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『船長の勝手に主張コーナー』 第一回「これでも幸せな俺」

男の中には結婚なんて人生の墓場だなんて言う奴がいるが、俺にとって結婚は楽園パラダイスだ。天国だ。彼女のいない世界なんてもう考えられない。


彼女は俺の人生の羅針盤。彼女は俺の魂の操舵手だ。

彼女を地獄の果てまで追い掛けるほど愛してる。ああ狂うほど彼女が欲しい。


そう、彼女の為なら全世界の海を制覇しても構わない。


こう言うと彼女はとてもウザそうに俺を見て、


「そんな面倒な事しなくても離婚届けにサインしてくれたらそれでいいから。あ、子供達の親権はあたしでお願い。」


なんて言うんだ。

そして通算318枚目の忌々しい離婚届を置いていく。俺はそれを目茶目茶細かく破く。


正直心が折れそうなくらい傷つく。視界がぼやけるほど涙腺も緩む。彼女の前では情けないほど弱い俺。そんな俺を見て手下達の泣く声が聞こえるがそれすらどうでもいい。






俺の名前はザイオン・セド。世界最強 (らしい)の海賊団を率いている、船長だ。

聞いてくれ、今日は俺の生涯唯一愛した女との晴れやかで甘い結婚式に・・・・なるはずだった。


ザシュ!


今、俺の側頭部すぐ横を弾丸が飛び、当たった教会の椅子が砕け散った。


「神父さん、早く式を進めてくれ。出ないと早々と神の元に召されちまうぞ。」


俺が言ってやると神父はさっきまで渋っていた原因、意識喪失しているコーラをチラリと見てからため息をつき漸く口を開いた。


「オホン・・・ここに集いし」

「省略省略!」

「・・・この2人の結婚に異議を申し立」

「ないないない!」

「はぁ・・・新郎ザイオン・セドよ。汝、コーラ・ブレイブを妻とし」

「誓う!!!」

「・・・・・・・新婦コーラ・ブレイブよ。汝、」

「誓いまぁす。」


ヤイチが気持の悪い裏声で答えた。殴りつけたい程腹が立ったがコーラの意識がないので仕方ない。

神父が額を覆って「神よお許し下さい・・」とか何とか嘆く声が聞こえる。俺も嘆きたい。どうしてこうなった!?俺がナンカしたか?神さんよ!?・・・・・・・したな。・・・・・・・たくさん。

・・・・・・ま、いい。要は結果だ!!


「・・・では指輪の交換を。」


よし!指輪だ!死んだ親父から貰った先祖代々受け継いできた指輪が確かそこに・・・


ドガーン!バラバラバラ・・・


アレッ!?


「船長!指輪が吹っ飛びました!欠片も残っちゃいません!」

「・・・・・やったのはどいつだ。」

龍冴りゅうごの野郎です!」

「カシラ!そんな事より代わりを立てないと!」


代わりってお前・・・先祖代々のだぞ それをお前、おっ!そうだ!

俺は自分の髪の毛を一本抜いた。コーラのほっそりした指にそれを巻く。そして慎重に慎重にコーラから髪の毛を一本だけ抜き、俺の薬指に巻きつけた。コーラの指に俺の暗い色の金髪が、俺の指にコーラの赤褐色の髪が・・・なんか指輪よりいい感じだ。

2人の指に巻かれた誓いの印に俺の胸を信じられない程の喜びが溢れる。


「それでは誓いのキスを。」


コーラ・・・こんな形の式にしてしまってすまない・・・邪魔をした奴らは後で全員相応の報いを受けさせてやるからな。

俺は時間を掛けてコーラの唇を味わった。

ここだけは外せない。


「船長!船長!ここもマジヤバいッス!早く反撃するか逃げねぇと!」


手下の悲痛な声に、俺は渋々コーラの柔らかくて蕩けそうな唇から口を離した。


「ライガッツ、お前は神父さんを上手く逃がしてやれ。おっと神父さん、この婚姻届にサインだ。よし。・・・行くぞお前等!!邪魔者を蹴散らせ!!」


ウオオォオオォオオ!!!


飛び交う銃弾や爆撃の中、俺はコーラを抱きかかえると祭壇の下から飛び出した。


当然だがいつものように奴らをコテンパンに伸して無事船に戻った俺達。

手下達はやっと結婚までこぎつけた俺とコーラを祝って船に積んである酒全部飲み干すまで騒いだ。


俺はというと意識は戻ったが体がうまく動かないコーラを朝まで寝かさなかった。

・・・・・いや、初夜だし・・・・そ、それに随分我慢していたんだ!!

ジョーガンが産まれてから産褥期だから半年はデキないと言われ、(すぐ嘘だとわかった)盗む様にするキスとたまに許してくれる愛撫だけ。欲求不満で死ぬかと思った。

でも我慢した甲斐があった。コーラはあの夜の様に俺に可愛らしく応えてくれたからだ。

ああ・・・忘れられない愛の思い出がまた一つ増えた・・・。

俺は何て幸せな男だ。


明くる日、昼に起きた彼女にそこら辺に落ちていた酒瓶で思いきり殴られたが。


殴られた俺は昨日の事で怒鳴る彼女を見て、取りあえず割れた瓶を彼女の手から取り上げた。危ないからな。ちなみに殴られた頭は何ともない。ちょっと痛いかな?という程度だ。


「今すぐ離婚して!」


うっ・・・こっちの方がよっぽど・・・


「い、嫌だ。」

「嫌だぁ!?ふざけんな!!あたしが何であんな行動に出たと思ってんの!?あんたと結婚したくないからに決まってんじゃない!」


うう・・・ヒドイ・・・早くも涙が俺の頬を伝ってる。


「で、でも、ジョーガンの父親は俺だ。お前はジョーに家族を与えたくないのか?」

「家族?年中ワケのわからないバカな連中とこれまたバカな戦闘ゴッコしてる海賊と家族?海賊船が子供を育てるのに適していると思ってんの!?・・・話にならないわ。ジョーはあたし一人で育てる。あ・ん・た・なんかいらない。」


彼女は涙と鼻水でぐちゃぐちゃな俺に背を向けて去っていく。


「コーラ!」


何とか引き止めようとするが掠れた声で名前を呼ぶのがやっとだ。


「うるさい!いちいち泣くんじゃないわよ!今後一切あたしの視界に入んな!!」


彼女は怒号で俺に止めを刺すとジョーの部屋に向かった。

歩くたんびに揺れる、昨夜散々撫でまわした尻を泣きながら見ていると酒瓶が飛んできて顔面に当たった。・・・・・ナイスコントロール。


「どこ見てんのよ!この色ボケ野獣!!」


シクシクシクシクシク・・・・・・


「船長・・・・」

「・・・・頭。」


それまで遠巻きにコーラとのやり取りを見ていた手下達がワラワラ集まって来た。


「しっかりして下せぇ、カシラ。」

「そうですよ。船長の純な想いにいつかはきっと姐・・・いやコーラさん(以前コーラに手下達が「姐御!」「姐さん!」と呼びかけたらもう少しで船を沈められそうになり、それからはさん付けで許して貰った)も絆される日が来ますって!」

「頭!諦めちゃ駄目ですよ!」

「船長頑張って!」

「お頭ファイト!」


手下達が口々に俺を慰める。正直ムキムキに鍛えられた屈強な体と凶悪な面構えのコイツ等に慰められる俺の図は気持ち悪いモンがあると思うが俺は素直に嬉しい。


「・・・そうだな。こんなの何時もの事だしな。・・・よぉおおし!」


俺は涙と鼻水を拭う雄々しく立ち上がった。

手下達から拍手と声援が送られる。


「まずはコーラに謝ってくる!」


ワアッ!


ますます盛大になる筋肉しかない男達の力一杯の拍手と吠えるような野太い声援。


フッ・・・コーラ、今いく


「うるっさぁあああぁいいぃ!!!いい加減にしないともう一回沈めるぞテメエ等!!!」


バターン!!とジョーの部屋のドアが開きコーラが血走った目で鬼の様に怒鳴った。こっ怖い・・・・


”ス、スイマセン・・・・・・”


当然、俺達は土下座で謝った。本当にやるからな、コーラは。






そんなこんなで今がある。

今日の仕事が終わった俺はコーラがいるジョーの部屋までダッシュで駆けつける。

ガチャガチャガチャ!!

・・・・・・今夜も鍵が二重三重に掛っているようだ。いや、コーラの事だからトラップもいくつか仕掛けてあるかもしれない。・・・・な、泣かないぞ!いつもの事だからな!・・・・・グスッ!同情なんかいらねぇえよ!

諦めて俺は部屋の扉にへばりつきコーラが出てくるのを待った。

中からジョーを寝かしつけるコーラの優しい声が聞こえる。俺には滅多に掛けられないコーラの優しい声・・・ああ・・・ジョーが羨ましいっ・・・・もの凄く羨ましい!もう船長の座をやってもいいからその声で俺を呼んで欲しいほど羨ましい!


でも・・・いい。

こうして彼女が側に居てくれれば。

俺の子供を抱き幸せそうに微笑んでいる彼女を見ているだけで舞い上がるほどの幸せを感じるんだ。

怒鳴られ、俺が泣き、散々謝って漸く抱きしめる事を許してもらう。抱き抱えたコーラの腕の中、ジョーが俺達を見て少し笑う。幸せだ。ここに俺のホームがある。やっと手に入れた。もう離さない。絶対に。


その後、うっかり尻か胸を撫で上げ、近くにあった角材で殴られるのも・・・・俺達の日常だ。


何とも幸せな日常。

連載じゃないし!違うから!諸君の感想が嬉しかったからじゃないんだから!期待に応えたかったからじゃないんだからね!か、勘違いしないでよ!ふんっ!


すいませんっ!!タコ殴りでお願いします!!!

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