きゅうけいさんは今の印象を知る
ミーナちゃんとは、長い……というわけではないけど、それなりに長い付き合いで、ある意味こう『親戚の子』的なポジションかもしれない。
久々に見たら、自分よりおっきくなっていた年下の従妹とか、そういう感覚。
いやまあ家族でも何でもないんだけどね。
「まず、魔王の時の第一印象はかなり恐ろしかったので、本気で怖がっちゃって――」
そこから、ミーナちゃんの私に対する評価がばりばり流れました。
いろいろ恥ずかしい過去から、根掘り葉掘り聞かれまして。
「今の印象は……」
ミーナちゃんの、すっかり美形となった顔が、ちらりと私を見る。
ど、どうでしょーか……?
「実は、あまり変わってないのです」
「……嘘でしょ?」
「嘘じゃないですよ。きゅうけいさん、服の支払いをしたりする時もそうですけど、決める時はぐいぐい決めてくれますし、なんだか今も『お姉さん』って感じがするんですよね」
み、ミーナちゃん……!
この姿になってなお、未だ私の妹分ポジションにいてくれる子……!
だ、大丈夫? 無理とかしてない?
「あ、それは分かる」
えっ、パオラさんからまさかの同意が。
「見た目は全然違うんだけど、印象としては変わらないのよね。元々年下っぽい部分もあったし」
そ、それはまあそうですね……パオラさんに限ってはマジで頼りっぱなしってぐらい頼りにしてたので……。
「でも」
と、ここでパオラさんは手を叩いて話を切り換える。
「こっちが困ってる時は、本当に頼りになるのよ。負の感情をぶつけても、負の感情で返されたことがない」
「あっ、それは分かります」
「私もよくよく考えれば死んでないの不思議なぐらいなのよね」
パオラさんの話題にミーナちゃんが頷き、ビーチェさんが強烈な単語をぶっこんできた。
赤ら顔で目がとろんとしてるので、ちょっと話のブレーキが外れてる気がする。
「洗脳された上で先制攻撃してたらしいのよぉ。でも今はこのとおり。……今更ながらだけど、何でなのかなーって」
「何でって、そりゃあ」
私は庵奈に目配せする。
あっちは私の話に口角を上げて頷いていた。
「まあその、お話してみたいなと思っていたので」
「……それだけ?」
「それだけそれだけ。多分庵奈も、クリアエリクサー持って無くても同じことしたと思うよ」
「いやー、したかなー? 試しはするかもだけど、話にならなかったら諦めてたと思うなー」
「じゃあ倒しちゃう?」
「余所に被害出してなかったら倒さないっしょ」
うん、まあそうだよね。
ここでこうして会話しているけど、マーメイドはゲーム中でもお話できそうな見た目だったし。
何より実際ゲームの3Dモデルに斬撃モーション入れるのと、人体に自分の持つ刃物で攻撃をするのは全然違う。
それにあれに関しては、圧倒的にエッダちゃんのスーパーサポートの効果が大きい。
なんとなく庵奈が確認したいこと、やりたいことというのも分かるけど。
みんなと一緒にいた私としては、庵奈のことも知ってほしいんだよね。
「負の感情か」
ここで、話を聞いていたクローエさんが口を開く。
「俺なんて最悪でさ。自我があったのに赤ん坊を人質にしてたんだよ」
「うわほんと最悪ー……と言いたいけど、ぶっちゃけ上司命令とかでしょー?」
「……何で分かるんですかね」
「自分の意思で子供人質に取るようなのだったら、さすがにきゅけいさんも助けないし一緒にいようと思わないっしょ」
うん。庵奈は私がそれなりにめんどくさがりで人間関係嫌な部分は避けたがるの知ってるからね。
「私も、今思えば随分と嫌味を言っていた気が——」
「いやいやイデアさんは全然。むしろリリアーナさんの件があってなお私のことを信用してくれたイデアさん偉い」
「——とまあこんな感じの人で」
あっ、思いっきり持ち上げるつもりが全部含めて持ち上げられてしまった!
「というわけで」
ここで話の主導権を、再びパオラさんが握る。
話を握るのほんとうまいですねこの人……。
「今の印象も、あらゆる意味で変わってないのよ。抜けてるようで、決める時は決めてくれる。今の服だって、結構強引に着させられたもの」
「それは、着せたかったからなだけで……」
「滅茶苦茶高かったでしょ。こんな日一ヶ月続けても大丈夫?」
い、一ヶ月この日は……も、持つ……?
「ほら、言い淀んだ。そういう嘘つけない性格も、またいいわよね。本当に今こうして背の低い人間の女性と話しているのに、自分の姉貴分と話している気になる時があるのよ」
「あ、姉貴? 妹の間違いじゃなくて?」
「こんなに頼り甲斐のある妹がいたら、私がやってられないわよ」
「それ逆じゃないかなあ……」
眷属を頼りにするというより、眷属に困った部分をおんぶにだっこしてもらってるからね。
パオラさんすっかり私の頼れるお姉さん状態。
そんな私達の会話を聞いて、庵奈が笑い出す。
「わははは。いやーほんと、慕われっぷりが半端ないことが分かったよー。友達増えまくったねー、女子会困らないわこりゃ」
「何言ってるの、庵奈もこれからみんなの友人になるんだって」
「ほらね」
何が『ほらね』なのさ。
「『主人』とかじゃないんだもんねー、最初から。私ビーチェには最初から主人として傅かれてさー、私自身も便利だし可愛いし、それでいっかーって感じだったんだけどー」
あっ。
「みんなそうだったんでしょ? 聞いた限り、最初は子供だったミーナちゃんはともかく、それ以外の面々が揃いも揃ってこうだもんねー」
「た、たまたまだって……」
「おう偶然が100%になるなら私の代わりにガチャ引いてもらおかー? 十連引いて半分ぐらいSSR当ててもらおかー?」
いや、それは無理だわ……。
だってみんな私にとってはすんごい美人なお姉様なので、こうなっちゃうのは必然なのです。
やっぱ自分の姿が真っ青だったとしても、客観的に自分の姿を四六時中見てるわけじゃないからね。
「ま、こっちとしては満足かなー? きゅうけいさんに対しての印象、いろいろ知れてよかったよー」
「完全に丸め込まれたようで納得いかないんだけど」
「精進したまえー、わはは。というわけで」
庵奈が、周りのみんなを見渡して宣言する。
「私はきゅうけいさんの同期の友人だし、みんなもきゅうけいさんと同じぐらい気さくに接してくれると嬉しいよー」
……。
…………?
いや、それはどうでしょうね?
「無理じゃないですか〜?」
「……あれ?」
「いや、きゅうけいさんがここまで徹底的に丸め込まれたの見るの初めてですし、なんかもうアンナ様完全にお姉様って感じなので」
「あれーっ!?」
ですよねビーチェさん!
ここまでの会話、完全に庵奈が私を丸め込んでしまいきってましたからね!
特にレヴィアタンの眷属のあなたなら、庵奈の存在感は実に大きくなったはず!
とはいえ。
「でも、アンナ様も私のことは殺さないと仰って下さって嬉しかったです」
「あーもー……クッソ可愛いなあ……。せめて様付けはやめてくれない? お願いとして」
「あっ、きゅうけいさんっぽいお願いの仕方ですね。じゃあいいですよ」
「マジかい、どんなお願いしたのさ」
四人組、顔を見合わせる。
「敬語やめてって言われたわ」
「それ命令で俺も言われた」
はい言いましたね!
だって、なんか落ち着かなかったので!
「ふふふ……! それじゃ私も。改めてよろしくお願いしますね、アンナさん」
そんなみんなの様子に、ミーナちゃんが率先して声をかけた。
庵奈が苦笑しつつ、私の方を見る。
「マジでみんないい子すぎんー?」
「女子会困らなさすぎなぐらいのいい子だよ」
「それなー」
最後にワイングラスを軽く合わせて、みんなで飲み放題の時間いっぱいまで吞んで帰りました。
ちなみに笑い上戸のビーチェさん、夢心地だったので庵奈がおぶって帰りました。
ほんとあの人魚姫、陽のキャラだよなー。






