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きゅうけいさんはもちろん加える

 それでは準備完了! いざ出発!

 というノリでシルヴィアちゃんを見ていたら、ここで視界の端に走ってくる人がお一人様ご来場。


「おーいっ!」


 金髪を揺らして手を振る、お姫様系美女。

 あれは、もしかして。


「ビーチェさん?」


 マーメイドのビーチェさんが、立ち幅跳びの要領で、ぴょんっと跳ねる。

 ……って、なんかすっごい跳んでる! そして……ベルさんの近くに着地っ!


「おはようございます、マモン様、ベルフェゴール様」

「おはようですネ、ビーチェ」

「んもう、ビーチェちゃんもベルお姉ちゃんでいいのにぃ……」


 ビーチェさん、ベルさんに向かってちょっと頭を掻いて気まずそうにする。


「あはは……さ、さすがにベルフェゴール様をそう呼ぶのは……」

「……そうだねぇ、私のこと、どういう魔王なのか全然知らないもんね。私も以前の自分ってあまり実感ないけど……またゆっくり、私のことを知っていってね」

「はい、申し訳ありません」


 ベルさんは「いいよぉ〜」と少し寂しそうに手を振って一歩下がる。ビーチェさんも心苦しそうにぺこぺこ身体をすくめながら首を下げて、こちらへ向き直った。


「えっと、それでね……きゅうけいさん。あ、リーダーならシルヴィアさんの方がいいかな」

「きゅうけいさんでもいいけど、何かしら」

「今から任務なのよね。私、ついていっていい?」


 なんとっ!

 今度の任務、ビーチェさんが参戦立候補してきた。

 びっくり。

 もちろん……嬉しい提案!


 私はシルヴィアちゃんの方を見て満面の笑みでぶんぶん縦に首を振る。それはもうヘビメタのヘッドバンギングぐらい首を振る。

 シルヴィアちゃんは私を見て天使スマイルでくすりと笑って頷き、ビーチェさんの方を向く。


「断るつもりはないと前もって伝えておくけど……それでも突然で驚いたわ。理由を聞いてもいいかしら?」

「理由、分からない?」


 ビーチェさんが、ちょっと不満げに腕を組んだ。

 シルヴィアちゃんとエッダちゃんと、目を合わせる。


 理由はもちろん……。


「あんまりパーティーメンバーらしい活動に参加してないからかな?」

「長い間留守番だった、とかかしら?」

「パオラさんとイデアさんは、ずっと一緒だったからですかねぇ……?」


 三者三様の答えになったけど、大体一致していた。

 ま、よーするにビーチェさんが、あまりに別行動すぎて一人おいてけぼりで、しかも旧い友人二人がめちゃんこ一緒に外の世界で一緒にいたから、という予想である。

 もちろん当たった。


「そーなのよーっ! もー、昨日みんなと別々に寝たでしょ? 二人とも自慢するの自慢するの! キーッ!」


 わーっ、キーって言う人初めて見た!

 ていうかパオラさんとイデアさん、そんなに旅のことおしゃべりしてたんだ。


「そりゃ大変だったのは分かるわよ? でもね、それはそれ、これはこれ! 羨ましいのっ!」

「な、なるほど……」

「あと、きゅうけいさんはずいぶんとおいしいものとか、お菓子とか沢山作ったりしたらしいじゃなぁ〜い?」


 あっ、そんなところもおしゃべりしちゃいましたかっ!?

 ええーっパオラさんもイデアさんも、あの大変だった事件の内容よりお菓子の話するとか食い意地張ってるんじゃないんですかっ!?


「違う違う、ミミちゃんだって」


 花より団子な女の子でしたーっ!

 そりゃミミちゃんにとっては、村で遊んだこと以外は、お菓子食べたことが思い出ですよね!


「ま、そんなわけで私も、みんなとの思い出、もーちょっとほしいなって思ったの!」

「そうね。あたしもビーチェさんのこともっと知りたいし。一緒に行きましょう」

「やったわ! 役に立つわよー? きっと最後には『最高だった』とか言っちゃうわよー?」

「ふふっ、どうかしら? あと、シルヴィアでいいわよ」


 最後にそう言うと、「【ドラゴンフォーム】」と言って光り、そこには一日ぶりの古竜シルヴィアちゃんの姿。


 私はその広い背中に飛び乗り、エッダちゃんが跳んでくるのをキャッチ!

 そして左脇に抱えて、ビーチェさんに手を振る。

 役に立つと言い切った新人パーティメンバーのビーチェさん、どこまで役に立つのか期待大です!


「こっちこっち!」


 ビーチェさんは、軽くつま先で跳んで、そのまま私の真横へふわりと音もなく綺麗に着地。

 いやほんと、さっきから身体能力高いですねマッチョ人魚さん。もうマーメイドフォームじゃない方が慣れてません?

 ……マッチョ人魚って言ったら絶対怒るし、ちょっと暴れたらどんな影響があるか想像できない。

 迂闊に声に出さないようにしよう……。


「それじゃ、シルヴィアちゃん! よろしく!」

『グガァァァ!』


 気合い一発、叫び声をあげて、シルヴィアちゃんが飛び上がり、ふわっと浮遊感が漂う。

 ヴェアリーノまで、シルヴィアちゃん航空で快適空の旅開始だ。




 最初は私の腕を掴んでいたビーチェさんも、高度が上がるにつれて「え?」と驚きの声を上げながら手を離した。全く揺れないから感動するよね。

 そして……なんとシルヴィアちゃんの背中の上で立ち上がって、片足立ちした!


「すっごーいっ! シルヴィアの背中、全く揺れてない! 筋肉の動きは感じられるのに、風は全くないし水平がブレない!」


 ビーチェさん、両足ついたと同時に、手を使わずに地上をのぞき込む!


「村があんなに小さい! 雲も……あっ、雲ってこんなに何層も、特定の高度にだけあるのね。わあ……!」


 ビーチェさんは今度は、真上を見ながら両手を広げて大きくゆらゆら揺れたり、ぐるぐる回ったりしている。


 ……あの、あのね?

 言わせてください。


 ————度胸お化けですかこの人!?


 私最初にシルヴィアちゃんの背中に乗ったとき、背中にがしっとしがみつきながら、恐る恐る地面を見てようやく『気持ちいい〜っ!』って感じだったのに、片足立ちになって地上をのぞき込んだり空を見ながら回ったり……いやほんとびっくりだよ!?


「はわわわわ、はわわ、はわわ、はわはわわ……」

「エッダちゃんが代わりに怖がっているっ!?」

「はわはわはわわ、はわはわはわわ……」

「なんか短歌みたいになってるっ!?」


 エッダちゃんマジびびり中なところ申し訳ないですが、共感性なんちゃらというやつで多分恐怖感覚が自分のことのように伝わってるのは分かるのですが……。


 ……お陰様でしがみつかれている私の横腹は、再び安定の幸せサンドイッチの具になっています!


 ありがとうビーチェさん、あなたを連れてきた甲斐がありました。

 もう任務成功と言っても過言ではありません。


『……グルルゥ……』


 や、やだなーも、冗談冗談……ちゃんとやりますって……。

 それに、今回は私のクリアエリクサーが再びお役に立ちそうだし。


『……』


 ちらっとシルヴィアちゃんが納得したようにこちらを見て頷いて……そこでようやく、ビーチェさんが最早ダンスか何かってぐらい両足立ちであっちこっちうろうろしていることに気がついた。

 目がくわっと開く。いやー、目は口ほどにものを言うとはいったものだけど、ほんとシルヴィアちゃんの言いたいことわかるよ。


 人は見た目によらない、ってこと、今日も思いましたねー。

 悲恋の人魚姫そのものの見た目をした金髪お姫様ビーチェさん、中身は身体能力と度胸が突出しまくった、おてんば姫だった。


 古竜で初クエスト、おてんば姫ビーチェの冒険。

 うん、やっぱりビーチェさん格闘家タイプだよね。


 -


 雲の下に、小さく広がる城塞都市が見える。周りは草原と森と山と、いろいろありの街。馬車がちらほら見える。

 シルヴィアちゃんは街に近づくにつれ高度を上げ、雲の上にまで隠れた。不要な騒動は避けるつもりというのと、私に配慮してのことだろう。


 それから少し経ってシルヴィアちゃんが降り立ったのは、森と山の間ぐらいの、かなり街から遠めの場所。

 みんなで山肌に降り立って森の方へと入った直後、シルヴィアちゃんが人間形態になって森の中で合流。


 よーし、『異種族友の会』ヴェリアーノでの任務スタート!


「それじゃリーダー、指示をお願い」

「ええ。まずはきゅうけいさん、レーダーをお願いします」

「りょうかいっ! 【レーダー】!」


 私が景気よく魔法を使って……。


 ……鎧姿になる。


「えっ!? きゅうけいさん!?」


 油断大敵、相手も本気ってことだね。

 反応位置の違いから、まだ救出まで間に合う。


 私は黙って剣を取り出し、十一時方向を指さす。


「敵! 来てる!」


 手短に伝えて、先陣を切った。

気がついたら投稿編集画面が2ページ目になってて、100件超えたのに気づきました!

これだけ続けて来られたのはブックマークしてくださる皆さんのおかげ! ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 100話達成おめでとうございます! これからも執筆頑張ってください! 目指せ!200話!
[一言] 100話達成おめでとうございます!これからも仲良くほのぼのしたきゅうけいさんたちが見れることを楽しみにしてます!
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