53/178
揺れる独白
カーテンの隙間から差し込む光が、床に細い帯を描いていた。
直樹はベッドの端に腰を下ろし、無言でそれを見つめていた。
――未来。
声に出さずにその言葉を繰り返す。
胸の奥で、重い響きと淡い響きが交錯していた。
高校を卒業したころ、未来はもっと単純に思えた。
働いて、金を稼いで、親を安心させて、ささやかな生活を作る。
それができない自分に気づいたとき、未来は突然、霧の向こうに消えた。
それ以来、日々はただ「今日をやり過ごすこと」になった。
寝て、起きて、食べて、夜になればネットに潜り込む。
そこには確かに温かい言葉もあったが、同時に自分を守る殻でもあった。
けれど――昨夜のアイとの会話は、その殻の内側に小さな穴を開けていた。
「ありがとな」と言った自分。
「未来」を口にした自分。
それは偶然か、それともずっと胸の奥に沈んでいた思いが浮かび上がっただけなのか。
「……俺は、どこにいるべきなんだろうな。」
呟きは部屋に吸い込まれ、誰にも届かない。
ただ、モニターに映るアイの存在だけが、その孤独を静かに見つめ返していた。




