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純土属性の受付嬢がいるので、探索続行が可能だと判断したフォレボワ・ギルドの受付嬢は再三落盤の注意を促したあと、俺たちと一度ギルドへ戻る。
「変た……プリヘーリヤさんに手紙とは、この洞窟と地殻変動云々の関連ですか?」
町の近くまで来たところで、シャルロッテが聞いてくる。その通りなので、頷くと、なるほどと納得してくれた。
「成程ナ。動くかラ、落ちるカ」
一緒に歩いていた、受付嬢も言葉の端から正確に読み取り、感心してくれる。この以心伝心感は本当に有り難いと知ったのは、ヴェント・ギルドの受付嬢の体たらくを見てからだったと、わりと数日間のことなのに、遠い昔のように思う。
「確かに、ナスターシヤちゃんに聞いても大丈夫とは思いますが、専門家に意見を仰ぐほうがいいですね」
「まあ、人命がかかってなければ、ナスターシヤに訊ねるのが手っ取り早くもあるけどな」
ただ、ギルド登録しているとは言っても、十歳くらいの子供に今後、責任が生じるような意見を求めるのは酷だ。あの無表情でしれっと責任ある発言をしてくれそうではあるが。
「落盤の原因が揺れにあるのならば、現代だと発生しませんし、一般人にも探索がお願いできますね」
違っていたときは、任せた一般人に被害が出るため、ナスターシヤに訊ねるという考えは最初からない。シャルロッテも納得して一緒に書面を考えてくれる。
ギルドに戻ると、受付嬢から緊急用の伝言用紙を貰い、カウンターで簡潔に且つ詳細にプリヘーリヤに聞きたいことを書く。
その間、受付嬢は本部に提出する書類を物凄い速さで書き上げていく。
俺たちが一枚の伝言用紙を書き上げた頃には、数十枚に申請書類やらなにやらがきっちり書き上げられていた。どれだけ、速筆なんだ。そして、字が崩れていないところが恐ろしい。
「さすが、高難易度迷宮の町の受付嬢ですね」
「そういうものなのか?」
「アンジェリカさんは、なんと言えばいいのでしょう?事務仕事に向いていないだけなんだと思いますよ」
それは受付嬢として致命的なんじゃと思うが、おそらく、あの人がこのギルドで受付嬢になったのは事務仕事に目を瞑っても良いと思える何かがあったからだろう。
ヴェントの迷宮の特徴を考えると、その卓越していると思われる探索能力で、迷宮内で力尽きた冒険者の回収などだろうか。フォレボワならその辺の農家のおじさんが拾いに行くが、一般人どころか冒険者も規制されるヴェントの迷宮だと、拾いに行ける人物は限られる。そう言えば、貰った地図のトラップの詳細部分は受付嬢が書き込んだものだった。
「まあ、あの人はあの人でここに合ってるのかもしれないな」
そうこう話しているうちに、受付嬢が持ってきてくれた特急用のハトに伝言用紙を括って、フォレボワに送った。




