きゅうけいさんはついに出会う
昼のお日様が昇った頃。
私達は、討伐任務を無事に終えたことをギルドに報告した。
「お疲れ様でした。まさかシャドウオークという強い魔物が現れるなんて……」
「ああ、しかしレーダーに映りにくくともきゅうけい殿やシルヴィア殿、そして特に活躍の凄かったエッダ殿の相手ではなかったようだ」
「エッダさんですか?」
「彼女の弓は、見たことがない。ダークエルフという種族ならではなのかもしれんな」
エッダちゃんが、「えへへ〜」と頭を掻きながら照れる姿は最高に可愛いです! 抱きしめ足りない!
「それで……結局敵は何だったんですか?」
受付さんの質問に、弥々華さんは私の方を見た。
……うん、私から説明しないといけないよね、これは。
「敵は、私と同じ魔族でした」
周りの人たちの喧噪、ボリュームが一段階アップ。
うう……分かってはいたけど、まあそういう反応だよね。
「静かにッ! お主ら、ここからが大事な話だぞ!」
見かねたのか、弥々華さんが大声を上げて静めてくれた。助かります。
「魔族もいくつか主張の異なる種族があってですね。私は……まあその、グースカ寝てるような種族です。弥々華さんの……あ、弥々華さん。この話って」
「しても構わん。受付はそもそもステータスの情報を見ておるからな」
「うん、わかった。えっと、弥々華さんの主さんは魔族の王様で、お金とか稼ぐのが得意な魔族で、レベルは9999だけど今は竜族と仲良くなって協力関係にあるいい人だよ。だからそういう魔族もいるの」
竜族と仲が良い、というのは大和にとって大きなブランド力になるだろう。この話をするにあたって、弥々華さんに迷惑をかけたくはない。
「それで、えっと……今回敵対したのは、別の魔族。暴食の魔王の部下なんだけど、こいつらは人間のことを徹底的に嫌っている連中で、洗脳とか全くされていなくても、基本的にみんな人間を殺そうとしている」
私の言葉に、一同緊張が走る。
「……でもね」
みんなを落ち着けるように……そして私自身に言い聞かせるように。
鈴さんに言われたことを思い出しながら。
中途半端は、許されない。
「私は、そいつらにエッダちゃんやシルヴィアちゃんの故郷をやられそうになって、そいつらを滅ぼそうって決めたんだ。これは、どちらかが生き残るまで続くことになってしまうと思った。だから」
私は、周りのみんなを見る。
みんな、私を見ている。
「私は、何があっても人間の……みんなの味方です」
はっきり、宣言した。
私の発言を、弥々華さんが引き継いでくれた。
「きゅうけい殿は、既に山縣城で何度も最上寧々の命を救っている。寧々自身もきゅうけい殿を心から信頼して笑顔を向けている。我が最も信頼を置いているのが、このきゅうけい殿だ。だから皆の者、この者を信頼してやってくれ。……この通りだ」
……なんと。
あの弥々華さんが、頭を下げた。
山縣城城主、最上義髙様より偉い、弥々華さんが、だ。
これには一同驚いた。
「や、弥々華様っ! 顔を上げてください! もう既にきゅうけいさんはみんなの顔なじみですし、私達は弥々華様の言うことを疑う人なんて誰もいないですっ!」
「そうですぜ弥々華様、頭を下げられるとこっちが心苦しい!」
「もーっ弥々華さまったら、そーゆーところお堅いですよっ! アタイらみんな、弥々華様の言うこと、疑いやしないっつーの!」
みんなが思い思いの返事をする。
弥々華さんが言うこと、頭を下げなくても誰も疑ってない。
間違いなく、弥々華さんへの絶対の信頼の証と言えるものだった。
「皆、ありがとう……」
「普段から礼をされるようなことばっかりやってる人に礼を言われると、こっちからお礼を返す日がいつまで経っても来ないっすよ!」
「そうそう!」
ああ、みんないい人だなあ……。
「ありがとうございます! また、よろしくですですっ!」
私が弥々華さんの隣でぺこぺこ礼をした。みんな笑顔で迎え入れてくれた。……よかった。自分のふるさとのような町に、自分の素性を話しても受け入れてもらえている。こんなに嬉しいことはない……。
「いろんな騒動、さくっと解決しちゃうから、任せてねっ!」
「すっげー強いんだろ、きゅうけいさん。頼りにしてるぜ!」
「巨人騒ぎもすぐに解決しちゃいそうよね! アタイは鈴さんが先に解決する方に賭けてるけど、もちろんきゅうけいさんが勝ってくれてもいいよ! 応援するから!」
うんうん! ……うん?
「賭けてるの?」
「ああ、弥々華様達が解決するか、鈴さんが解決するか。なんか鈴さんさ、さっきも聞き回ってたし本気でブッ倒すって気迫があるんだよな」
「……鈴さんが?」
「そうさ。知らなかったかい?」
し、知らなかった……鈴さん、知らないところでそんなに聞き回っていたなんて。……やっぱり鈴さん、強い信念がある。同時に……人間のために頑張ってくれているって分かる。
やっぱり、いい人だ。……仲良く、なりたいな。
「ありがとう、私も負けないんだからっ!」
「おう、がんばんな!」
私はみんなに返事をして、想定より遥かに和気藹々とした雰囲気のままギルドの外に出ることができた。
最初は魔族であることを説明したら受け入れられないんじゃないかと思ったけど、大丈夫だった。みんな……ありがとう。
あと……。
「弥々華さん、本当に私のために、ありがとうございます」
「あのエリクサーなる薬、買えば金貨とか白金貨と聞いたぞ」
「うっ……! そ、その……内緒、ですよ……」
「もちろんだ。……はぁ、全く……頭一つで返せるような礼であるまいに」
ううん、そんなことないよ。
自分一人でできることなんてたかが知れているし、自分一人ががんばればいいことなんて、そんなに大したことじゃない。
誰かと関係性を持つにあたって、そういう頭を下げる場所で下げたり、そういうことが出来る人だって、すごい人なんだよ。
弥々華さんは、私にとって……ずっと尊敬できる素敵な人だよ。
ふと、帰り際に山の方をエッダちゃんが見ていた。
「どうしたの? エッダちゃん」
「いえ、その……今日は山に鳥が多いなって」
「ん?」
「暗い森は見慣れているんですが、今日は妙に多いんですよ」
どこだろう。目視だったら見えない。
……うーんうーん……じゃあ、【レーダー】!
これでどうかな! って……。
「確かに……多いね」
「あ、きゅうけいさんにも見えますか。ですよね、多いですよね」
私の魔法だけどね。
でも確かに、多い。先日は弥々華さんが道の真ん中から逃がしたやつかな?
「……エッダ殿、それは本当か」
「へ? は、はい……森に鳩が沢山います……」
「そうか……そうなのか……」
弥々華さんは、少し考え込むようにしつつも、そのまま無言で城に歩いていった。
「おかえりなさいませっ!」
「お帰りなさいませ、弥々華様、皆様」
そしてこの、リアルお姫様とメイドさんのお出迎えですよ!
いやー、私これもしも現代日本に戻ってしまったら絶対メイド喫茶とか入り浸ってしまう危険性あるよ。
美少女にお帰りなさいって言われるの本格的にやばいよ、これはね、中毒になりますやばい。
「ただいま〜っ!」
「うむ、帰ったぞ」
「出迎えありがとう」
「わぁ〜いっ! 寧々ちゃんのお出迎えだぁっ!」
エッダちゃんが寧々ちゃんをハグしてただいまの返事代わり! 今寧々ちゃんがむにゅむにゅ天国に送られているので、私は千世ちゃんを抱きます! 腕の中で「あ、あの……」と控えめ天使照れ顔をしているので、ハイもう私やられた!
「ふふ、全く賑やかなことだ」
「なんだか迷惑をかけてごめんなさいね」
「シルヴィア殿はしなくていいのか?」
「ええ。見てるだけで十分」
引率のシルヴィアリーダーの慈愛に満ちた女神スマイルで、今日も私はデレデレです!
見送りからお出迎えまで、ここしばらくはずっとしてもらっている。
本当に、これがあるのとないので全然違うのだ。
この二人の笑顔があれば、もういつまででも頑張れるって感じだ。
「千世さん、お薬は?」
「はい、今日は5本使いました」
「オッケー、じゃあその分渡しておくね」
これも日課。この素敵なプリンセスの笑顔をお守りするためならこんな小数点の果てみたいな魔力の消耗で済むお薬渡すぐらい大したことありませんとも!
晩ご飯は、本日は他人丼! 他人丼ってのはですね、牛肉と卵なんです! あ、東だと開花丼だっけか。とにかく牛と卵のめっちゃおいしいやつです!
味付けは最高! お肉の質も最高でっす!
「大和のごはん、おいしすぎます……」
「今回ばかりは私もそう思うよ、御城の調理担当さん上手いねー」
「えへへ、ほんと毎日おいしいですよねぇ」
三人でたっぷり食べて、おかわりもしちゃった! 特にエッダちゃんは四杯目に行き、周りの男一同から一目置かれていた。
まあ、エッダちゃんはいくら食べても、胸に行くからね!
「……あれ、弥々華さん?」
「ん? おお、皆よく食べているか? いいことだ」
「いえ、弥々華さんは食べないのかなって」
「もちろん食べるさ」
そう言って、ようやくお箸を持つ弥々華さん。……何か考え事でもしているんだろうか。
「そういえば、今日も寧々と遊ぶのよな?」
「えへへ、もっちろんです!」
「では、客間の方で遊ぼう。寧々と千世には我から伝えておくゆえ」
「わあっ、本当ですか! 楽しみ!」
これは本当に楽しみだ。ここ最近、寧々ちゃんと仲良く遊ぶのは一日の中で一番幸せな時間だからね。最近は私達から地下の方へ行って遊ぶことも多かったから、本当に久々だ。
二階でそわそわしていると、ふすまが開いて寧々ちゃんが現れた!
「久々です! やっぱり広いの気持ちいいなあ」
ごろんと畳の上に寝転がる寧々ちゃん。この年齢で畳休憩の気持ちよさがわかりますか! 将来有望ですね!
ベルフェゴールの眷属として、一日中怠惰な生活を堪能する日常を送るお仕事をしてみないかい!?
「ほんとこの部屋気持ちいいよねー」
私も一緒に、ごろんとうつぶせになる。
そんな私達の近くに、エッダちゃんもやってきた。程なくしてシルヴィアちゃんも、頭を近づけるようにごろんとうつぶせで寝転がってきた。
あと、最近距離が急速に縮まった千世ちゃんも寝転がってきたのは嬉しい。
「寧々、ちょっと失礼するぞ」
「弥々華様? これは?」
「札を背中に貼っただけだ。なに、気にするな」
魔法を防ぐ札を、弥々華さんが貼っていた。なかなか綺麗なもので、結構よくできている。
「うへへ……わー」
いつぞやかのように、手を伸ばす。伸ばした先は寧々ちゃん。
ねっころがって手を伸ばすのたのしい。
「えへへ、きゅうけいさんだー。わー」
手を伸ばして握り替えしてくれた……!
おててぎゅっぎゅ! おててちっちゃい! あああ細い白いかわいい〜っ!
「うへ、えへ、うへえへへへ……」
「きゅうけいさんが明らかにオスなら討伐しなくちゃいけない顔になっててリーダー心配……」
「でも、きゅうけいさんならいつもこんなかんじですよぉ」
シルヴィアちゃんの言うこともごもっともだけど、私はこのリアル市松人形みたいなお姫様とおててをふれあってるだけで幸せ絶頂なのだーっ
そしてにぎにぎしていて———
「———【レーダー】!」
私達は……一斉に立ち上がった。私はまず千世ちゃんにエリクサーを作り置きしていたものを数本渡して、すぐに弥々華さんの隣に行った。既に弥々華さんの隣にはシルヴィアちゃんとエッダちゃんがいた。
ちなみに弥々華さんは、ずっと外をみる位置にいた。
「反応が速いな!」
「寧々ちゃんをわざわざ上に呼んだこと。夕食時心ここにあらずだったこと。そして……山の鳩を気にしていたこと。それらで分かりました。あとの二人にも伝えてましたし、シルヴィアちゃんはもっと詳しく気付いていました」
「そうか、まったくきゅうけい殿は普段と違ってこういう時は優秀な切れ者だから驚かされる。……見ろ、あれを」
そして外を見ると……いる。
明らかに巨人がいる。そして本当に、鳥類だ。
「みんな、あたしの後に飛び降りて!」
シルヴィアちゃんが廻縁の高欄に足をかけて……跳んだッ!
「———【ドラゴンフォーム】ッ!」
そして城の外でシルヴィアちゃん光ったと同時に、城の横に大きな古竜が現れる。驚いたことに、既に弥々華さんはシルヴィアちゃんを信頼して同時に飛び降り、背中に乗っていたのだ。あの状況で迷いなく飛び降りたのはすごい、すっかり信頼し合う関係になっているね……!
間髪を入れず私もエッダちゃんも飛び出し、シルヴィアちゃんの背中に乗った。
鳥の巨人、今回は消滅しない……何のつもりだ?
近くまで来ると、本当に大きい。私達はシルヴィアちゃんの背に乗ったまま、そいつと対峙した。
夜の暗闇、森の中ににょきっと生える巨大天狗……ではない。
鳩だ。
血走った目をした鳩の人間。
すっげえ不気味だ。
問答無用でぶっ倒してもいいんだけど、以前のことを考えるとあまりに様子がおかしい。様子見だ。
「……言葉は話せるか?」
「話せるのは知ってるよナ。最上弥々華」
「……やはり……お前なのか」
「もちろんなんだナ」
なんだ……弥々華さんとこいつ、知り合い……弥々華さんはこいつを知っている?
「どういうことよ、弥々華!」
私が何か言葉を発するより前に、下から大きな声が聞こえてきた。この声は……!
「———鈴殿!」
「あなた、このよくわからないフザけた鳩と知り合いなわけ!?」
「知り合いと呼ばれるのは心外だが、そうだ。……鳩巨人、お前は倒すと逃げるんだろう? その本体の部分を分体と共有して」
「よく覚えているナ。まアそこの龍を含めて、お前ごときに襲われたところでそう簡単にこのワタシがやられるなんてあり得ないがナ」
……随分と自信満々だ。かなり……強そうだこいつ。
しかし気になることを言った……本体を、分体に共有?
「どういうことなの、弥々華さん」
「こいつの依り代は鳩の形をした妖怪。そいつから自在に出没できるようになっている。そしてこいつの本体は、その『見た目は鳩でしかない妖怪』全てだ」
「鳩? ってことは……」
「鳩型の妖怪を倒さなければ、同じ鳩型の妖怪から半永久的に出てき続ける。さすがにそこまで広い範囲に同時に分体を配置できるわけではないが……ただ、こいつのいる所で『妖怪でないただの鳩』を殺すと力が強くなるので、絶対に無差別に鳩を殺してはいけない。昔は大きな失敗をした」
なるほど……討伐対象は分裂型だけど、本体はどこに現れても能力は全力。P2Pみたいなめんどくさいボスだこいつ……。
「合ってるけど、違うんだナ」
「……なんだと?」
「鳩はナ? もう山と町に同時に展開できるんだナ」
「なっ……!?」
鳩を、森と町に同時に展開できる。
それはつまり……この鳩を倒した瞬間に!
「町にお前が出没できるということか!」
「ウム。ここから直接城下街を狙うこともできるんだけどナ」
「…………なぜだ……なぜだ!」
弥々華さんが、急に鳩巨人にまくし立てる。
「なぜだ鳩巨人! お前は我と、七代先を呪い殺せばそれで済ませると言ったではないか! これでは二人ではなくて四人だ!」
「……違うんだナァ……キミ自身がそんなことは分かっているよナ?」
「ぐっ……!」
どういう、こと……?
「そうだ……確かにお前が最初に殺したのは二代目、そして三番目に殺したのは六代目だ! だが……もういいだろう!」
「よくないんだナ。ちゃあんと約束は守って七代目を始末しなくちゃあナ……まったく人間はコレだもんナァ?」
な、なんだこの妖怪の、自分勝手な話は……。
恨みを晴らす相手と、七代先を呪うというのを……。
その理屈なら、……寧々ちゃんのお母さんは……!
「だとしたら、タエは……あいつは、何のために死んだ!」
「そんなの無駄死にだって分からないのは馬鹿だからなのかナ?」
「っ貴様ァ!」
頭に血が上る弥々華さんの腕を、私が掴む。
……私もね、今のはすげえキたぞ。隣のエッダちゃんも下にいる鈴さんもよっぽど頭に来たのか、ヤツに向かって殺気を放っている。
でも、冷静に対処しなければならない。
大丈夫、よっぽど自分の能力に自信があるのか、弥々華さんの解説中も全部喋らせてしまった。
私なら、倒せる。
私は……どんなに小さくてもリーダーには聞こえる声で、魔法を使った。
「【レベルリリース】【レーダー】」
以心伝心……古竜の高度が落ちる。弥々華さんが驚きシルヴィアちゃんに何か呟いているけど、今はとりあえずちょっと待っててね。
意識を集中させて、町へ走る。
そこには……いた。確かにレーダーで魔物表記された鳩がいた。
私はこういうヤツのパターンを知っている。レーダーに存在する、魔物の反応をした見た目は普通の。
こういうせこい手を使うヤツは、蠅野郎だけで十分だ。
私は町中にある、魔物の鳩を選んで斬っていった。
どれが魔物か、そうでないか。どこまで展開しているか。
そんなの……海の近くまで観測できる私にとっては余裕だっつーの!
鳩の魔物、最後はなんと……御城の上にいた。
あんなところに出てこられたら、寧々ちゃんどころか最上家全員皆殺しじゃない……!
あいつ、最初からそのつもりだったんだ!
私は屋根に飛び乗り、最後の一羽を斬る。
……もう、いない……かな?
私はレーダーを再確認すると、鳩巨人の近くまで戻った。
「……? ア? ……お前。さっきまでいなかっタ、青いヤツ……どこに行ってた?」
「城の上に配置するなんて、嫌らしいにも程があるでしょクソ鳩野郎。なるほど、こうやって見ると、森の中には一羽もいない……つまりあんたを倒した時点で、必ず町中に出没するって予定だったわけだ」
「……ナ……に……!?」
私は腕を組んで、地面からすっかりカリスマ消失って感じになっちゃったそいつを見た。
「あなたはもう終わり。分体は、さっき私が全部倒した。それは鳩巨人さんが一番分かってるでしょ? それとも……そんなことも分からないのは『馬鹿だからなのかナ?』」
「……お、おおおおおのレエエエエ!」
「はいはい、キャラ崩壊しちゃってるよ」
この反応ならもう大丈夫だろう。私がこいつを倒そうと剣を構えると……私の前に意外な人が出てきた。
鈴さんの背中が視界に映る。
鈴さんの顔は、あの時に見た本気の怒りの顔だった。
「私はね。あんたみたいな信念のないブレた妖怪が、鳥の魔族の代表みたいなツラしてるのが気に入らないの」
鈴さんの体が、ゆらりと炎を出す。そして……黒い髪が、まるで炎のように赤く染まる。
「鳥はね……空を飛んで、自由の象徴で……その羽はエンジェルの象徴で、グリフォンの象徴で、人間にとってもっと誇り高いものでなくちゃならないの……!」
「ナんだ、こいツ……」
「お前は……お前だけは! 私が倒す!」
そして私は……鈴さんが何者か、ようやく理解した。
だからこの人は、鳩巨人を憎んでいたんだ。
人類の、味方として。
鳥類の、魔族として。
「【フェニックスフォーム】!」
鳩巨人にも匹敵するほどの巨大なフェニックスは、鳩巨人の両肩をその足で掴むと、羽ばたいて天高く一緒に持ち上げた。
そして太陽のように眩しく光ったと同時に、空高くまで火柱が上がり……もうその場所にはフェニックス以外、何も残っていなかった。
面白かった、続きが気になる、更新頑張って! と思っていただけましたら、
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