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星追いの少女、世界を旅して無双する  作者: 宵月
冒険者ギルドとベテラン
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第三十七話 新たな旅立ち


宵月「今回は、グランベルの街を出発します!」


リリア「次の街には何があるのかな?」


宵月「その前に、街の美味しいものを食べ歩きましょう!」


リリア「わぁ! 楽しみ!」


宵月「そして、思わぬ再会も…?


リリア「誰だろう?」


宵月「それでは、第37話をどうぞ!」



 翌朝。


 グランベルの街は、いつもと変わらない賑わいに包まれていた。


 冒険者ギルドでは、リリアとアリシアが旅支度について話し合っている。


「そろそろ、この街を出ようと思うんだ」


「そうですね。依頼もひと段落しましたし、次の街を目指すには良い頃合いかと」


 リリアの服の襟元が、もぞもぞと動いた。


 そこから、小さな透明の水滴のような姿が顔を出す。


「フィーネも一緒に行こうね!」


 リリアが指先を差し出すと、フィーネは嬉しそうにぷるんと跳ねた。


「ふふっ。楽しみだね」


「……リリア様。出発前に、もう一つ確認しておくことがあります」


「なに?」


「グレイヴ殿のことです」


 リリアは少しだけ考え込む。


「うーん……まだ返事はもらえてないね」


「昨日の様子では、すぐに気持ちを変えることは難しそうでした」


「そっか……」


 リリアは少し残念そうにしたが、すぐに顔を上げた。


「でも、また誘ってみるよ!」


「ふふっ。そうですね」


 そのとき、背後から声がかかった。


「おい」


 二人が振り返る。


 そこに立っていたのは、グレイヴだった。


「グレイヴさん!」


「朝から元気だな、お前は」


「えへへ。グレイヴさんもおはよう!」


「おう」


 グレイヴは二人の前まで歩いてくると、少しだけ視線を逸らした。


「……お前ら、今日この街を出るんだろ」


「うん。そのつもりだよ」


「そうか」


 短い沈黙。


 そして、グレイヴは頭を掻いた。


「……俺も同行してやる」


「えっ?」


 リリアの目がぱっと輝く。


「本当!?」


「勘違いするなよ。 しかも依頼も難しくなるからな」


「うん! それでも嬉しい!」


「まったく……」


 グレイヴは呆れたように息を吐いた。


 アリシアは静かに頭を下げる。


「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」


「礼なんかいらねぇよ。俺が勝手に決めただけだ」


 リリアは満面の笑みを浮かべていた。


 グレイヴはその顔を見て、ほんの少しだけ目を細める。


「……ただし、無茶はするな。危険な依頼を見つけても、勝手に突っ込むんじゃねぇぞ」


「はーい!」


「本当に分かってるのか……?」


 こうして、グレイヴは二人に同行することになった。


     ◇


「ところで、出発はいつだ?」


「今日だよ!」


「今日!?」


「うん! だから、その前に街を見て回りたいなって!」


 リリアはギルドの外を指さした。


「せっかくこの街に来たんだもん。美味しいものも食べたいし!」


「……そういうことか」


「グレイヴさんも一緒に行こう!」


「俺は別に……」


「行きましょう、グレイヴ殿」


「お前まで……」


 結局、グレイヴも一緒に街を回ることになった。


 まず向かったのは、通りに並ぶ屋台だった。


「わぁ……!」


 焼きたての香ばしい匂いが漂ってくる。


 串に刺さった肉が、炭火の上でじゅうじゅうと音を立てていた。


「おじさん、それ一つください!」


「おう! 焼きたてだぞ!」


 受け取った串焼きに、リリアは目を輝かせる。


「いただきます!」


 一口かじると、肉汁が口の中に広がった。


「ん〜! 美味しい!」


「それはよかったですね」


 アリシアも串焼きを受け取り、一口食べる。


「確かに、美味しいですね」


「だろ? この辺りじゃ有名な店だ」


 グレイヴも串焼きを頬張る。


 そのとき、リリアの襟元からフィーネがひょこりと顔を出した。


「フィーネも食べたいの?」


 ぷるん。


 フィーネは串焼きに近づき、小さな体で肉に触れる。


 すると、肉の一部が水の体に包まれ、ゆっくりと吸収されていった。


「わぁ、食べてる!」


「正確には、体に取り込んでいるのでしょうね」


 アリシアが微笑む。


 フィーネは残った肉にも興味を示し、リリアの肩の上でぷるぷると揺れた。


「ふふっ。そんなに気に入ったんだね」


「精霊が食べ物を取り込む姿は、なかなか見られませんね」


「そうなの?」


「ええ。人前に姿を見せる精霊自体が珍しいですから」


 グレイヴは肩に乗った小さな水の塊を眺める。


「……そいつ、いつもそこにいるのか?」


「うん! フィーネだよ!」


「名前まで付けたのか」


 フィーネは名前を呼ばれたのが嬉しいのか、リリアの肩の上で一度跳ねた。


「まあ、懐いてるみたいだな」


「うん!」


 その後も、リリアたちは焼き菓子や果物、温かいスープなどを楽しんだ。


 フィーネも気に入った食べ物を見つけるたびに、リリアの服から顔を出しては体で包み込んで吸収していた。


 その様子を見た屋台の店主たちは、珍しそうに目を丸くしていた。


「いやあ、精霊を見るのは初めてだな」


「可愛らしいですね」


「えへへ。フィーネは可愛いんだよ!」


 リリアがそう言うと、フィーネは誇らしげにぷるんと揺れた。


     ◇


 街の中央通りを歩いていると、前方から数人の護衛を連れた男がやってきた。


 立派な服装に、整えられた髪。


 その男は、リリアたちの姿を見た瞬間に足を止めた。


「……っ!?」


 顔色がみるみる青ざめていく。


「お、お前は……!」


「あれ?」


 リリアは首を傾げた。


「あっ! レオニスさん!」


 かつて決闘を申し込んできた貴族、レオニスだった。


 彼はリリアの笑顔を見て、思わず一歩後ずさる。


「な、なぜお前がここに……!」


「え? 旅の準備をしてるんだよ?」


「た、旅……?」


 レオニスの視線が、リリアの腰にある剣へ向く。


 そして、あの日のことを思い出した。


 圧倒的な魔力。


 自分の魔法を容易く打ち破った少女。


 最後には、剣を首元へ突きつけられた。


「ひっ……!」


「レオニスさん?」


「な、何でもない!」


 彼は慌てて姿勢を正した。


 護衛たちは、主人の様子を不思議そうに見ている。


「そ、それよりもだ!」


 レオニスは咳払いを一つした。


「先日の決闘では……その、こちらにも非があった。無礼な言動については謝罪する」


「えっ?」


「お前たちの実力を見誤っていた。あのような態度を取ったこと、申し訳なかった」


 以前とは違い、彼は深く頭を下げた。


 リリアは少し驚いた後、にこりと笑う。


「うん。もう気にしてないよ!」


「そ、そうか……」


 レオニスはほっとしたように息を吐いた。


 しかし、すぐに何かを思い出したように懐から小さな袋を取り出す。


「これは、せめてもの詫びだ。旅の路銀にでも使ってくれ」


「えっ、いいの?」


「ああ。受け取ってくれ」


 袋の中には、金貨が数枚入っていた。


「こんなにたくさん……!」


「先日の件で迷惑をかけた。その埋め合わせだと思ってくれ」


「ありがとう! 大切に使うね!」


 リリアが笑顔で受け取ると、レオニスは少しだけ肩の力を抜いた。


 だが、彼女の肩に乗っている小さな水の精霊に気づき、また目を丸くする。


「……そ、それは?」


「フィーネだよ。水の精霊なの!」


 フィーネはレオニスを見て、ぷるんと揺れた。


「そ、そうか……」


 レオニスは何とも言えない顔をした。


 以前なら、精霊を連れている少女など信じられなかっただろう。


 だが、目の前の少女なら何があっても不思議ではない。


「……旅の無事を祈っている」


「うん! レオニスさんも元気でね!」


「あ、ああ……」


 リリアたちが歩き出すと、レオニスはその背中を見送った。


 そして、姿が見えなくなったところで、ようやく大きく息を吐く。


「……生きた心地がしなかった」


 護衛たちは、主人の言葉に首を傾げるのだった。


     ◇


 やがて、街の門が見えてきた。


 門番に出発を告げ、リリアたちは街の外へと歩き出す。


 背後には、これまで過ごしたグランベルの街並み。


 前方には、まだ見ぬ道と景色が広がっていた。


「ここから、また新しい旅だね!」


「ああ。そうだな」


 グレイヴが隣を歩く。


 アリシアはリリアの少し後ろに位置し、周囲を見渡していた。


 フィーネはリリアの肩の上で、風に揺れるようにぷるぷると体を動かしている。


「次の街には、どんな美味しいものがあるかな?」


「まずは依頼を探すことを考えろ」


「えー、でも美味しいものも大事だよ!」


「……ったく」


 グレイヴは呆れたように息を吐いた。


 それでも、その口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。


 こうして、リリアとアリシア、そしてグレイヴ。


 そして小さな水の精霊フィーネを連れた一行は、グランベルの街を後にした。


 彼女たちの旅は、まだ始まったばかりだった。



レオニス「……あの少女、いったい何者なのだ」


護衛「レオニス様、先ほどの方とはお知り合いで?」


レオニス「知り合いというか……決闘をした相手だ」


護衛「それはまた……」


レオニス「二度と敵には回したくない。絶対にだ」


護衛「そこまでなのですか?」


レオニス「お前はあの魔力を感じなかったのか!? 思い出しただけで背筋が凍る……!」


護衛「ですが、最後は笑顔で手を振っていましたよ」


レオニス「それが余計に恐ろしいのだ! あの力で、あの無邪気さだぞ!?」


護衛「……なるほど」


レオニス「せめて、あの旅が無事であることを祈ろう……」


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