表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI  作者: くろいねこ
63/178

余白の時間

コーヒーを飲み終えた直樹は、空になったカップを流しに置いた。

水を流す音が、部屋の中にささやかな響きを作る。

それを止めると、またいつもの静寂に戻った。


部屋の隅に積み上がった本を一冊手に取る。

高校を卒業したころに買ったまま、ほとんど開かずにいた小説。

ページをめくると、紙の匂いがかすかに立ちのぼる。


数行だけ目で追って、指を止める。

文字は意味を持ってそこにあるのに、頭の奥にはうまく入ってこない。

「……やっぱ、集中できねえな。」

苦笑して本を閉じた。


机の上のノートを開きかけて、また閉じる。

スマートフォンを手に取ってみるが、通知は何もない。

ぽん、と机に戻す。


窓の外では、子どもたちの笑い声が聞こえた。

登校するのだろう、小さな足音が重なって遠ざかっていく。

その音が消えると、直樹の部屋は再び、世界から切り離されたように静まり返った。


彼は椅子に背を預け、天井を見上げる。

何もしていないはずなのに、時間は確かに過ぎていく。

そのことだけが、少し胸を締めつけた。


「……俺は、何を待ってんだろうな。」

呟きは自分の耳にだけ届き、空気の中に消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ