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レーア・エルゼ  作者: ゆきや
第1章 旅立ち
8/14

8.

「行ったぞ」

「そう」

「……」

「ハンマーは持っていったかい?」

「ああ」

「わたしている鉱石には限りがあるから、足りなくなったら自分で集めないといけない。鉱石を砕くにはハンマーが必要だからねえ」

「……そのためにハンマーの使い方を教えてたわけじゃねえよ」

「瓦礫を砕く仕事でも、レーア・エルツを集めるにも重宝するからいいじゃないか」

「わけの分からねえ絵かきになるよか、解体屋の方がよっぽど金になる」

「はっ、はっ、はっ。そのとおりだねえ」


老人は真っ白いキャンパスに向かって、ライムから映し出した緑の鉱石を動かす。


「でもいつか、ウィルバーくんが色を求めて旅立つこと、わかっていたんじゃないのかい?」

「……」

「だから、どちらにでも通ずるハンマーの使い方を教えた」

「はんっ、勝手に言ってろ」


じわじわと白いキャンパスが緑に染まっていく。


「やっぱり、わけが分からねえ」

「この街の人たちは外の世界を見ない。だから描く意味も描かれる価値もわからない」

「わからなくて結構だね」

「もったいない。この世界はいろんな色にあふれているのに」


老人が顔を上げるのと、つられるように親方も顔を上げ、部屋に飾ってある色とりどりの絵画を見渡す。


「こんな、どこの世界のなにかもわからねえ絵なんぞに金なんか払えるか」

「外の世界を見てくればわかるよ。そうだ、ウィルバーくんと一緒に行けば……」

「俺は! あんたっていう飄々と旅に出ちまう親が居たせいで、外の世界なんかまっぴらごめんだね」

「……」

「俺は堅実に生きるんだ」

「そうだね」


老人は優しく微笑んで、再びキャンパスに、ウィルバーがこれから行くであろう北の街の風景を描きはじめた。

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