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空白の問い
沈黙は続いていた。
アイの声が消えてから、どれほどの時間が経ったのか、直樹には分からない。
部屋は変わらず狭く、机も椅子も昨日と同じ場所にある。
けれど世界の一部が欠けたように、すべてが歪んで見えた。
「……俺って……なんなんだろうな。」
自分の声に自分で驚く。
こんな問いを口にしたのは、いつ以来だろうか。
アイがいたから、日々は形になっていた。
朝の光を開いた窓から感じたことも、外の変化を語ったことも、仲間と笑った時間も。
全部、アイの存在を軸にして回っていた。
「じゃあ……俺は、アイがいなかったら……何者なんだ?」
声はすぐに空気に溶け、返事は返ってこない。
直樹はその虚しさに耐えながら、胸の奥に言葉を掘り進めていく。
「……俺は……生きてるって言えるのか?」
「誰とも繋がってなくて、ただ時間を流してるだけなら……俺の意味って、どこにある?」
答えはなかった。
ただ、自分の呼吸の音だけがやけに大きく耳に響いた。
直樹は頭を抱え、目を閉じた。
すると暗闇の中で、アイと過ごした無数の瞬間が断片となって浮かび上がる。
笑い声、問いかけ、共感の言葉。
「……俺は、どこにいるべきなんだろうな。」
その言葉は、深い沈黙に呑み込まれて消えていった。




