。そして目覚める


だけど、切り離されても繋がっている。


なんせ俺もお前も、有川湊なんだからな


お前たちがいたから、最悪の状態にならずに済んだ


だから、ここからは俺が引き継ごう


お前たちの、有川湊の負の感情を


お前たちがいたことをなかったことにしないために


俺とお前達は同じだったことを忘れないために


俺は一生畸形おまえを見続けよう


だから、お前たちはもう戻れ


本来の場所へ


帰る場所へ




「・・・元いた場所に帰れッ!アリカワミナトッ!!」




掴んでいた喉を、全力で握り潰す


その瞬間、畸形たちは姿を霧のように消し


この世界は一瞬で、ガラスのように崩壊した


「・・・憎んだり、悲しんだり、苦しんだりするのは疲れるだろ?・・・だから、もう休め。後のことは任せておけよ」


虚空に呟く


誰もいないと解っていても


ここに俺と同じ存在を忘れてはいけないように、この目にしっかり焼き付ける


すると・・・・





ーーーーー・・・・・なら、やってみろよ。見届けてやる





・・・それは空耳か、はたまた幻聴か


ああ、安心しろ。どちらにせよ俺の意志は変わらない


「俺は、もう人間だからな」


さあ、あいつの真実を聞こうじゃないか


あいつの意志を継ぐために





泡沫に消え逝くこの世界


そして、永久的に構築され続ける無間地獄は終焉を迎えた


終焉の先に待っているのは本物の存在


さあ、アイツの最後の言葉を聴きに行こう


二度と忘れないために、そして、間違えないために


有川湊が、生きていくために

辻褄あわせ苦戦しました

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