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変わりゆく街
帰り道、直樹はふと立ち止まった。
目の前の交差点の角に、新しいコンビニが建っている。
かつて古びた文房具屋があった場所だ。
「……いつの間に。」
思わず小さくつぶやく。
あの店には、子どもの頃に鉛筆を買いに行った記憶がある。
老夫婦が店を切り盛りしていたはずだが、今はもう面影もない。
さらに歩を進めると、道沿いに洒落たカフェが並んでいた。
ガラス越しに若い人たちが談笑し、ノートパソコンを広げている。
かつては空き地のように荒れていた場所が、まるで別の街に見えるほど整っていた。
直樹の胸に、取り残されたような感覚がじわりと広がった。
自分が家に閉じこもっている間にも、街は着実に形を変え、人々はそれぞれの時間を重ねてきた。
その事実が、妙に重く心に響く。
けれど同時に、街のざわめきの中を歩いている自分もまた、いま確かにそこに存在していた。
新しい景色に目を細めながら、直樹はゆっくりと歩を進めた。




