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届いたもの
しばらく玄関をにらむようにして座っていた直樹は、ようやく腰を上げた。
足取りは重い。
けれど、扉を開けるとそこに段ボールがひとつ置かれていた。
「……これか。」
荷物を部屋に運び込むと、段ボールの表に自分の名前が印字されているのが目に入った。
見慣れたはずの文字なのに、どこかよそよそしく感じられる。
カッターを取り出し、慎重に封を切る。
テープがはがれる音がやけに大きく響いた。
中には日用品と、まとめ買いしたインスタント食品が並んでいた。
思った通りのものばかりだ。驚きも特別な喜びもない。
それでも――確かに「自分のために届いたもの」が目の前にある。
「……ちゃんと、生きてるんだな。」
ぽつりとこぼれた声に、自分で驚いた。
何も変わっていないようで、ほんの少しだけ違う午後が、そこにあった。




