きゅうけいさんはめっちゃ上げていた
ダンジョン第二階層探索開始!
やはりレーダーの範囲は明らかに狭いみたいで、地上の様子が全く分からなくなった。
ま、気にしても仕方ないね。ちゃちゃっと調べてちゃちゃっと戻りましょう。
第一陣は、エッダちゃん!
ちょー可愛い顔とセクシーボディの人気アイドル間違いナシなお姿をしていますが、今のエッダちゃんのレベルは5080。
もう普通に伝説の戦士というか、おじいさまおばあさまの世界に入っていると思います。
多分シルヴィアちゃんと組めば普通にケルベロス討伐できる。
第二層の最初の魔物は……なんだろあれ。
オークなんだけど、なんちゃら男爵みたいに顔が赤と黒で分かれてる。
いや、これはゲームの方の6で出てきた全身鎧の敵の方が近いかも。
なんちゃら男爵、こういう世界に転生してみると思うけど、貴族でありつつも爵位としては低めなんだよね。
なにはともあれ、今は目の前の変なオークだ。
「えーい!」
エッダちゃんの相も変わらず可愛すぎるかけ声とともに、矢が飛んでいく。
ただ……その音はサーキットカーみたいだった。
矢と魔物が衝突した瞬間、私のスペックに見合った視力によるスーパースローカメラが、黒赤オークの身体がゆっくりとひしゃげていく様子を映し出す。
スローカメラで頬を打ったら波打つ映像とか、ああいうノリでゆっくり……ゆっくり……?
……なんか、身体がそのまま凹んでいき、背中から血とか骨とかが出て、まるで衝突地点から身体の全てを食い荒らすようにメリメリと肉体が潰れていく。
顔も全部潰れそうだな、と思ったところで私はまばたきした。
ここから先、全部見る必要はないですね、はい。
結果を言うとですね。
時間差ゼロで矢が着弾し、着弾と同時に明確に上位種みたいなオークが風船に針を刺すように割れました。
「……」
矢を射た本人が、そのポーズのまま口をあんぐり開けている。
シルヴィアちゃんも、私も、おんなじ顔。
そんな中で、クローエさんだけがいつも通りだった。
「レベル以上に動きの正確さがいいな。丁寧に修練を積んでいる」
その声にようやくフリーズから復帰したエッダちゃんが、私の方を向いた。
「えっ、えっ!? わ、私何が起こったんです!? 今の何だったんですかぁ!?」
「お、落ち着いて、エッダ。あれはえっと、きゅうけいさん!」
「見えたよ! なんかすごい一瞬でびゅんっていってどーん! 背中から内臓とかばーんでなって、それで風船みたいにぱーん!」
「ああもう肝心なところで全然ダメですね!?」
はい。
今のは我ながらほんとどうしようもない説明でした。
「いやあんなもんだろ、レベル5000の闇魔矢なら、そのちょい上……レベル6000のアイアンゴーレムのパンチぐらいの衝撃弾だ。イビルオーク相手じゃ魔力を載せる必要もないだろう」
クローエさんから解説が入りました。
はい、レベル5080のエッダちゃんの強さ完全に侮ってましたね。
「はわわ……て、手加減も覚えないと……」
これだけデタラメに強いのに、未だに『はわわ』というのがすごい。
最強はわわダークエルフ。
凄まじくギャップのある子を育ててしまったのではないでしょうか。
……と思ったけど。
ギャップという意味では、カルメンお母様ほどキャラの濃い人はいらっしゃいませんでしたね……。
「ホラ、ちゃちゃっと行くぞ。きゅうけいさんも上はもう見えないはずだし、こんなダンジョン、すぐに抜け出さないとな」
そんな中で、レベル9821の元筆頭眷属クローエさんは実にマイペース。
「そだね、さっきは初めてエッダちゃんの実力を見たけどレベル5000ならこれぐらいだし、慣れていこう!」
「……初めて? 以前はいくらだったんだ?」
「200とかそれぐらい?」
「……。そりゃ、まあ、驚くわな……」
ですよねー。
とまあそんなどこか緊張感に欠ける我らが最強パーティーは、どんどん先へと進むのだった。
次の階では紫の横縞というヤバい感じのオーク。
ただまあシルヴィアちゃん相手だと完全なるザコでしたね。
途中現れたサーベルタイガー系の魔物も、見たことがない色。
もちろんシルヴィアちゃん相手だと誤差もいいとこでしたね。
挟み撃ちも後ろからの魔物も、エッダちゃんとクローエさんで対処。
私はというとですね。
「……(もしゃもしゃ)……あ、次は左ね」
ナッツ食べながら指示してるだけです。
いやー楽だね。
これからベルゼブブ探りに行くのに、どっちが暴食だかわかったもんじゃないって?
これはね、休憩時間なのです。
怠けているのであって、決して暴食してるわけじゃないのです。
「あ、エッダちゃんも食べる?」
「食べたいですぅ!」
私は自分のアイテムボックス内に溜め込んだピスタチオをぱらぱら落とす。
ちなみに落とす際に魔法で全ての殻を割りました。
指で一つずつ取っていくのもいいけど、机がないと片手じゃ食べづらいよね。
「本当に遠足ね……」
「なんだかこういうパーティー組んでのんびり行くことがなかったから、俺は新鮮で楽しいよ」
「それはあたしも一緒かな、二年ぐらいはソロだったし」
働き者のお二方にお礼を言いつつ、私はエッダちゃんを愛でる大切な作業に戻ります。
みんなと遠足たのしいな。
いえいえ、ちゃんと真面目に探索ですとも。
……それにしても、この辺りの魔物ってレベルいくつぐらいなんだろう。
圧倒してるから何とも思わないけど、オレスティッラさんのソロでは厳しいんじゃないだろうか。
代わってよかった。
この豚の見た目の魔物。
そしてやたらはらぺこ肉食獣みたいな魔物。
間違いなく上位種と分かる魔物の数々。
これは『未実装DLC』の魔物だ。
私はそいつらの姿を見ながら、まだ見ぬ魔王をその後ろに幻視した。
この下に、何らかの答えがあるはずと思いつつ。






