立て込み
立て込み
一ヶ月が過ぎた。
その間黒田は、寺の仕事を精力的にこなした。
「今日から材の立て込みに入るよ。それが済んだらいよいよ火を入れるからね、心の準備はいいかい?」慈恵は黒田を促した。
「はい、覚悟はできています」黒田の顔は輝いている。
「じゃあ、まず細い材を窯の奥の方に立てる、窯の中央に行くほど太い材にするんだ。何事も丁寧にやるんだよ、慌てると失敗する」
「はい」
「その時、材の根っこのほうを上にして直立に立て込む。材と材の間に隙間の無いように立てるのが基本だよ」
「わかりました」
「それが終わったら、上木の積み込みだ」慈恵は次の工程の説明をした。
「上木?」
「細い枝木を窯の天井までぎっしりと詰め込む」
「いよいよ火を入れるのですね?」
「ああ、まだ予備乾燥の段階だけどね」
「楽しみだな」
「立て込みが終わったら教えるんだよ、口火を入れる前に見たいから」
「ラジャー!」
「クロちゃん、それやめろ。上官になった気分だ・・・」
黒田はまず細い材から立て込みを始めた。
「あれっ、どっちが根っこのほうだっけ?」
独り言を呟きながら、材を一本一本丁寧に立ててゆく。
次に中位の材を立てる。割った材は上下の判定が難しい。
「そうか、太いほうが根っこに近いよな。じゃあこちらが上だな」
なんとか太い材まで立て終わった。もうすぐ火入れだと思うとワクワクする。
「次は上木の積み上げだな。爺さんのノートには太い枝から積み上げ天井に向かって細くする、と書いてある」
狭い窯の中で、四苦八苦しながらやっと最後の上木を積み上げた。
「さあ、慈恵さんに報告に行こう!」
黒田が報告に行くと、慈恵は仕事の手を止めて窯の様子を見に来た。
「おっ!綺麗に立て込んでいるね、あと窯口の付近を密にしたら合格だ」
「ありがとうございます!」
「それが済んだら、台木に枯れ木や皮付きの燃材を横積みにするんだ、その上に囲炉裏から炭火を持って来て置いておけば点火する」
「火がついたらどうしますか?」
「十分に火がついたら太い材を乗せていく。あとは火を見ながら二、三日口焚きだ」
「口焚き?」
「予備乾燥のことだよ」
「火の勢いが強まったら、通風口と焚き口を残して窯口を塞ぐ」
「レンガと赤土が要りますね」
「レンガは窯の横にあるからね、赤土は修理の時に使ったから分かるだろう?」
「イエッサー!」
「だから、やめろって!」
黒田は、自分の性格がどんどん変化していくことに驚いていた。




