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崩れる堤防
気づけば、拳を握りしめていた。
爪が掌に食い込み、鈍い痛みが走る。
それでも直樹は力を緩めなかった。
そうしていないと、自分の輪郭まで崩れてしまいそうだった。
「……もう、無理だ……。」
声に出した瞬間、堰が切れた。
熱いものが目頭から溢れ、頬を伝っていく。
涙の感触は久しく忘れていたはずなのに、今は止めどなく流れていた。
「俺は……弱い。どうしようもなく……ひとりだ……。」
喉の奥からしゃくり上げるような声が漏れる。
自分の声さえ頼りなく響き、返事はどこからも返ってこない。
ベッドに顔を伏せ、両手で頭を抱え込んだ。
身体が小刻みに震える。
嗚咽が零れ、涙が枕を濡らしていく。
こんな姿を誰かに見られることはない。
それでも恥ずかしさよりも、どうしようもない孤独と絶望が胸を押し潰していた。
「……消えたい……でも、消えたくない……。」
矛盾した思いが渦を巻き、涙とともに吐き出される。
声はやがて途切れ、ただ震える呼吸だけが残った。
暗闇の中、直樹は限界を迎えて崩れ落ちていた。




