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報告とアピール

「深鈴、奏音ちゃん、ただいまあ~」


「お帰りコウ。さて、どんな収穫があったのかな?」


「コウにいちゃんおかえりー!おみやげばなし、きかせてー!」


 やっと帰って来れた。我が家に!


「コウ、ここは私の家だよ。コウの家じゃない」


「分かってるよ深鈴、それくらい。帰ってきた喜びを味わいたいだけなんだから、さらっと流してくれれば良いの」


「はいはい。帰って来れてよかったねー」


 本当にさらっと流された!?いやまあ、そうしてって頼んだけどさ。必死で帰って来たんだから、もっとねぎらってくれてもいいんだけどなあ。


「で、どうだった?うじうじしていないで早く教えて」


「ええ~どうしようかなあ~」


「コウにいちゃんはやくはやく―!」


 可愛い奏音ちゃんには教えてあげよう。






「ふむふむ。会社のパンフレットは後で見させてもらうとするとして。奏音ちゃんのお母さんに会ったのか。これは大きな収穫だよ、コウ」


「ほんと!?お給料無しにならない!?」


「ああ。本当は、社内の写真とか撮ってきて欲しかったけど、下手したら犯罪になってしまうからね。コウ、今回はよくやった」


「やった!」


「えっと、じきゅう1500えんっていうのは、たしかいちじかんに1500えんもらえるっていうことだよね。コウにいちゃんは、ぜんぶで28じかんくらい、しゅっちょう?にいってたから、もらえるおこづかいは42000えんだね!」


 計算早っ。さすが。


「えっ!?本当!?借金返済しても2000円余ってるの!?それってお小遣いになるんじゃ!?」


「2000円は交通費に落とさせていただくね」


「そんなあ……」


「いいんだよ?コウのお小遣いにしても。でもコウ、交通費3000円超えてたよね?端数も払ってあげようと思っていたのにな」


「ごめんなさい交通費として落としてください!」






「では、私はパンフレットを読んだりしているから、コウは奏音ちゃんと一緒にリンリンに行ってきなさい。私のおごりでいいから」


「ほんと!?ありがとうみいちゃん!」


「みいちゃんって誰?」


「私の事だよ。『みすず』は言いにくそうだったから、『みいちゃん』と呼ばせているんだ」


 へええ。ネーミングセンスが悪い、なんて言ったらダメな気がする。せっかくの深鈴のおごりが消えてしまいそう。






「じゃあ行ってくる」


「いってっきまーっす!」


 奏音ちゃんが元気よく手を挙げて言う。とっても可愛い。


「あ、コウ、今は夏休みだよね?どうせなら宿題もやってきなさい」


「はぁい」


 宿題をとるため、一度家に帰る。母親は夏休みだというのに仕事だ。なんでも、秋の行事に向けてやることがあるらしい。ちなみに父親は単身赴任で千葉に行っている。つまり、家には誰もいない。


 あ、そういえば妹がいた。最近反抗期なもんで、全然口をきいてくれないものだから、忘れていた。でも妹もきっと友達と遊んでいるんだろう。


「今は誰もいないから、奏音ちゃんも入っていいよ」


「……」


「奏音ちゃん?」


「……う?あ、ううん!かのん、あそこでまってる!」


 と、家のすぐ隣の公園を指さす奏音ちゃん。どうしたんだろう。まあいっか。隣だし。


「変な人とか、知らない人にはついて行ったらだめだよ。絶対にだからな。おいしいものをあげるって言われてもだめだぞ。無理やり連れていかれそうになったら、大きな声で助けを呼ぶんだぞ」


 奏音ちゃんは見ず知らずの俺にもついて行ったことがある前科があるため、口を酸っぱくして言っておく。


「うん!」


 ちょこちょこと走って行って、砂場で遊び始める奏音ちゃん。木の棒を拾って穴を掘り、ものすごいスピードで砂山を作っている。

 俺はざっと辺りを見回し、人がいないのを確認してから家に入った。


「ただいま」


 2階に上がる。


「えーっと、宿題はどこに置いたっけ。そうだった、やりたくなさ過ぎて引き出しの奥深くにしまったんだった」


 ひっじょーーーうにやりたくない、だが終わらせねばならないモノたちを取り出す。


「さて、リンリンに行くか」


 自分の部屋を出ると、隣の部屋から女子の笑い声が聞こえてきた。妹とその友達だろう。






 家を出て、公園に奏音ちゃんを迎えに行った。


「奏音ちゃ~ん、リンリンに行くよ~って、ええええっ!?」


 奏音ちゃんの姿が見えない。も、もしや誰かに連れ去られた!?と、さっき奏音ちゃんがいた砂場のほうへと向かってみると。


 ガシュッガシュッ、ガシュッガシュッ。


土を掘る音が聞こえてくる。


「まさか……!」


そのまさかだった。奏音ちゃんが遊んでいた砂場には大きな山ができており、傍らにはさらに大きな穴がどーんと空いていた。その穴の中から絶えず砂が飛び出してくる。


「おーい奏音ちゃん、そろそろリンリンに行くよー」


声をかけると、穴の中から、


「いまトンネルほってるから、ちょっとまってー!」


と元気な声がわんわんと反響しながら返って来た。どれだけ大きな穴を掘っているのやら。


「何分くらい待てばいいー?」


「3ぷんくらーい!」




きっかり3分が経つと、


「ぷはっ!」


さっき奏音ちゃんがほっていたのとは反対側の砂の中から奏音ちゃんの頭が飛び出してきた。


「コウにいちゃん、どうくつみたいなのができたよー!なかにはいってみてー!」


「うーん、俺が入ると崩落しそうだからいいや」


「そうかあ。じゃあ、ごはんたべにいこう!あ、でもちょっとまってて」


奏音ちゃんはご丁寧にも、地面に『あなにおちるかもしれないので、ちゅういしてください』と書いていた。せっかく掘った穴を埋めるのはもったいないのだろう。


「コウにいちゃん、ごはんなにたべようね!」


「俺はまだ頼んだことのない、デミグラスチーズハンバーグオムライスにしようかな」

話が膨らみにくく、四苦八苦していました。遅れてすみません。

次回、ご飯を食べます。

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