きゅうけいさんはローラー作戦をする
リリアーナさんには、けっこーな数のダンジョンを教えてもらった。
その全てに、レーダーの魔法で印をつける。
場所移動は、必死に走るしかない。
まあ必死といっても私めっちゃ速いし全く疲れないからいいんだけどね。
でも、ゲーム内にあったセーブポイントワープができない。
いろいろなものがゲームじみたこの世界だけど、さすがに『セーブポイント』は転生した異世界に概念自体が存在しなかったみたい。
ま、そりゃそっか。ちょっと怖いよねセーブポイント。
死に戻りとか、自分がするならいいけどやられる側で記憶が残ってるとマジで怖い。
そりゃーそんなことがあったら、私の魔族フェイスも昼行灯なスケルトンになっちゃうね。
ふっふっふ、最悪な目に遭わせてあげよう。
……やっぱプレイヤーが可哀想なのでナシで。
自分で自分がボスとして登場したとして、ゲームクリアする自信がない。
どーもどーも、ヤケクソボスのきゅうけいさんです。
やられイベントボスですが、私は襲いかからないので素通りしてどうぞ。
勇者の代わりに、さくっと他の魔王を倒しておきますので。
その前に。
「たべよー」
「いつもどおりとしか言いようがないぐらい、きゅうけいさんですね……」
「わあっ! きゅうけいさんの料理ですぅ!」
本日帰還して、今日は弥々華さんの歓迎会。
まずはなんといっても、パオラさんだよね。
弥々華さんは、ヤマトアイランドでパオラさんとずっと一緒にいたのだ。
「筆頭眷属に格上げされたということだけど、すっかりあのちんちくりん年増がこんなに生意気なほど立派になって」
「一言二言どころではないほど、余計なことを喋るなお主。まったく、我のこと何と思っているのか……一応藩主の妻、王妃みたいなものなのだぞ?」
「それに見合った見た目になったのがなんか腹立つの」
「自分の姿を棚に上げておいて、よう言うわ」
弥々華さんはそう言いつつも、ふっと笑って手の中にある盃を持ち上げる。
パオラさんは、ニヤリと笑ってその盃に自分の升をこつんと当てた。
二人の手元にあるのは純米大吟醸。同時に一気飲みして、互いの再会を祝福しつつからりと笑う。
……うーん、素晴らしい。
大人美女コンビ、再び。
今回は九尾の弥々華さんがフェニックスのパオラさんと同じ身長になったので、実にいい雰囲気です。
ごちそうさまです。
「……ありがたやありがたや」
ちなみに胸のサイズも並びました。
弥々華さん、今だとマジで国ぐらい傾けられそうですね。
もはや岩とかに封印できないぐらい強いですが、ばりばり人間の味方なのだから頼もしい。
さて、弥々華さんは来たばかりということで、洋食は当然そんなに食べてないとのことです。
これは、私の腕の見せ所だね!
ていうか個人的に食べていただきたい!
こういう日のために、とにかくいろんなものを集めてました。
そして料理の作り方やその味は、ルマーニャのレストランでしっかり覚えましたとも。
「ってわけで、今日振る舞う料理はこちら!」
みんなの手元に現れた料理は、自信作でございます。
「……これ、ステーキにトリュフですか……!」
「ふっふっふ、食べてみて!」
シルヴィアちゃんが早速、お口に入れる!
と同時に、疑問を呈した表情で固まった。
ここまでは予想済み。
「……。あ、れ? これ、違いますね。味わい深いのですが、トリュフでもポルチーニでもない。これは一体?」
「——椎茸、だな」
「懐かしい、確かにコレ椎茸ね」
「え?」
答えを言ったのは、もちろん弥々華さん! そして同じ国の食事を食べていたパオラさんも。
そう、乗っているのは大変いいかんじの椎茸です。
「驚いたぞ。洋食の味であるのに、まさか我にも馴染みのある椎茸が載っているとは」
「えへへ、どーです? 意外と合いますよね」
「うむ。大変に美味で味わい深い。あの椎茸が、ここまで存在感を出すとはな。味付けも大変に良い……店の料理以上の良さだ」
弥々華さんも満足してくれたことで、目的達成!
もちろん竜族の村の、普段仲良くしてるみんな一緒に集まっての食事でした。
生活魔法で一度に作ってしまうのも簡単になって、これぐらいなら手間になりませんとも。
誰かの喜ぶ顔ってのは、それだけですーぱーえねるぎーになりますね。
だからこれは、報酬受け取りみたいなものです。
そして……事前のやる気チャージです。
食事が終わると、私は食器を片付けて、すぐに村を出た。
ダンジョン。ルマーニャ北。何事もなく攻略。
ダンジョン。ルマーニャ北北東。すぐ攻略。
ダンジョン。ルマーニャ北東。最下層攻略。
「ちょっとコーヒーブレイクしよう」
「食べたばっかりじゃないですか」
シルヴィアちゃんのツッコミを受けて、お菓子も受け取る。
コーヒーをゆっくり楽しみながら、みんなで笑う。
お守りをくれたので、嬉しくなって思いっきりハグしてぐるぐるしちゃった。
赤面シルヴィアちゃんかわいい。やっぱりこの子は、出会ってからずっと私の最高の天使。
ダンジョン。ルマーニャ更に北。お菓子を食べながら攻略。
ダンジョン。北の更に北。さくっと踏破。
ダンジョン。そこから北西。魔物強めだけど何もなし。
「コーヒーブレイクしよう」
「さっき淹れたものがまだ温かいですけど」
ですよねー。
今度はエッダちゃんが、ホールケーキの八分の一を私にくれた。やっぱりエッダちゃんは、ずっと癒やしの天使。
まあエッダちゃん、残り八分の七を一人で食べて、栄養全部胸にドーンですけどね!
ダンジョン。ルマーニャというより、更に北のエスタリア王城の南。攻略。
ダンジョン。エスタリア南西。攻略。
ダンジョン。エスタリア西南西。攻略。
攻略。攻略。攻略攻略攻略……。
……エスタリア、確かゲームでは終盤ではあったんだよね。
ルマーニャが序盤の街なんだけど、高い山に遮られてエスタリアには最初来られないのだ。
竜族の村に来た人もいるだろうから話は通ってるはずだけど、実際に私が街に向かったわけじゃない。
私の姿、見られないようにしないとね。
それにしても、こんなにダンジョンって多いんだ。
ゲームでは実装されてないものばかりだから、すごく新鮮。
ちゃんと一つ一つのダンジョンに特色あって、洞穴みたいなのだけじゃなく湖や滝がある場所とか光る森みたいな場所もあるよ。
ばりばりローラー作戦しております。
一人だけどローラーの幅ぐらいは一人でできますね!
一人人海戦術みたいな攻略速度ですイエーイ!
楽しいダンジョン探索、もっとゆっくり見て回りたいけど、そうもいってられない。
あの津波みたいなのが再びやってきたとして、タイミング良く防げるかどうかというのは難しい。
魔物じゃないからね、海。やってきてるかどうかってのはレーダーじゃわかんない。
天気予報モードとかないもん。ゲームの天候、常に一定。
次のダンジョンは……ああ、これはゲームでも行ったところだね。
終盤の方で複雑なダンジョンだけど、まあ覚えているので問題なし。
すんなり記憶通りに攻略していき、ダンジョンなんだか遺跡なんだかわかんない建物をすいすい進んでいく。
彷徨う鎧の銀騎士さんこんにちわ。黒騎士さんもこんにちわお久しぶり。
みんなマラソンで大変お世話になりました。それではさらば!
ばしっと倒して、武器とかも回収していきました。
レアドロップとか関係なく無理矢理奪って確定ドロップ扱いにできるので、ゲームルール無用のぶんどり攻略は楽しいね。
それじゃ、最下層の方に行きますか。
一番下は、なんか闘技場みたいになってる。
その中に紫のデーモンがいて、倒したらアイテムゲット。
ラストダンジョン前のボスである。
いるかな? と思って入ってみる。
普通にいるかと思ったんだけど……なんと、誰もいなかった。
うーん、結構差異があって、このあたりは分からないなあ。
と、思いながら真ん中に進むと——体が光り始めた。
これは、覚えている。
あの時ルフィナさんがいたから、私はこれを知っている。
そうか。
ルシファーは、私がここに来ることを読んでいたか。
目の前が、闘技場から暗い洞窟の広場になった。
「いい加減、ここまで来て逃げるなんてヘタレじゃないでしょ」
ルシファーは『傲慢』の魔王。
こう声をかければ、きっとサタンみたいにキレたりするんじゃないかな。
何を用意しているかは分からないけど、やることは一つ。
ルシファー。そして——この先にいるであろう、ベルゼブブの討伐だ。






