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きゅうけいさんは新しい呼び名も当然気に入る

 浮かない顔をしつつも、無事戻ってきたシルヴィアちゃんとエッダちゃんに安堵する。正直、ユルトの街の情報があまりに少ない上、とても友好的とは言えない内容ばかりだったため、ここで相手側がどう出るのか全く読めなかったのだ。

 もしもサキュバスの仲間だと思われたら……。いや、思われたらっていうか事実なのだった。サキュバスの仲間と知られたら間違いなくトラブルになる。


「二人とも、無事でよかったよ〜」


 まずは一言。すると……今度はエッダちゃんの顔が曇った。ま……まさか……!


「エッダちゃん、何かされたの!? エッダちゃんになにかしてしまうような村は……」

「―――ふぇえっ!? さ、されてないです! 何か! 特に私は何も被害にあってないです落ち着いてくださいぃ!」


 な、何もされてなかった……よかった。……じゃあ、さっきの一言に対して、何で浮かない顔をしていたんだろう。


「あ……顔を見て察しちゃいましたよね……。ええと、無事といえば無事なのですが……」


 エッダちゃんが語る経緯いきさつはこうだ。

 まず門番さんにリックさんが話をつけて、シルヴィアちゃんとエッダちゃんが村に入った。その後、実際にサキュバスが囚われているところに長同士が話し合って実際にサキュバスが捕まっているところを遠目限定で見せてもらって、街の中心まで戻ってきた。

 一通り三人で確認すると、最近の街の詳しい状況を聞こうということで、三人で時間を指定して、情報収集のためにそれぞれ単独行動をしたということらしい。


「そして私は……サキュバスの名前を迂闊に出してしまいまして……それで……」

「そ、それで……」

「確かに……暴走、しました」


 暴走。単語を聞くだけだと、よくわからない表現だ。ちょっと聞くのが怖いけど……しかし聞かないと始まらない。


「具体的には……どんなものだったでしょうか……」

「……私が話をしたのがユルトの街の奥にいた獣人の女性だったんですが……そ……その……ほんわかしたというか、おっとりした優しそうな方で……ママみたいな雰囲気の獣人だったんですが……」

「…………」

「私がサキュバスと言った途端に、『今、サキュバスと言った』ってつぶやいたと思うと……急に眉間にシワを寄せて、『言ったな!』って叫びながら殴りかかってきて……私、怖くてぇ……!」


 ひええええ……!

 エッダちゃんが青い顔をしながら涙目で震えているけど、私も聞きながら青い顔をして震えている。といっても元から青い顔だけどね!

 いやそんな冗談なんて言ってられない。なんだそれは、サキュバスにどんだけ恨みがあるのユルトの街の女性。完全に暴走してるじゃないの。


 私がエッダちゃんからの話に戦慄していると、シルヴィアちゃんが話を引き継いだ。


「サキュバス自体は食べなくても死ぬような種族ではないんですが、あの牢を管理しているのが女性だという話を聞いて、とても交渉して対処できるようなものではないなと思いました。町長様は男性の方なので、本当に見せてもらえただけでもかなり幸運だったと思うしかないですね」


 話を聞く限り、やっぱり思った以上に攻略難易度が高そうだ。とにかく話が通じないんだったらどうしようもない。無理やり牢を壊して脱出させることもできるけど……間違いなく騒動になる。それも、この村を巻き込んでの。

 関係を築いてしまった以上、とてもではないけど後のことはもう知らない、なんてことはできない。


「……すみません、きゅうけいさん。悔しいですが何も思いつきません。特にこういう場合ありがちなミスなのですが、村の外からやってきたあたしたちが、ユルトの女性たちの気持ちを理解したつもりになるのは危険だと判断します。だから……あたしはこの問題もう少し保留しておこうと思います」


 難しい……本当に難しい問題だ。シルヴィアちゃんの頭脳でも解決できないのなら、私にどうこうできるわけがない。


「わかった、シルヴィアちゃんがダメならきっと誰でも無理だよ。それより……イデアさんだね」

「そう、ですね……責任を持って今回の経緯をあたしから説明します」


 私は足取りの重いシルヴィアちゃんを見送った。


「なんだか……大変そう、ですね」

「うん、そうだね……えっと、キャシーさんのところには、もっとお邪魔になっちゃうかなと思うんだけど」

「それは構いませんというか、多分お母さんとかきゅうけいさんのこと気に入ってると思うので、しばらくいてくれた方がいいかもしれません。お父さんも受け入れるだろうし」


 そ、それは嬉しいですっ! パトリシアさんは私も母親でありながら姉っぽくもあって、素敵なお母様だなーと思っていたのでしばらくお世話にはなりたい。


「それじゃ、えっとそろそろギルドに向かいませんか?」

「あっとそうだった、素材だね。案内して」

「はい!」


 とりあえず一旦保留。私はキャシーさんと一緒にギルドに向かうのだった。


「あと」

「ん?」

「その、キャシーさんっての、なんだか他人行儀ですし、きゅうけいさんってとってもすごいし……もっと気楽でいいですよ」

「ほ、ほんと? じゃあキャシーちゃん!」

「はいっ」


 犬耳美少女キャシーさんがキャシーちゃんになりました、かわいいっ!




 村のギルドは……もちろん素敵な場所でしたっ!

 こっちもログハウスタイプだね。だけどその大きさが本当に立派。裏に解体用の建物もあるんだけど、焼却炉なのか煙突付きの、でっかくて広い倉庫みたいなの。でも丸太製。

 いやほんとこの村本気で永住決め込みたいぐらいには素敵。なんというか、スローライフ理想郷の完成形の一つだと思う。


「昨日に家に来ていたうちの一人が、ギルドマスターなんです。だからきゅうけいさんが入っても大丈夫なはずですよ」

「それは大助かり!」


 リックさん、ほんと頼りになります……! 昨日の段階でまさかそこまでいろいろと対応できていたなんて。マッチョで一人称が俺の先入観から、失礼ながら『もしや脳筋系では』とか一瞬でも思った私に小一時間説教したいね。あっやっぱり無理、説教途中でする方の私が飽きる。

 さて、安全を保証していただいたギルド内部への第一歩だ。


「おじゃましま〜す……どーもどーも……」


 中に入ると……みなさん注目。まあ見ますよね、魔族自体を初めて見る人も多いと思いますし。


「みんな、ギルドマスターから話聞いてる?」

「……あ、ああ……聞いていたけど、それが話にあった魔族なんだよな?」

「そういうこと。さっきも私のピンチを助けてくれたし、とても強いよ」


 どうしようかなと思ってたけど、キャシーちゃんがうまいこと取り持ってくれていますありがとうございます!

 キャシーちゃんは堂々とカウンターへ向かっていくので、私も慌ててついていく。……当然視線がずーっとこっちにやってきてる……ど、どーもどーも……。

 受付の人は、呆気にとられながらもお仕事をするためすばやく立ち直る。大和の人といい、やっぱり受付さんはプロだね!


「えと、キャシーさん、いつものだとすると素材買い取り、ですよね」

「そうよ。でも一人じゃできそうにないので、解体棟にギルド員全員集めてほしいかな。ギルマスもできれば、ね。後……今日はすごいんだから、みんなも見学、来たらいいよ」


 え、あの、なんかすっごく堂々としてるというか、注目集めそうな呼びかけしていただきましたが……えっと、そんなすごいことは……。


 −


「ええ〜〜〜〜〜〜っ!?」


 キャシーちゃんと一緒に解体棟なるものへ、結局みんなついてきちゃいました。まあこの状況で一人で残るとかないですよね。

 そしてキャシーちゃんにお願いされて、討伐したワイバーンを出しての一言が、さっきのです。


「うそ、これ、ワイバーンを首一撃!? すごい、お腹も羽も完全な状態、鱗や皮に傷一つさえない。頭部にもダメージがない……」

「ふふん、すごいでしょ。これがきゅうけいさんの実力よ」

「きゅうけいさんって、話には聞いていたけれどその魔族ですよね。あの、これは一体どうやって……」

「ウィンドカッターですです」

「そんな簡単な魔法でこの切断面ですか!? ……す、すごい、ですね……」


 お……おおう、ウィンドカッターってそういえば、ワイバーンを倒す時の魔法じゃなかったですね。レベル最初の方で使える魔法で、スピード感ある攻撃でちまちまダメージを与えるどちらかというと操作苦手な人やる安全な魔法だった。

 私はこう、すぱっと切れるといいなと必殺技みたいなイメージで使ったけど、確かにこんな一発切断できる魔法、ウィンドカッターじゃありえなかった。


「ほほお、これがきゅうけいさん、の実力ってわけですね」


 と、声のかかった方を見ると……お、おおう、今度はでっかい人。リックさんがイケメンマッチョだとすると、こっちはもっと横に広いマッチョさん。

 この人がギルドマスターさん。……そういえば昨日……。


「昨日は晩をいただきありがとうございました。いやあ、昨日の料理は随分とお上品でうまかった、お礼を言いそびれて申し訳ない。すっかりただの家庭的な魔族なのかと思っていたら、なるほど戦う力も十二分に強いと」

「ど、どーもどーもおそまつさまです、きゅうけいさんって呼ばれてる魔族です。強いといってもパーティみんなつっよいですから! リーダーのシルヴィアちゃんには良くしてもらってて、こうやってみなさんと会話できたり取り持ってもらえてて助かってます、はい」

「それはいいパーティですね」


 おおう、こっちのマッチョさんもなかなか丁寧な人だった。でっかい男の人はでかいだけで怖いからね、このあたりがきちんとしている人はいい人。


「解体した素材は、きゅうけいさんに渡せばいいのですか?」

「キャシーちゃんに全部あげる予定です。おうちのきもちいいベッドで眠らせてもらってるお礼なので」

「なんと……! これはまた、欲のない魔族だ。いやはや、こういう性格なら皆もすぐに受け入れてくれるでしょうね」

「もっちろんみんなそうだよね!」


 受け答えしていた言葉に、キャシーちゃんが最後乗っかった。

 見てみると、私に対してのちょっと怖いもの見たさとか、見世物小屋の謎生物見ているみたいな視線が、かなり友好的になっている気がする……!


「えへへ、よかった。私、敵だーとか思われたり、あと置いていかれたり会話に入れないとすぐしょげちゃうので」

「……しょげちゃう、ですか?」

「うん、隅っこでしゃがんで、地面にいじいじ指でぐるぐるを書くの」


 我ながら結構へこみやすい性格だと思います。生前そんなことなかったんだけど、なんだかみんな仲良しって環境がずっと続いちゃって、ちょっとハブられると思うとものすっごく悲しくなっちゃう。

 私がその行為を言うと、キャシーちゃんは「ぷふっ」と笑いだして口を押さえた。あっキャシーちゃんだけじゃなかった笑ってるの。


「す、すみません、でも、ぶはっ無理、これ無理! なんですかそれ、可愛すぎじゃないですか!」

「えへ、そうかな? こわくないよー」

「もぉ怖いなんて思ってる人いないですって! あっはははっ!」


 我慢の限界が来ちゃったキャシーちゃんが明るく大声で笑いだすと、釣られてみんな笑い出す。すっかり和気藹々な解体棟……これ、今まででもかなり受け入れられてるパターンなんじゃないでしょうか!

 私も嬉しくなって、あとちょっと恥ずかしくて頭をかきながら笑う。


 そんな笑い声ですっかりいいムードになってくれて、笑っていたら元気よく手を叩く音がぱんぱんと聞こえてきた。


「よし! それじゃあギルド員、解体だ! 残りたいやつは残っていいぜ、ああ、キャシーは残っててくれよな、ギルドとの取り分決めるから」

「オッケー。それじゃきゅうけいさん、先に戻ってていいですよ」

「わかった! ……あっ」


 私はすっかり、忘れていたものがあったのも思い出した。手持ちのアイテムボックスから、狼を十匹ぐらい出す。

 途端に静まり返る室内。


「あはは、忘れてました。こっちのオマケで倒した狼っぽいの十匹も全部キャシーちゃんの取り分で処理してください。それじゃね!」


 既に帰る気分になっていたところだったので、魔物の死骸を出すとすぐに部屋を出る。またざわざわとしていたけど、きっと解体の人員足りなくなって再編成してるんだと思う。ごめんなさい、解体はちょっとグロいのでパスで……!

 もしかしたらこういうのも、魔法でチョチョイとできるのかもなあ。


 -


 村長さんの家に戻ってくると、イデアさんとパオラさんに、ちょうどシルヴィアちゃんとエッダちゃん、あとリックさんも加わって説明がなされているところだった。


「きゅうけいさん、そちらは用事が済みましたか?」

「うん、キャシーちゃんに泊めてもらっているお礼として魔物の素材を全部渡してるけどいいよね」

「我々にとって大したことでないそれらでお礼になるのでしたら、こちらからも願ったり叶ったりですね。というか、あたしが考えておかなければならないところでしたね、ありがとうございます」

「いえいえどういたしましてー」


 いつも頭を使っているシルヴィアちゃんの負担を少しでも減らせるのなら、たまたまではあっても役に立てたという実感ができて嬉しい限りだよ。


「そっちの話は……」

「終わりました。イデアさんやリックさん達には悪いけど、少し長い目で見ての解決をしたいと思うのよね」

「いやいや、シルヴィア様。我々村の者としても、竜族の方が村に滞在してくださるというのは、今現在魔族に襲われている身としては渡りに船、助かっております。あまり気にせずいてください」

「そう言ってもらえると、こちらとしても気が楽になります、ありがとうございます」


 よかった、リックさん自身がとっても好意的だった。それに、キャシーちゃんが魔物にやられかけていた現状、安易にここを離れるわけにはいかない。

 まだ効果が残っているレーダーには、不自然に集まってきている魔物の様子はない。でも、油断しないでいこう。


「イデアさんは……」

「もともと私一人でなんとかしなければいけない場面だったもの。多少足踏みしたところで文句なんて言えないわよ。それに、こうやって受け入れてもらえる獣人の村があるって知ることができただけで全然違うもの。今の私は既に十二分に恵まれているわ」


 ……イデアさんも、方針に了承していた。

 でも……そのもどかしい感情を表す顔は誤魔化せなかった。


 そのことを察知して、シルヴィアちゃんが声をかけた。


「まだ、皆は無事です。あたしが思うにサキュバスを交渉のカードとして考えている以上、迂闊に殺すことはないと思いますから。安心してください」

「シルヴィアさん……ありがとう。……でも、どうして?」

「ん?」

「魔族と敵対する古龍のあなたが、魔王の眷属だったサキュバスをそこまで助ける義理はないはずです。でもあなたは、自分たちの旅をやめてまで私に協力している。それは何故ですか?」


 イデアさんの疑問は、確かにイデアさんの側に立ったら当然の疑問だった。

 だってシルヴィアちゃんは古竜。しかも竜族の村の村長の娘にして、魔族と敵対している存在だ。思いっきり竜族の村が襲われたことも記憶に新しい。

 果たしてシルヴィアちゃんは、どう答えるのか。さっきから一言も発していないエッダちゃんもパオラさんも、シルヴィアちゃんをじっと見ている。


「きゅうけいさんですよ」


 …………。


「えっ、私?」

「そうです」


 え…………ええええっ!? シルヴィアちゃんが積極的にイデアさんを助けている理由、私なの!? なんで、どーして!?


「きゅうけいさんがパオラと友達になった。パオラがアスモデウスに会いたいと言ったのに同意した。だから来ました」

「……それじゃ、助けるまで協力してくれるのは……?」

「きゅうけいさんが、イデアさんの友達になることを希望したからです」


 告げられたのは、まさかの理由だった。


「……それだけ?」

「それだけです。きゅうけいさんには、いろいろ助けてもらいましたし、いろいろ大事なことを教えてもらいましたから。だからあたしにとって、それ以上に重要なことなんて一つもありません」


 はっきりと宣言した。一同は呆気にとられている。あ、エッダちゃんはまるでわかっていたかのように嬉しそうだ。

 ……本当に、私がとっても素敵で美人なイデアさんを見て一目惚れしちゃって、欲望丸出しで友達になりたいと言っちゃったあの一言で、シルヴィアちゃんは古竜としての活動を全力でイデアさんを助ける方向にしちゃってるの?


 え、うそ、どうしよう嬉しい。嬉しいなんて言葉じゃ表現できないぐらい嬉しい。

 ずっともらいっぱなしなのは、お世話になっているのは私の方なのに。

 シルヴィアちゃんは、そこまで私のことを……。


「あの、えっと、シルヴィアちゃん、ありがとね! ううっ、顔が見られなくなっちゃうぐらい嬉しい、えへへへへ……」

「あたしの方こそ、ありがとうございます。きゅうけいさんの旅にお供できて広がった見識は、今までの人生のすべての時間を超えるほどの体験でした。今回も、きっとそうなる。……それに……」

「ん?」

「いえ、何でもないです。とにかく、頑張って解決して、ビーチェさんのところに戻りたいですね」

「うんうん、そだね! 会いたいなあビーチェさん!」


 ビーチェさんの名前をシルヴィアちゃんが出して、パオラさんとイデアさんの目が合う。二人にとっても、やっぱりマーメイドのビーチェさんは、二人の共通の友人なんだね。このタイプがそれぞれ違う超絶美人でグラマーな三人組が揃ったら、それはもう素敵だろう。

 筆頭眷属の中でも、人間と大きく敵対してこなかった三人。みんなと友達になれて、とっても嬉しい。だってみんな、本当に本当に素敵なのだ。


 だから……最後は絶対、笑顔で帰ろう。




「ん? どったの、なんだか静かだね」

「あっ、キャシーちゃん帰ってきたんだ」

「ですよ。そして……じゃじゃーんっ!」


 キャシーちゃんが自分でじゃじゃーんとか可愛く言いながら取り出したのは……おにく? 紛れもなく綺麗に食べる部分だけに加工されたであろうお肉だ。


「今日のきゅうけいさんからいただいた分ですけど、やっぱり全部私の金貨にしちゃうなんて申し訳ないので、今日はこれを食べましょう」

「ってことは、それって今日の」

「はい! 今日襲ってきたワイバーンの解体も終わって、胸肉、肩肉、もも肉に背肉も、他いろいろいただいてきちゃいました!」


 その宣言に、真っ先に身を乗り出したのはリックさんとパトリシアさんだった。


「待て、聞いてないぞ!」

「ワイバーン!? だ、大丈夫だったの?」

「大丈夫だからこうやって元気なんでしょ! って言いたいところだけど、正直きゅうけいさんが来てくれなかったら今頃命はなかったかな……」

「そ、そうか……きゅうけいさん、ありがとうございます。ワイバーンまで倒していただくなど、なんとお礼を言ったらいいか」

「いえいえー寝泊まりさせてもらえてるだけでじゅーぶんですから! あでもお礼してもらえるのなら……」


 私は、ここでも思いきって攻める!


「リックさんともパトリシアさんとも友達になりたいです!」


 二人は、びっくりした様子で固まると、互いに顔を見合わせて……笑顔で頷いてくれましたっ!


「はは、もちろん。二度も娘を救ってもらって、俺が断る理由なんてありませんよ」

「きゅうけいちゃんとお友達なんて、嬉しいわあ!」


 ―――!!!!?


 きゅうけいちゃん! 新しい呼び名が来ました!

 前世含めてでも、全く聞いたことのない新しい呼び名!

 この初見では怖い私の見た目を、まさかのちっちゃい子扱い!


 もちろんその呼び名は……めっちゃ顔が緩みますっ!


「えへ、えへへへへ……嬉しいです、えへ……」

「こちらこそ、今日は友だちとして、たくさんレシピ教えてくださいね!」

「はいっ!」


 私はそれから、パトリシアさんにジェノベーゼと、あと買ってた醤油や味噌の紹介、他にも簡単なオリーブオイルのアヒージョとか、チーズリゾットの作り方とかを教えました! こんなことなら、もっと真面目におりょーりべんきょーしとけばよかったーっ!

 素材に助けられ続けてきた拙い私のレシピではあるけど、パトリシアさんは一つ一つ本当に感心して学んでくれて、教えているこっちも気持ちよかった。


 そしてそして、パトリシアさんからは自家製マスタードの作り方、更には自家製マヨネーズの作り方から、とってもおいしい自家製スイートチリソースまで教えてもらいました! ってそりゃ大量生産の市販品がないんだから自家製ですよね!

 その流れで一緒に料理して、ポテトに乗るベーコンならぬワイバーン肉! 漂うオシャレな外食オーラ! ビールがあれば庵奈とか絶対黙っていないであろうラインナップ! ああんもう素敵! パトリシアさん大好き!


 食べてみた翼竜のお肉……とてつもなくおいしかった。ほどほどに霜が入った脂の甘さが半端なかった。これが……これがワイバーンステーキの味! 今度から積極的に倒して回収していかなくては!

 今日の晩ご飯も最高でしたっ!

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