きゅうけいさんはダンジョンに潜る
私とシルヴィアちゃんとエッダちゃん。
三者三様の種族による冒険者パーティは、最初のクエストを迎えた。
「っていっても、エッダ一人で大体の任務が出来る上に、あたしがこんなレベルで、きゅうけいさんが90クアッドとかいうよくわかんないレベルあるし、正直最初からSなのもお察しよね」
「あ、あはは……あうぅ、ほんとに私、このメンバーに入ってよかったんですかぁ……?」
「いえいえっ! むしろここまでくると、エッダちゃんみたいな癒し成分が何よりも必要だよーっ!」
「ひゃうっ!?」
私はエッダちゃんの背中から、腕を回して抱きついた。おなかぎゅっぎゅ。……あ、腕の上側がちょっと触れてしまいまして、自分で絡んでおきながら自分で赤面して腕を離しちゃう。
……赤面? いや私照れても赤面しないわ。
青面。……絶対誰にも通じない日本語の自信ある。
「ま、油断しないでいきましょ。あたしたちでどうにもならなかったら村の誰が行ってもどうにもならないと思うけれど」
「確かにそれもそうですね。でも、大丈夫ですよきっと。それに、ちょっとわくわくもしてます」
うんうん、そうだね。折角の三人の初仕事なんだもの、これはこれで楽しまなくちゃ、損だよね。
ダンジョンの中はいかにも洞穴ですって感じで、どんどん奥に続いていっていた。
「ところできゅうけいさん」
「はい、なんですか?」
「レーダーってどれぐらいまでいけますか?」
……そう、シルヴィアちゃんはあたしのデタラメ高レベルによる超広範囲レーダーのことを知っている。もちろん使用することは思い当たるのはわかる。
「なんだろう……ダンジョンの全体は分かるんだけど、下の階までは分からないんだよね」
「……むしろ、この魔力の濃いダンジョンで、一階層丸々全部見えている辺りが無茶苦茶な気はしますけど……」
……ん? 魔力が濃い?
「魔力が濃いってどういう意味なの?」
「きゅうけいさんはちょっと極端なレベルで強いですからね……ダンジョンは魔力の素が濃くて、あたしみたいなのだとレーダーの魔法がかなり狭まるんですよ。せいぜい数メートルですね」
なんと、そんなことになっていたんだ。
「じゃあ私がこの階全部見ることが出来るというのは……」
「前例がなさすぎるぐらい魔力が強すぎます。ダンジョン踏破するには便利すぎるので、迂闊に喋ると他の冒険者に追いかけ回されると思います」
「お、おおう……ご忠告、ありがとうございます……黙っておきます」
そんなにレーダーが通りにくいんだ……先に聞いておいて良かった。
「私って本当にこういうの素人だから、シルヴィアちゃんやエッダちゃんがいてくれて心強いよ」
「あはは、なにいってるんですかぁきゅうけいさん、私もシルヴィアさんも、きゅうけいさんがいてくれるから何が来ても大丈夫だって気持ちなんですよ」
「そうですよきゅうけいさん、あなたはあなたのレベルのことをちょっと安く見積もりすぎです。頼りにしてますからね」
ううっ、そんな嬉しいこと言われちゃうと張り切っちゃうよ!
うん、ゲームルールから外れた世界のセオリーは全くわからないからね! でも、それ以外のことならお任せあれ!
「しかしきゅうけいさんがレーダーを出して何も言ってないってことは、この階には特に何もないんですか?」
「勘がいいね、そうだよシルヴィアちゃん。なんもないねーココ。ちょっと先導して歩くね」
そう。ここにはだだっ広い空間が広がっているだけで、基本的に何もないのだ。ダンジョンというだけあったモンスターに備えていたけど、さっきから私が特に気にした様子がないのはそれが理由だった。
せっかくなので、みんなとおしゃべりしながらゆっくり歩く。
こういう機会ひとつひとつも、ちょっとした楽しみだからね。
「そういえば、さっきレジーナさんって人に会ったよ」
「レジーナですか、お姉様と仲のいい人ですね」
「うん、友達沢山作るといいよーってアドバイスもらって、ついでに友達にしてもらっちゃった」
占い師さん、なかなか面白い人だったなー。
「友達ですか。なんだかきゅうけいさんは会う人みんな友達にしちゃってるような気もしますけど」
「いやあ……なかなかそうはいかないってところが難しいかなあ。本当は魔族も、どうにかして更正させる手段がないかなって思うんだけど」
「……本気ですか?」
「本気だよ。といっても暴食の眷属はダークエルフの集落に先制攻撃してきてたから許すつもりはなかったけど、でも他の相手はちょっと考えてる」
これは、本心だ。
やっぱり、敵対的だからって全てを諦めたくはない。
あの何かがひっかかるような反応……それさえわかれば、どうにか解決する方法があるんじゃないかなって思う。
多分、次現れても同じように対話をしようとするだろう。
それでうまくいかなかったとしても、折角このレベルなんだ。対話自体を最初から諦めるよりは、ダメ元で試すだけ試してから決断をしたい。
そうすれば、いきなり斬るよりは後悔しないと思う。
「きゅうけいさんは、魔族が生き残る道も意識するんですね……」
「そりゃまあ、魔族がっていうか、人間と友好にって意味ね」
「え?」
疑問に返されてしまった。んーと、わかりにくいかな?
「要するに、魔族みんなが人間に敵対的なら、私の眷属にして全員人間の味方になるようにするとか、そういう対応かな?」
「……それ、できるんですか?」
「できないよーなきがします」
今の流れで肩すかしみたいな、私の見込みを正直に喋っちゃって、二人ともちょっとあっけにとられちゃった様子。
「でも……どうやら、大罪が人間に敵対的になるっていうの、先代のベルフェゴールが指示出したっぽいんだよね」
「えっ!? それ、本当なんですか!?」
「うん、ベルゼブブの眷属情報だけどね」
信憑性は低くないと思う。なんといっても、あの状況であの慌てようだ。
きっと彼にとっても私の裏切りというか、人間側への協力は意外なことだったんだろう。
もしも眷属がマスターである魔王の意志に従うというのなら、ちょっと考えてもいいかなって思ってる。
「だから、私が敵対解除の指示を出せたらいいなあって。どっちみち私ってベルフェゴールの能力も、眷属の作り方もわかんないんだけどね」
「た、頼りになるんだかならないんだか……」
「あはは、私もそう思うよー。でも当面、眷属っていう隷属させるようなものはよっぽどの同意がないと作らないつもり」
それに、友達じゃなくて眷属ってのふやしちゃうのってめんどくさそうだからねー。
「……わあ、きゅうけいさん、隷属はさせないって……やっぱり、優しいですねぇっ!」
「———エッ!? あ、ありがとエッダちゃんっ!」
ストレートに褒められた! 最後の心の本音、言わなくて良かったぁー!
そんなちょっと後ろめたい褒め言葉にドキドキしていると、
「内心、眷属管理はめんどくさいって思ってたりして」
ばれてましたぁーッ!
「あ、あはははは……シルヴィアちゃん、そっちの本音もばれちゃったかー」
「うふふ、きゅうけいさんのこと、段々分かってきました。でもそういうところも含めてきゅうけいさんの魅力というか、可愛らしい方だと思いますよ」
「———」
そ、そういうナチュラルに殺し文句混ぜてくるのやめてもらえないかな。かわいい子にかわいいと言われるの、ほんと弱いんだよ。
はぁ……こりゃいつか、シルヴィアちゃんにはかなわなくなっちゃいそうだなあ。
「おっと、ここから下の階ね」
「ここから下の階は、見れますか?」
「んんー? 不思議、見れないや。ちょっと降りてみるね」
私が不審に思って、土で出来た下の階段を下りていく。
———!
私は急いで上に走った。
「きゅうけいさん?」
「いる。魔物、結構な数。まずは私の後ろをついてくること。……いいかな」
「いいですよ、きゅうけいさん。信頼しています」
「か、かならずきゅうけいさんの後ろからいきますっ!」
私は二人の返事を確認すると、ショートソードを出して下の階に降りた。
下の階。……まずは正面、ゴーレム!
「アイアンだね。ゆっくり相手してあげるよ」
アイアンゴーレムが右腕を振りかぶり、前方に素早く拳を打ち出す! ……というお馴染みの動作がくる前に、相手の体の内側に歩いて空振りさせる。剣は使わず、左手ベルフェゴールアッパー! ゴーレムはばらばらになった!
奥から二体目。ノッシノッシ歩いて頭を低く……今度はこいつがアッパーだね。頭を下げた動作を見た段階で右側にずれる。つまり相手の左手側だ。こいつは右手しかアッパーしなかったからね、余裕余裕。
伸びきったゴーレムのお腹を再び左手で殴って、爆発四散でサヨナラだね!
「動きほんと単調だねー君たち」
二体それぞれやってきたやつらも、片方が両手を上に重ねて、上から地面に全体重で叩きつけてくる。それを一歩引いた場所で両手を腰に当てて、地面にぶつかるまで眺める。そして予定通りに膝を突いて地面に両手を叩きつけるゴーレム。
その硬直時間に、頭を叩いて破壊。おつかれさまでした。
最後の一体は珍しくジャンプ攻撃だった。同じように右手で打ってくるんだけど、こいつのジャンプ攻撃は腕が伸びきるので今度は左側が安全地帯だ。右手が予定通り私の髪をかすめ、地面を叩きつけて動作が硬直する。
その長い硬直時間に楽々ゴーレムの頭を左手でもぎとれば、ゴーレムの目から光が消える。これで全部完了だ。
「オッケーだよー」
剣出す必要なかったなー。私はゴーレムの頭をぺりっと割ると、中から魔石をとりだしてシルヴィアちゃんに渡す。
……あれ、シルヴィアちゃんもエッダちゃんもぽかーんとしている。
直後シルヴィアちゃんははっとして、ちょっと考えるような格好になり……左手で右手をぽんと打つ。
「そうか、これが『知識』ですか」
「ん?」
「きゅうけいさん、質問いいですか?」
「どぞどぞ」
「……今のアイアンゴーレム、あなたが人間だったとして、レベルいくつで倒せますか?」
「そりゃ1だけど」
倒せるっていうか、倒したことあるからね。
私が当然のように答えると、エッダちゃんが慌てて声を挟んできた。
「い、いやいや! アイアンゴーレムですよ、生半可な冒険者なら一撃で潰されて手も足も出ない相手ですよ!? っていうかきゅうけいさん、さっき全部相手の攻撃が来る前に避けてましたよね!?」
あっ、言われて気がついた。そういえば、相手の行動を全部予想した動作をしてた。機械だから動作パターン全く同じかなと思って見ていた。確かに全く同じだったから避けられた。
だってだって、レアドロップ欲しくて何度も何度も倒してたらゴーレムのパターンなんて覚えちゃうんだもん。そしてこいつがまたいい素材の割にぜんぜん落としてくれなくてさあ……。
「……エッダは知らなかった?」
「あ、あわわ……しらなかった、です……。きゅうけいさんって、もしかして」
「そうよ。きゅうけいさんはね……レベルが高くて最強なんじゃないの。レベルが低くても最強なの。……いえ、違うわね」
シルヴィアちゃんが、目を閉じて言い直す。
「———レベルが低くても世界最強なのに、その上でレベルが世界最強なの」
……お、おおお……なんか、決まった!
決まったって感じだ! かっこいい!
って私の話だったね! やばいやばい顔熱くなっちゃう。
私、青面しちゃう!
やっぱり青面って言い方ナシ? 青肌魔族の赤面のつもりだったんだけど何のことか分かんないかな?
……私も自分で言っててナシだと思う。
「きゅうけいさん、すごいですぅ……!」
わわっ……!? い、今までになく尊敬の眼差しっ!
「う、うへへ、まあ低いレベルでも避けられる敵限定だけどね! たまたまゴーレムの動きは全て記憶していただけだよ」
「相手が動き終わる前に避けているなんて、かっこよすぎました……! もぉまた好きになっちゃいますよぉ!」
……! ほんとに! ていうか好きって言ってくれちゃいました!?
私、かっこよく動いた甲斐ありました。エッダちゃんが抱きついてきてくれてめっちゃデレデレしちゃう。ダンジョン内部だけど今すぐ鎧を脱ぎたい。脱ごうか。もう必要全く感じられないしいいよね?
「ところで、他に敵はいますか?」
っと、そうだった。私は階を調べてみると……いた。
ここから真っ直ぐ行った場所だ。
「いたよ、私についてきてね」
「あ、あのっ!」
お、エッダちゃんから声がかかった。
「あの、最近私あまりいいところないので……私が前に出たいです!」
なんと……!
私はシルヴィアちゃんと目を合わせる。
「どうかな、リーダー」
「私も注意しますが、危ない時にきゅうけいさんがサポートに入ってくれるのなら、十分大丈夫だと思います」
「わかった! エッダちゃん、オッケー!」
「ありがとうございます!」
エッダちゃんが先頭に立って……弓! エッダちゃんはダークエルフとしてはフォーマルな弓使いだった!
「先頭でも大丈夫なの?」
「問題ありませんっ!」
おおっ、気合十分だ!
そこまで自信満々なら是非ともその腕を見てみたい!
と思っていると、そろそろ敵の近くになった。
「そこ、曲がり角にいるよ!」
「わかりました!」
緊張が走る、一体何の魔物がいるのか。
……! あれは!
「ニードルピューマ! 速い奴だよ!」
「エッダ……!」
「大丈夫ですっ!」
私とシルヴィアちゃんの心配の声をよそに、エッダちゃん、弓に矢を構えて、素早く撃つ、撃つ、撃つ!
わ、分かってたけど速い! レベル140のダークエルフ、やっぱり強い!
ニードルピューマは体ごと殴りつけられたかのように吹き飛ばされている。
「ど、どういう弓矢なのよそれ」
「これは、闇属性エンチャントです。闇属性には無属性みたいな吹き飛ばし、衝撃を与える効果もありますので、矢にエンチャントすることで投石機のように相手を吹き飛ばしながら戦えるんです」
確かに、闇魔法ってそういう側面あるけど、その闇魔法の力を矢に乗せて大弓やバリスタのように相手を吹き飛ばすなんて……!
ゲームでは弓矢にエンチャントはできなかったはずだ。矢そのものに属性があって、消耗品で、しかも闇はなかった。
……何気なくエッダちゃん、かなり高度なことをしている。
「エッダちゃん、分かってると思うけど奥からあと二体来てるからね」
「余裕ですっ!」
おおっ、いつもはふわふわしてるエッダちゃんがかっこいい!
もう一体のニードルピューマもエッダちゃんの矢を顔に受けて吹き飛び、三体目は……速い! 弓が間に合わない!
私が助けに入ろうかと思った瞬間……なんとエッダちゃんは弓矢を握ったまま前に出た。
「【パワーエンハンス】……えいっ!」
かわいらしいかけ声とともに、接近してきたニードルピューマの顔面に、回し蹴りを叩き込んだ!
弓矢の時以上の威力で、ニードルピューマは壁まで吹き飛ばされ、一撃で絶命した。
「やったぁ!」
そして、勝利に喜びかわいく飛び跳ねる。
「……」
「……」
私とシルヴィアちゃん、同じ表情で顔を見合わせる。
……もちろん、エッダちゃんのあまりもの戦闘能力に驚いて、だ。
「えへへ、どうでしたかぁ?」
「かっこいい! エッダかっこいい!」
「わあっシルヴィアさん、嬉しいです!」
「エッダちゃんすごいよ! 格闘って、やっぱりカルメンさんから?」
「はい! お母さんから学びました! 強化魔法も直前で伝授してもらって」
いやー、強いとは分かっていたけど侮ってたわモンティ家。
レベル140という数字以上に、技術力が高い。
ちょっとちょっとー、私たちのパーティ強くない?
『異種友』最高!
「これなら先も安心だね!」
「えへへ!」
「———いえ、今度はあたしが前に出ます」
えっ、今度はシルヴィアちゃんが先頭に立候補した。
「ふふっ、実際のところ全部きゅうけいさんが担当してくれるのもいいですが、エッダを見てると疼いちゃって……あたしもあたしで活躍したいんですよ?」
おおっ……! シルヴィアちゃんが前に出て活躍したいと言っているっ!
「分かったよ! でも危なくなったら助けに入るからね!」
「ええ、信頼しています!」
ってわけで、私とエッダちゃんは後ろに下がって、シルヴィアちゃんの活躍を見守ることとなった。
……ふと、気になったことを聞いてみる。
「ねえ、シルヴィアちゃん」
「ん?」
「ドラゴンフォームってのは、あれになるのとならないのとでどれぐらい違うものなの? トゥーリアさんを見た限りでは人間形態でも十二分に強いと思うけれど」
「ああ、そういえば説明したことはなかったですね」
何か秘密があるのかなと思ったけど、シルヴィアちゃんは丁寧に解説してくれた。
シルヴィアちゃんの話によると。適材適所というか、どっちの形態で戦っても問題はないらしい。要するに誰かを運ぶとき、ブレスで一掃するとき、威圧感を与えるときなどはドラゴンの形態。
だけどあの姿は高性能それ故に、かなり魔力を消費してドラゴンの姿になっているとのこと。
人型は人型で、ドラゴンの姿でのレベルと共通している分ちゃんと強いし、別にどちらが本物ってわけでもないらしい。
「なので、今のあたしはレベル6176の人間の戦士ってことでいいですよ」
「了解です!」
なるほど、じゃあ心配いらないね。かっこよく倒してくれそうだ。
「次……そこ!」
「わかりました! それではあたしの両手剣、喰らっ……て……」
シルヴィアちゃんの正面。
そこに出てきたのは……。
「……ゴブリン、ですねぇ……」
「そ、そだね……」
ゴブリン。
最弱モンスター。
最初にコボルドってのに会ったでしょ。
あれより弱いやつ。
シルヴィアちゃん、無言で剣を叩きつけ、一刀両断する。
「……」
「あ、あの」
「……」
「ああ〜〜〜〜んっ! なんで〜〜〜〜っ!? 折角レベル上がったのにこんなんじゃ欲求不満だあ〜〜〜〜っ!」
……うん、そうだよね……。
でも、もう、このフロアのモンスターはさっきので最後なんだ……。
「うー……」
それから、フロアをいくら下っても、一切敵は現れてこなかった。
さっきの第二階層の敵達が、まるで最後の敵だったみたいだ。
「なんだろうなあこのダンジョン……」
「結局最初にきゅうけいさんが倒したアイアンゴーレムが一番強い感じですかね」
「単純な強さだけならね。でもエッダちゃんの活躍がすごかったよ、あれの方が私は苦手かな」
「え、えへへ……嬉しいですぅ」
エッダちゃんが、再びはにかむ。かわいい。
……あと、さっき勝利のウサギさんモードでぴょんぴょんしていたとき、それはそれはすごいことになっていたのは言わずにおいておきます。
「……うー……」
そして、シルヴィアちゃんはずっと不満そうだった。
こ、こればかりは私もフォローできない。参ったなあ……。
まあ、すぐに活躍できるようになると思います!
その次の階層も、更に次の階層も何もなかった。
「何もないですねぇ……」
「リーダー、地面殴って進めないかな?」
「生き埋めになると思うので却下します」
だよねー。
それにしても、広いというか、深い。
壁全体が青く光っているのか、真っ暗で何も見えないって事はないんだけど、ここまで静かで何もないとちょっと怖い。
「次の階層だよー」
「まあ、一応警戒していきましょ」
「はいっ!」
お互いの姿を確認して次の階層に降りる。
……でも、次の階層も何もなかったのだった。
「なんもないですねー……」
「そだねー」
「……ねえ」
ふと、さっきまで悩んでいたシルヴィアちゃんが疑問の声を出した。
「ん? どうしたの?」
「……いえ、気のせいじゃなければ……明るくなってないですか?」
……言われてみれば、確かに……。
「どういうことなのかな?」
「正直分からないです、分からないですが……多分、下に行くのは正解。何かあると思います」
確かに、明るくなるということは、それだけ壁に何か魔力が流れて光ってきているということだと思う。
「一番下の何かから、魔力が染み出して上の階がこれぐらいになっているの? だとすると……それは……」
再び次の階層の階段が見つかる。もうここまで来たら異常が分かる。
まるで昼のように、とまではいかないけど……ダークエルフの集落よりも明るい。
「……エッダ、いいわね?」
「はい」
シルヴィアちゃんが、私の方も向いた。
「きゅうけいさん、先頭をお願いできますか」
「もっちろん! みんなは私が絶対に守るよ!」
私はそう言って二人の少し余裕の出た笑顔を確認して、階段を下りる。
洞窟の、最下層がここだろう。
そこには、光り輝く湖があった。
「……なんで、よ……」
シルヴィアちゃんの声が漏れる。
「なんで、連続で当たるのよ……」
その声が震えていた。
光り輝く湖の真ん中には、記憶にある姿。
推定レベル、8500。
容姿と能力の不釣り合いで、付いたあだ名はマッチョ。
「———なんで、こいつが、竜族の村のすぐ下にいるのよ……!?」
嫉妬の大罪筆頭眷属、マーメイドがいた。






